海外の長篇小説ベスト100(第41位〜第45位)

第41位

ジョン・アーヴィング「ホテル・ニューハンプシャー」上、下 (新潮文庫)


マジック・リアリズムは南米の専売特許ではない! という意気込みにあふれたUSA産の物語系小説。

個性的な登場人物、小道具の巧みな配置、奇想天外な展開。


どれも見事だけれど、どうしても生理的に受け付けないところがあって、
しかもそれが全編のクライマックスを担うものだから、全体に後味悪し。

 

(2013年7月19日)

第42位

ミラン・クンデラ「存在の耐えられない軽さ」 (河出書房新社池澤夏樹個人編集世界文学全集第3巻)

切ない通奏低音が全編に響く。
哲学的な記述もあり、政治も絡むけれど、最後にはすーっと純化する愛。

どうしてこんなに泣けるのだろう。

 

(2013年7月17日)

第43位

アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯」 (集英社世界文学全集第24〜26巻)

誰からも好かれる好青年エドモンは、愛するメルセデスとの婚約発表の日に、突然逮捕されてしまいます。
悪意と策謀と政治に蹂躙されて、彼は裁判を受けることさえ許されないまま独房に幽閉されるのでした。

14年もの投獄生活ののち、彼に脱獄のチャンスが訪れます。
それからしばらくしてパリに颯爽と現れた謎の大富豪モンテ・クリスト伯爵。
さあ、彼の正体と目的とは!
プロットを聞くだけでも血沸き肉躍る、ハズレなしの大復讐劇です。
こういう王道を行く小説が、しかし長篇小説ベスト100にはあまり入っていないんですね。
これまでのところでは「風と共に去りぬ」とか「大いなる遺産」くらいでしょうか。
芸術性はともかく、時々はこういう、直球ど真ん中で全バッター三球三振的冒険小説に浸りたいものです。

 

(2013年6月5日)

第44位

フランツ・カフカ「変身」(白水社カフカ小説全集第4巻)

超長篇と超難解作が居並ぶ長篇小説ベスト100の中で、44位はオアシスのような小説です。
まず、短い。
それから読み手の神経を逆なでする作品の多いカフカにしては、登場人物たちの言動が割と普通で、ストレスなく読めます。
しかしもちろん欠点が少ないからという理由でランクインしているのではありません。
突拍子もない設定のもとで描かれる「再生」の物語の感動的なこと。
芋虫となって干からびて死んでいく兄に替わって、グレーテが羽化する余りにも美しいラスト。
グレゴールの視点から始まった物語がいつの間にか家族の視点に移り変わっていく、魔法のような叙述テクニックには、何度読んでもうっとりさせられます。

 

(2013年6月3日)

第45位

イタロ・カルヴィーノ「冬の夜ひとりの旅人が」(ちくま文庫)

読み始めた本が落丁のため、話が途中で途切れていた。
続きを求めてさまよう男性読者が、女性読者と出会い、さまざまな本の断章と出会い、さまざまな「本の現場」に出会う。
カルヴィーノとしては「木のぼり男爵」に続くランクイン。
「木のぼり男爵」を読んだ時には、初めて読む作家だと思ったけれど、この小説を読んで思い出した。
河出世界文学全集に入っていた「見えない都市」も、カルヴィーノだった。
不条理な世界の中で何かを求めてさまよう、しかしカフカよりはちょっとだけ前向き。
これがカルヴィーノの、カルヴィーノらしさのようです。

 

(2013年3月29日)

「考える人」08年春季号「海外の長篇小説ベスト100」<第46位〜第50位<main>第36位〜第40位
 


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