海外の長篇小説ベスト100(第46位〜第50位)

第46位

シャーロット・ブロンテ「ジェーン・エア」(角川文庫)

いじわるな従兄弟たちにいじめられる幼少時、厳しいだけの寄宿舎学校時代を経て、主人公ジェーン・エアが成長していくお話。 
堂々700ページを超える大著ですが、退屈に感じられるところもあります。
思い出してみるのですが、身分違いかと思われた恋愛が成就したり、いないものと思っていた家族と奇跡的な出会いを果たしたり、主人公が幸せになりそうなところで私はあくびを連発していたようです。
けなげなジェーン・エアの半生よりも、自分の性格の悪さが浮き彫りにされた長篇と言えるかもしれません。

 

(2013年3月27日)

第47位 

ウィリアム・フォークナー「八月の光」(新潮文庫)

フォークナーとしては第61位「アブサロム、アブサロム!」に続くランクインです。
時系列が激しく跳躍する「アブサロム」に比べると、「八月の光」はかなり「普通な」構成のように見えます。
ところがそこに登場する複数の主人公たちは互いに絡みません。
主人公たちを取り持つ狂言回し役は一人いるのですが、おとなしいキャラクターで、「語り手」の役割にとどまっているように見えます。

何だか分からないけどすごかった「アブサロム」に比べると、わけは分かったけれどもう一つもの足りませんでした。

 

(2013年3月25日)

第48位 

ライナー・マリーア・リルケ「マルテの手記」(新潮文庫)

実は初めて読みます。
てっきりマルテなる若者のビルドゥングスロマンかと思ったら、マルテ(=リルケ)の死への恐怖と孤独を綴った散文詩でした。

ヘミングウェイたちが馬鹿騒ぎしていた同じパリの空の下で、ここまで苦悩に満ちた文章を磨いていた若者がいたのでした(十数年のタイムラグはありますが)。

ストーリーはありません。人生の、できるだけ早い時期に接したかった作品だと思います。

 

(2013年3月6日)

第49位 

イタロ・カルヴィーノ「木のぼり男爵」(白水Uブックス)

イタリア産の法螺話系文学。
冒険ものでもあり、恋愛ものでもあり、ファンタジーでもあり、コメディでもあり。
受け取り方の自由度の高い小説ですが、ただ一つ、風刺と捉えることだけはやめた方がいいです。


文学が風刺を高めても、風刺は文学を高めません。
小説にとって「鋭い風刺」という言葉ほどひどい悪口はないと思うのです。

 

(2013年2月18日)

第50位 

アーネスト・ヘミングウェイ「日はまた昇る」(新潮文庫)

「老人と海」のマッチョでハードボイルドな作風を期待して読むと、失望させられます。
芸術家くずれの若者たちがひたすら酔っぱらって恋愛(と言うより交尾)を重ねます。

これまで私が読んだのは「老人と海」、「日はまた昇る」、「短篇全集」だけですが、どうやら「老人と海」の方がヘミングウェイらしくない小説と考えた方がよさそうな気がしてきました。

予備知識のない人がイチローの打席を見たとします。
そこでイチローがホームランを打てば、その人はイチローを長距離バッターだと思いこむのではないでしょうか。
ヘミングウェイをマッチョな作家と評する人は、それに似たような勘違いをしているように思うのです。

 

(2013年2月15日)

「考える人」08年春季号「海外の長篇小説ベスト100」<第51、53、54、55位<main>第41位〜第46位


神戸元町ダイアリー2013年(1)

昨年、中国在住の日本人が暴行を受けたり、日本系の店舗が破壊されたりした時には思ったものです。

日本に住む中国の人たちは、どうして本国に向けて友好的なメッセージを送ってくれないのだろう?
我々は日本人に迫害されていない、だから本国の同胞たちも日本人を迫害しないでくれと援護してくれればいいのに、と。

今になってみれば、身勝手な考えでした。

さすがに私の身の回りにはいませんが、ネット上には中国の人々に対して攻撃的な態度をとる連中があふれています。
彼らの言葉を見ると、身の危険を感じてしまうと思うのです。

数か月前の私は、そういう実情に思い至る事もなく、「助けて欲しい」という被害者感情にどっぷりとひたっていたわけです。
加害者であるという意識を持ち続けるのはとても難しいことのようです。

 

(2012年1月21日)

2割の働きアリは働いていないという話があります。

元ネタの本を読んでいないのでどこまで信憑性があるのか、あるいは信憑性があるとしてそれが生物学的にどういう意味があるのかなど全く分かりません。
しかし人間の社会との類似性も感じさせて面白い説です。

それと同時に怖い現象でもあります。

私たちはしばしば組織の目的と自分のアイデンティティとの食い違いに直面させられます。
たとえば画一的な人間を作り出そうとする学校という組織に対して、枠に収まりきらない自分のキャラクターに気づいたとします。
悩んで悩んだ末に、そのギャップを埋められなかった人はドロップアウトして、グレるわけです。

ところがもしかすると、ドロップアウトした人はあらかじめそうプログラムされていたのかもしれません。
悩もうが悩むまいが、2割の人はドロップアウトするように仕組まれていて、悩みは自分へのアリバイにすぎないかもしれないのです。

私たちは自由意志によって組織に参画しているつもりでしたが、実は自由意志というのは本能的行動に箔をつけるためのお飾りなのかもしれません。
ぞっとする話です。

 

(2012年1月23日)

虐待を受けている子どもの多くは、虐待を受けているとは思っていません。

虐待を認めるのは、親に愛されていないと認めることに等しいからです。

虐待されている子どもは、「ぼくが悪かったから」と言います。
親について訊ねると「お父さんはぼくのためを思って殴ったんだ」と答えます。
そう思わないと生きていけないからです。

体罰も同じです。
体罰を受けた生徒たちがこう主張することがあります。
「熱心な先生だから」「自分のためを思ってくれたから」「いい先生だから」

逆です。
いい先生だから殴ったのではないのです。
「いい先生だから殴ってくれた」とでも思わなければ、子どもの心はずたずたになってしまうのです。

体罰の調査をするのに状況や理由や目的を訊ねてはいけません。
純粋に行動だけを調べるべきです。

 

(2013年1月25日)

高等教育の最前線であるべき高校で、どうして体育授業が必要なのかどうかがそもそもよく分かりません。
が、それは置いておくとして、スポーツ活動は軸足を学校から地域クラブチームに移すべきだと思います。

学校単位の活動だと、生徒がコーチの指導方法に納得できない場合、そのスポーツを諦めるか転校するしかありません。
クラブチームだと生徒の選択肢は広がります。
体罰や、非合理的なしごきに耐え続ける必要はありません。

高校野球ファンとしては非常に心苦しいのですが、まずは中高生の野球からクラブチーム主体に変えていくべきだと思います。

 

(2013年1月28日)

いじめや体罰や学級崩壊などの話を聞くたびに、学校の様子もWEBカメラで外部からチェックできるようにすればいいのに、と思ってしまいます。

いじめなどの訴えがあれば判定会議を速やかに開催します。判断するのは保護者代表、教師代表、生徒代表、地域住民代表に校長を加えた五人。
感情的になりがちな当事者や、威圧的な言動で主導権を握ろうとする体育会系教師やモンスターペアレンツなどを加えない仕組みが必要です。
そこでいじめなのかプロレスごっこなのか、体罰なのか指導なのか、生徒のわがままなのか教師の力不足なのか、判定するわけです。

授業内容もチェックされるようになると、教師もうかつに脱線できなくなって生徒の楽しみが減ってしまうのが問題でしょうか。
当面は画像だけでモニターするのがいいと思います。

 

(2013年1月30日)

コープカルチャー講座のお知らせ
3月から新しい講座がスタートします。

3月1日(金)13:30〜15:00
医師が語る本音の話〜失敗しない病院の選び方
コープこうべコープカルチャー兵庫
こちらの講座は1回ずつの開催です。

お問い合わせは078-652-1887までどうぞ。

 

(2013年2月1日)

今シーズンは久しぶりにTVドラマを見ています。

「ビブリア古書堂の事件手帖」。
同名の古書ミステリのドラマ化です。
原作は短篇連作で、これを1時間枠のドラマにするとなればいろいろ水増ししなくてはなりません。
その具合によっては受け狙いのチャラチャラしたドラマになるかもしれない、と心配していたのですが、案外普通でした。

一冊の古書から毎回バリエーション豊かな人間ドラマが導き出されるのには、改めて驚かされます。
何よりも舞台の鎌倉が美しく描かれているのが魅力的です。

 

(2013年2月4日)

ドラマ「ビブリア堂」の主役は古書店の若い女性店主です。
物静かな読書少女というキャラクターを、目がくりくりっとした女優さんが演じています。

普段全くテレビを見ないので予備知識もなく、役柄そのままの口数少ない控え目な女優さんだとばかり思っていました。

この間たまたま彼女の出ているコマーシャルを見てしまいました。
何とそこでは、病弱なはずの彼女が元気いっぱいに跳んだりはねたりしているではありませんか。
何だかちょっとがっかりです。

 

(2013年2月6日)

今シーズンはもう一本「カラマーゾフの兄弟」も観ています。

原作ファンとしてはとても迷ったのですが、失望、憤りを覚悟の上で観てみました。
意外と面白いです。
原作では三男は見習い僧という設定ですので、宗教的側面が強調されます。
ドラマでは三男は医学生です。
今のところ宗教的な描写はいっさいありません。

ドストエフスキーファンは往々にして宗教的側面を語りたがり、「カラマーゾフ」の根底のストーリー「誰が父親を殺したのか」をないがしろにします。
ドラマはその部分に焦点を絞って展開します。
これはかなりすごいことだと思うのです。

最終的に父親殺しの犯人にたどりつけるかどうかは疑問ですが、そこらへんの「カラマーゾフ論」より面白いことは間違いなしです。

 

(2013年2月8日)

「メリー・ウィドウ」という喜歌劇があります。

音楽もキャッチーで美しく、舞踏会の場面やフレンチカンカンのシーンは見た目にも華やかで、とても楽しい曲です。

が、あらすじを説明するのが難しいのが困るところです。

第一の理由は、登場人物が多いということ。
5組のカップルに女好き三人衆がちょっかいを出し、さらに狂言回しのコメディリリーフが加わって話をさらにこんがらかします。
それから鍵となる扇子があっちに行ったりこっちに行ったりするのも、ややこしいところです。

ですが、ここは発想を逆転させましょう。
大勢の男女が恋とお金に右往左往して、その間を扇子がひらひらと舞うのを、何も考えないで楽しむのがよさそうです。

「メリー・ウィドウ」、2月23日と24日に芦屋ルナホールでの上演です。
23日の席にまだ少し余裕があります、どうぞお問い合わせください。

 

(2013年2月10日)


こんなのに出演します。

http://www.alohaband.net/

もともとはブラスバンド主体のコンサートだったのですが、毎年規模が大きくなってすっかり総合エンターテインメントと呼ぶしかないビッグイベントとなりました。
当日券僅少だそうですが、ご興味があればどうぞ。

 

(2013年3月1日)

コープカルチャー講座が終了しました。

今回のトピックスは「救急車でたらい回しに遭わない秘訣とは?」でした。
講座の直後に、呼吸苦を訴えた75歳の男性が25の病院に受け入れを断られて亡くなったというニュースが飛び込んできました。

「たらい回しに遭わない秘訣」、運が悪かったでは済まされない話です。

 

(2013年3月4日)

先日TVで、国際オリンピック委員会のメンバーを東京の招致委員会が歓迎する場面が流れていました。

一見豪華な、その実寒々しくも空虚な接待ぶりでした。
マスコミも馬鹿騒ぎをたしなめるかと思えば、招致委員会にすり寄った論調で、悲しくなってしまいました。

招致委員とマスコミには「みっともない」という言葉を贈りたいと思います。

 

(2013年3月22日)

神戸元町ダイアリー2012年(4)日本映画がダメなわけ<main>神戸元町ダイアリー2013年(2)頑張れ!安楽投手


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