海外の長篇第51位を読んでいるところです。
この小説にはとても多くのキャラクターが登場するので、名前を憶えるのが大変です。
「大変」と言うか、事実上無理なので、馴染みの薄い名前に出くわすたびに「Wikipedia」の登場人物リストを参照しています。
ところがせっかくのリストが五十音順ではないので、検索するのがそう簡単ではありません。
そこでオリジナルの人物リストを作って、手持ちのタブレット画面に五十音順で表示されるようにしました。
名前部分をタッチするとWikipedia画面に移行します。
もっといい方法があるような気もしますが、今のところぎりぎり便利です。
(2013年1月9日)
第51位
「水滸伝」(岩波文庫)
解説によると「水滸伝」には70回本、100回本、それに120回本とがあるそうです。
今回読んだのは「李卓呉批評忠義水滸伝百回本」という、100回本に基づく完訳版。
全10冊で、かなりのボリュームです。
しかもこの間北方謙三の「水滸伝」を読んだところです。
現代的で熱い北方水滸のあとで、今さら古臭い原作を読む気にならず、いっその事第51位は飛ばしてしまおうかと思ったほどでした。
ところが読み始めてみると、各話の頭に収められる挿絵が素朴で楽しく、要所要所で披露される漢詩も見事で、結構面白いのです。
しかも最終2巻では北方水滸とは全く別展開となり、とても新鮮でした。
(2013年1月11日)
ネタバレになるかもしれないので、これから「水滸伝」を読もうと思っている方は以下の記事は読まない方がいいと思います。
北方謙三の「水滸伝」を読んでいて一番不満だったのはラストです。
108人の英雄たちが、全員戦死しなかったのです。
私は「水滸伝」とは、梁山泊にたてこもった豪傑たちが、朝廷軍との死闘の末に全員玉砕する話だとばかり思い込んでいました。
その立場からすると、一部の英雄たちが生き延びる北方「水滸伝」が、ご都合主義で生ぬるく思えたのです。
ところが原作でも英雄たちの一部は生き残ります。
しかも、彼らは最後には朝廷に召し抱えられて、朝廷軍として別の叛乱軍と戦うのです。
私の間違った思い込みはどこから来たのでしょう?
(2013年1月16日)
それは、この本のせいでした。
筒井康隆の「俗物図鑑」です。
社会のはぐれ者たちが徒党を組んで反乱を起こすというお話で、最後は筒井康隆らしい容赦のない残酷なラストを迎えます。
「梁山泊」という言葉も出てきますし、登場人物も自分の姿を「水滸伝」の英雄になぞらえて行動したはずです。
(読んだのが30年以上前なので、記憶があいまいですが)
そのおかげで「水滸伝」のストーリーを勝手に勘違いしていたようです。
それにしても、こんな本があの当時の中高生には大人気だったんですよね。
(2013年1月18日)
第53位
ジャック・ケルアック「オン・ザ・ロード」(河出書房新社「池澤夏樹選 世界文学全集」第1巻)
4年半ぶりの再読です。
若者たちがおんぼろの車に乗ったりヒッチハイクしたりしてアメリカを横断、その先々でどんちゃん騒ぎを繰り返すというお話です。
前回読んだ時には何が面白いのかさっぱりでしたが、今読んでみると言葉の一つ一つが胸に突き刺さってきます。
ニュージェネレーションの旅情ということなのでしょう。
大昔に見てやはりとことん退屈だった「イージーライダー」も、今見ると楽しめるのかもしれません。
ところで読んでいて大きなストレスだったのは巻頭についている地図です。
19ページから旅が始まりますが、主人公が目指したり、立ち寄ったりする地名が全く地図に記載されていないのです。
見知らぬ地名に出くわすたびに地図をめくりますが、ことごとく無駄に終わります。
いっそ地図なしの方がよかったくらいでした。
(2012年6月11日)
第54位
ラクロ「危険な関係」(岩波文庫)
手紙だけで綴られる恋愛サスペンス。
書簡体だけに、最初のうちは話がどこに向かうのか分かりにくいのですが、誰が誰を何のために陥れようとしているのか分かった途端俄然面白くなります。
それにしても悪党たちの悪役ぶり!
悪人なのに憎むことを忘れて思わず応援してしまうほどのかっこよさです。
それだけにラストの落とし所が不満ではあるのですが、230年という時代差を考えると我慢すべきなのかもしれません。
(2012年6月4日)
第55位
G・K・チェスタトン「木曜の男」(創元推理文庫)
「ブラウン神父」シリーズで有名な推理小説作家チェスタトンによるシュールなスパイ(?)小説。
シュールではあるのですが、さすがに100年前の作品だけに、ボリス・ヴィアンのあとに読むとイマジネーションの弾け方がおとなしいです。
ミステリの体裁も取っていますが、そこにもやっぱり100年の時の重さがひしひしと感じられて、古臭さは否めません。
(2012年6月1日)
「考える人」08年春季号「海外の長篇小説ベスト100」<第52、56、58位<main>第46位〜第50位