(1)
個人の作家の全集と言ってもいろいろなレベルがあります。
全集と銘打ちながら実質「名作集」レベルのものもあれば、自筆原稿まで校合しての「本格的全集」もあります。
ですので作家ごとの全集の数を単純に比較することはできないのですが、それでも谷崎は間違いなく「全集がもっとも数多く出版された作家の一人」だと思います。
それがまたまた新全集の発刊です。
これで谷崎はついに「もっとも多く全集が出版された作家」に躍り出たかもしれません。
ただ、全集と言っても全ての文章が収められているわけではないようです。
たとえば「源氏物語」訳は収められていません。
それはすごく残念です!
というのは嘘です。
さすがに名訳とはいえ「源氏物語」現代語訳を3回読む元気はありませんから。
その線引きを考えると今回の作品選択は順当なところかもしれません。
(2015年8月12日)
(2)
というわけで5月発売の全集第1巻の内容です。
〇刺青
処女作品集。
その最初の「刺青」は鮮烈なデビュー作であると同時に谷崎の代表作の一つでもあります。
次に谷崎らしいのは「少年」でしょうか。
この2作に比べると「秘密」は少し頭でっかち。
〇羹(あつもの)
未完の青春もの。
〇悪魔
エログロ耐性があると思っていた私でも途中「うげえ」となった「悪魔」とか、全然面白くない旅エッセイ「朱雀日記」とか。
〇その他単行本未収作品など
(2015年8月19日)