意外とファンが多くてびっくりしています。
R・D・ウィングフィールドの「フロスト」シリーズです。
この夏は待ちに待った第4作「フロスト気質(かたぎ)」が翻訳されました。
お下品で身勝手なフロスト刑事の活躍ぶりは期待を裏切りません。
作中フロストがあの手この手を使って上司のタバコをくすねるのですが、ああ、そうでした。
イギリスはタバコは1箱1,000円もするのでした。
それならフロストでなくても人のタバコをくすねるのに必死になるでしょうね。
(2008年9月5日)
今ブルックナーを聴いています。
交響曲第9番、彼の最後の交響曲です。
彼の交響曲では一つの旋律がひたすら繰り返されてクライマックスを作り上げます。
その旋律は一見単純で明快なのですが、よく聴くとその個性豊かさに驚かされます。
そう、まるでゴシック建築のようです。
ステンドグラスの意匠は素朴でチャーミング、壁に据えられたガーゴイルはグロテスク、複雑な模様を刻み込んだ柱は力強い。
こうした一見ばらばらの無秩序な細工が一体となって天上の高みを目指すのです。
この高みへの志向、崇高な壮麗感はブルックナー独自のものです。
こうしたことはこれまで何万人ものブルックナーマニアがそれぞれ何千回も繰り返し言ってきたことです。
新味がないと分かっていても言いたくなってしまう、それもブルックナーの魅力でしょうか。
ところでバッハ、ベートーヴェン、ブラームスの3人は「ドイツ3大B」と呼ばれます。
しかし、私は思うのです。
これがもし「ドイツ・オーストリアの3大B」ならそれはバッハ、ベートーヴェン、ブルックナーだろうと。
(2008年9月17日)
私はクラシックもロックも同じように聴いて、特にどちらが高尚でどちらが低俗とか考えることはありません。
ですが一時期「グルーヴ」とか「ヘヴィネス」などのムーヴメントが盛り上がった時のロックにはうんざりさせられました。
ゆっくりのロックなのです。
遅いロックなんて甘いカレーとか面白くないお笑い芸人みたいなものだと思います。
ライブハウスで「ゆっくりロック」を聴いて「このグルーヴ感が最高!」なんて言ってる若者を見ると「そんなものを聴くくらいならブルックナーのアダージョを聴け!」と言いたくなるわけです。
(2008年9月19日)
先日県警の西側方面を歩いていて驚きました。
宝月旅館がなくなっていたのです。
甲子園沖縄代表の定宿のはずなのに今年は宿泊先リストに名前がなかったので不思議には思っていたのですが。
私が旧・赤十字病院に在籍していた頃は甲子園期間中球児たちが夜遅くまで路地で素振りをしているのをよくみかけました。
コンビニエンスストアで買い物していてもどことなく素朴な雰囲気があったのが印象的でした。
宝月のご主人もかなりの高齢らしいし、高校球児も今や旅館よりもホテルの時代なのかもしれませんが、何か一つつながりがなくなったようで寂しいものです。
(2008年9月22日)
格差社会の原因について評論家がいろいろ語っています。
しかし根本的な原因は私には自明に思われます。
つまり今の若者たちが、社会に格差などないと教え込まれたからではないでしょうか?
教育現場では生徒に序列をつけるのを嫌がります。
できれば競争もさせたくない。
高校は全入で、しかも学力とは無関係に学校が割り振られる。
学芸会でも均等にセリフが与えられる。
こんな教育を受けたにも関わらず真っ当に頑張っている人がいる方が私には不思議です。
生涯賃金を大雑把に表すと、フリーター5千万、中卒2億、高卒2.5億、大卒3億くらいでしょうか。
格差をなくすためには生徒たちにこの現実をしっかり叩き込むことが必要だと思います。
(2008年9月24日)
よくマスコミで派遣社員残酷物語が取り上げられます。
同じ仕事をしているのに正社員よりもはるかに少ない給料しかもらえない、それは働いていてとても辛いと思います。
しかし一方で「同じ仕事量なら責任がかかってくる分正社員の給料が多いのは当たり前」という考え方もあります。
ところがなぜかマスコミにはこういう考え方は取り上げられません。
先日ある医療関係の人事の人と話をしていたら派遣社員の無断欠勤率の高さを嘆いていました。
最初に契約した人は初日無断欠勤、次の人も初日無断欠勤、3人目の人は初日にやってきたと思ったら昼からいなくなったそうです。
伝聞なので幾分話が大きくなっているかもしれませんが、似たようなことはどの業種の人も経験しているのではないでしょうか。
そういう働き手のモラルの欠如もマスコミではあまり語られません。
派遣社員問題に関して、マスコミ側は反応の薄さを感じていると思います。
どんなに煽っても盛り上がってくれない「手ごたえのなさ」。
当然だと思います。
取り上げ方があまりに一方的すぎるのでもう一つ信用できないのです。
ほとんどの人は「またマスコミがきれいごとを言っている」くらいに思っています。
人々に訴えかけたければ物事の両面をしっかりと紹介した方がいいと思います。
(2008年9月28日)
物事の両面を報道しない、と言えば少し前の産婦人科たらい回し問題を思い出します。
当初は「医師のモラルが低い!」という視点から報道されていた事件ですが、そのうちに「未検診妊婦のいわゆる飛込み出産の危険性」「産婦人科医の激務」「検診費用を誰が負担するべきか」などの面も報道され始めてようやく真っ当な社会問題として認識されるようになりました。
その結果、医師数を確保して婦人科医療システムを構築したり、妊婦検診を公的に補助する仕組みなどが検討されたりするようになってきました。
最初のヒステリックな報道は一体何だったのでしょう?
マスコミ関係者に謝罪しろとまでは言いません、しかしせめて「国は医師数増加や検診費用の負担を考えろ、我々は未検診出産の危険性を訴えるキャンペーンを行う!」というくらいの気概は見せて欲しいところです。
(2008年9月29日)
小泉総理がやったことで一つだけすごいと思ったことがあります。
中曽根、宮沢元首相に引退を迫ったことです。
いつまでもポストにしがみつく長老に対して「いい加減辞めろ」と言うのはとても難しいです。
実際そんなことをやらかした人を私はこれまでただの一人も見たことがありません。
私もあの人にもこの人にも言ってやりたいのですが、とてもそんな勇気はありません。
それを考えるにつけ、小泉さんは本当にすごい変人だったのだなあと思うのです。
(2008年10月1日)
愛媛の親戚がみかんジュースを送ってくれました。
愛媛と言えばポンジュースが有名ですが、今回送ってもらったのは生産者の個人名まで入ったストレートジュースです。
甘味も酸味も渋味もぜーんぶ丸ごと封じ込めた「生」な味わいでした。
ところで時を同じくして冷蔵庫の奥から「うめジュース」というのが出てきました。
おそらく誰かのどこかのお土産かと思われます。
これを飲んでみると、甘い。ひたすら甘いです。
砂糖をどっさり放り込んだ気持ちの悪い甘さ。
どうしてこんなことをするのでしょう?
旅先のみやげ物ショップに行っていつも思うことです。
ショップに並んでいるのは名前だけ気の利いた、しかしせっかくの特産物を甘味料や着色料で台無しにした飲み物とか、醸造用アルコールで水増ししたお酒とかばかりです。
観光地っぽいネーミングだけありがたく持って帰れと言わんばかりの殿様商法。
こういう店に行くと、買うべき商品が見当たらない寂しさと同時に、観光客を馬鹿にしたような売り手の姿勢に哀しさを感じてしまいます。
というわけで美味しいジュースと美味しくないジュースを飲んで、ついつい観光業界に腹を立ててしまった私でした。
(2008年10月3日)
今年も元町ミュージックウィークの季節がやってきました。
今回もお手伝いすることになりました。お暇ならどうぞ。
(2008年10月6日)
2008年10月8日、同率首位の巨人と阪神との最終戦が行われた。
残り3試合だったために事実上の優勝決定戦と言われた。
3対1で巨人が勝ち、そのままリーグ優勝を果たした。
事実上の優勝決定戦と言われた巨人阪神戦の平均視聴率が15.8%だったそうです。
平均で30近く、瞬間的には40近くに達するだろうと予想していたのに、驚きです。
ところで15.8%というとほぼ100を6で割った数字です。
つまりプロ野球12球団のファン数が拮抗して、2チーム分のファンがTVにかじりついたとすればこの数字になります。
数字の低さには驚きましたが、案外プロ野球人気の均等化を表す健全な数字なのかもしれません。
(2008年10月15日)
偽装表示のニュースを見て不思議に思うことがあります。
社員が大勢いる大きな会社なら中には不正を告発しようとする社員もいるでしょう。
これがもし少人数、極端な場合一人だと不正は表に出ないのではないでしょうか。
たとえば一人で作って一人で売っているようなケーキ屋だと古い牛乳を使っていてもこちらには分からないし、発覚することもないわけです。
つまり私たちは大きな会社の製品については表示を見て、個人商店だと作り手、売り手の人柄を見て、商品が信頼できるかどうかを判断しています。
どちらかと言うと、私たちは表示よりも人柄の方に重きを置く傾向があると思います。
いかに厳正な基準をクリアしたかを謳った表示よりも、信用できる人が目の前で作って目の前で売っているケーキの方を私たちは信頼します。
宇宙服のような格好の作業員が無菌室のような部屋で作っている写真の貼り付けられた弁当よりも、近所のおばちゃんが普通の台所で作った手作り弁当の方を私たちは信頼します。
作り手の顔が見えれば私たちは安心するのです。
そこまで考えてふと思いついたのですが、当クリニックでは私が診察をして、私が薬を用意して、私が説明して渡します。
私が麻酔をかけて、私が胃カメラをして、私が機械の洗浄をします。
これぞ究極の「顔の見える医療」ではないか……、胃カメラの洗浄をしながらこんなことを考えて一人ニヤニヤしたりしているわけです。
(2008年10月17日)
神戸元町ダイアリー2008年(4)北京オリンピック<main>神戸元町ダイアリー2008年(6)ジャーナリストの死