海外の長篇小説ベスト100(第52、56、58位の前半)

第58位 

オノレ・ド・バルザック「幻滅」(東京創元社) 

やっと第58位について書けそうです。
というのがバルザックはこれ以外に56位に「ゴリオ爺さん」、52位に「人間喜劇」がランクインしています。
この「人間喜劇」というのがとてつもない代物でした。 

バルザックは作家として脂の乗り切った30代半ばに、複数の小説、評論からなる一大絵巻の創造を思いつきます。
彼の小説の特徴として、共通のキャラクターが小説をまたいで登場することが上げられます。
これによって複数の小説たちに共有の空気感や時代感を持たせようとしたのではないかと思うのですが、彼はそのシステムをさらに発展させて、100以上の作品群を「人間喜劇」というタイトルにまとめて、19世紀前半のフランスの人間模様を描きつくそうとしたのでした。 
ですから「幻滅」も「ゴリオ爺さん」も、実は「人間喜劇」のごく一部なのです。 

さて、「幻滅」ですが、バルザックらしさがぎゅうぎゅうに詰まった作品です。
放蕩の限りを尽くして最後まで省みない青年、不条理な仕打ちに耐え続けて結局救われない善人、その善人から土地と財産をくすね続ける小悪党たち、不必要に詳しくてうっとうしくてわずらわしい法律とお金の理屈。 

バルザックの本質とは「人間が全然好きじゃない」という点ではないかと思ったりします。

 

(2012年8月31日)

第56位 

オノレ・ド・バルザック「ゴリオ爺さん」(東京創元社)

「幻滅」に比べるとこちらはずいぶんとまともです。
行き当たりばったり感の強い他の作品群と違って、終着点に向かう強い収束力が感じられるのが読みやすさの理由でしょうか。
若者が放蕩で身を持ち崩すのはこの作品でも同じですが、他の作品の若者たちがとことん馬鹿なのに対して本作のラスティニャックがほんのちょっとだけましというのも加点ポイントです。
ほとんど全ての登場人物が他の作品でも活躍するという意味で、まさに「人間喜劇」の中心に位置する作品であり、バルザック的要素もたっぷりありつつ、ごく普通の倫理観の持ち主でも受け入れやすい、あらゆる意味でバルザックの最高傑作だと思います。 
あくまでもバルザックの中では、という意味ですが。

 

(2012年9月3日) 

バルザックは1830年代には「人間喜劇」というものの構想を練り始めていたようです。

それが10年以上の月日を重ねるうちに規模が誇大妄想的に膨れ上がり、結局執筆が構想に追いつかないままバルザックは死んでしまいます。
従って全貌を把握するのが難しいです。
「人間喜劇」についていろいろ調べようと思っても、もう一つよく分からないのはそのためです。
彼が1846年にある雑誌に発表した「人間喜劇」の作品リストがもっとも分かりやすい資料だと思います。
しかしこのあとも構想は膨らみ続けます。
実際、「従妹ベット」「従兄ポンス」などはこの表には含まれていませんが、間違いなく「人間喜劇」を代表する作品です。 

今の時点では「人間喜劇」とは、46年の作品表に上述の2作品を加えたもの、と考えるのがよさそうです。

 

(2012年9月5日) 

「海外の長篇小説ベスト100」の第52位に「人間喜劇」がエントリーされています。
ベスト100読破進行中の私としては当然「人間喜劇」も避けて通れません。
そこで東京創元社の「バルザック全集」全26巻を1年近くかけて読み進めてきたのですが、全集のゴールがようやく見えかけてきた今になって、とんでもないことが分かってしまいました。 
バルザック作品集はいろいろあるのですが、東京創元社版は質、量ともに他を圧する「全集」です。
しかしこの全集でも「人間喜劇」に含まれる作品の6割弱しか網羅していないのでした。
さすがに6割弱では読破とは言えません。
全集に含まれていない作品を、探し回って読んでいる途中です。 

というわけで「海外の長篇小説」の更新はもう少しだけお待ちください。

 

(2012年9月7日)

東京創元社版バルザック全集に含まれていない「人間喜劇」作品を探し回って読んでいるところです。 
タイミング良くこんな本が出版されました。

「サラジーヌ 他三篇」(岩波文庫) 
収録されている4作がいずれも全集に含まれていないという好都合な内容。
それにしても岩波書店って面白いです。
「他三篇」の内容がサイトにアップされたのが発売の前日。
発売日に本屋に並んでないので店員に訊ねてみると「岩波さんの場合は、発売予定日はあくまでも予定日なので」という返事。 
まあこういう出版社が一つくらいあってもいいのかもしれません。

 

(2012年9月21日) 

バルザック「人間喜劇」読了計画のゴールがようやく見えてきました。

「人間喜劇」がいくつの作品から成り立っているのか、実は資料によってその数はさまざまです。
いろいろな人がいろいろ主張しているので、私なりの数を主張しても罰は当たらないと思います。

1846年版の作品表(作品番号のない「総序」+137の作品)に、その後執筆された6つの作品を加えた144篇を「人間喜劇」作品としましょう。
このうち、構想のみで執筆されていないのが51、翻訳されていないと思われるのが9、翻訳された形跡はあるが入手が困難なものが5。
現在のところ、神戸にいながら読むことのできる「人間喜劇」作品は79篇ということになります。

 

(2012年10月19日)

79の作品をどう読むか、ですが、ほとんどの作品は図書館で読むことができます。

しかしなぜか水声社のバルザック作品集は神戸近辺の図書館には収蔵されていません。
そして面白いことに、水声社の小説選集と藤原書店の「人間喜劇」セレクションとでは、収録作品が重複しません。
(水声社選集は続巻の可能性がありますが)
「人間喜劇」読破の記録を形に残したければ、上記2シリーズは購入して、残りの作品を図書館で落ち穂拾いするのがよさそうです。
2シリーズとも雰囲気のある装丁です。
棚に並べるのにはちょうどいいのではないでしょうか。

 

(2012年10月22日)

第52位

バルザック「人間喜劇」(1)

ようやく長篇小説第52位について書くことができそうです。
しかし、これだけ膨大な数の小説をこれだけ短期間で読んだのは自分だけだろうと思っていたら、驚くべきことに気がつきました。
私は東京創元社の全26冊の全集を、図書館で借りて読み進めてきたのですが、各巻に前に借りた人の返却予定日票が入っているのです。
日付を見ると、私の返却予定日のほとんど1年前です。
つまり1年前に私と同じペースでバルザック全集を読破した人が、神戸にいるのです。
これはびっくり!

それはそれとして次回から全144作を、12作ずつ整理していきたいと思います。
以下凡例です。

構想のみ:作品リストには含まれているが執筆されなかったもの
入手不能:翻訳されていないと思われるもの
入手困難:翻訳されているようだが神戸市立図書館に所蔵なく、古書検索サイト「スーパー源氏」でもヒットしないもの
創元:東京創元社版バルザック全集
藤原:藤原書店「人間喜劇」セレクション
河出:河出書房版バルザック全集
水声:水声社バルザック小説選集

そして表記内容は
バルザック自身による「人間喜劇」作品番号
題名(藤原書店「「人間喜劇」全作品あらすじ」の表記に従います)
収載巻 及び 一言メモ
という順になります。

 

(2012年10月26日)

バルザック「人間喜劇」

1 「子供」 構想のみ

2 「令嬢たちの寄宿生活」 構想のみ

3 「学校の内側」 構想のみ

4 「毬打つ猫の店」 水声芸術狂気1 岩波文庫「ゴプセック」
 貴族生まれの画家と商売人の娘が結婚するが、価値観が違いすぎてすれ違う。
 これを耐えねばバルザックは読めない、という難所がバルザックにはいくつかあります。
 そのうちの一つが「若者がずるずると堕落して、しかも改心しない」という展開です。
 これも、そう。中篇なのでまだぎりぎり許容範囲内でしたが。

5 「ソーの舞踏会」 創元24
 貴族生まれにこだわる主人公が、こだわるあまりに理想的な男性との結婚を逃してしまう。
 教訓は「相手を身分で選ぶな」ではなく、「親の勧める相手と結婚せよ」ということみたいです。

6 「二人の若妻の手記」 創元16
 対照的な性格の、二人の女性の生きざま。
 バルザック唯一の書簡体小説。あのいつもの超くどい状況説明が少なくて比較的読みやすい。
 煩雑な金勘定はあります。

7 「財布」 河出15 水声芸術狂気1
 若い画家と貧しい少女との恋、バルザック唯一の気持ちいい話。

8 「モデスト・ミニョン」 創元24
 有名な詩人と文通するうちに少女の崇拝心が恋に変わる。
 しかし実際に手紙をやりとりしていた相手は、詩人本人ではなかった。
 プロットだけ読むと面白そうに思えるかもしれないけれど、少女が手紙の主の正体を知ってからのドタバタが退屈。

9 「人生への門出」 創元22
 18歳の主人公がある時乗合馬車でさまざまな人と出会い、影響を受ける。
 それから10年近く、人生の紆余曲折を経た主人公は、再びその乗合馬車に乗り込む。
 身を持ち崩しかけた若者が立ち直るのは、バルザックには珍しいかも。

10 「アルベール・サヴァリュス」 創元9
 目的のためには手段を選ばない少女の恋のかけひき。
 長い。

11 「ラ・ヴェンデッタ」 入手不能

12 「二重家族」 入手困難             

 

(2012年10月29日)

13 「夫婦の平和」 入手不能

14 「フィルミアニ夫人」
 光文社古典新訳文庫「グランド・ブルテーシュ奇譚」に「マダム・フィルミアーニ」のタイトルで収録
 フィルミアニ夫人に甥っ子がたぶらかされていると聞いた地主が、真相を確かめるためにやってきた。
 ユニークな冒頭と、何より短いのが、いい。

15 「女性研究」 入手不能

16 「偽りの愛人」 河出14
 夫の親友は魅力的な男性だが、自分に対してはいつもつれない。
 究極の騎士的愛の物語。究極すぎて韓流ドラマもびっくり。

17 「イヴの娘」 河出15に「エーヴの娘」のタイトルで収録。
 グランヴィル家の二人の姉妹の、政治と策略と恋の物語。
 バルザックの難所の二つ目は、細かな金勘定が延々と続くところ。
 これもやってくれます。

18 「シャベール大佐」 創元3 河出14
 戦場からやっとの思いで帰ってきた大佐は、自分が戦死したことになっていることを知った。
 そしてバルザックの難所の三つ目。訴訟では正しいものが必ず負けるところ。
 バルザックの特集を組んでおいて、ほとんど悪口だらけとは何事か、と思われるかもしれません。
 悪いのは私の性格ではなく、バルザックの性格です。

19 「ことづて」 光文社古典新訳文庫「グランド・ブルテーシュ奇譚」 岩波文庫「知られざる傑作」
 主人公は乗合馬車の事故で死んだ若者の伝言を頼まれる。
 短いのが、よい。

20 「柘榴屋敷」 水声芸術狂気1 岩波文庫「知られざる傑作」
 二人の子供と静かに暮らす母親、彼女には死期が迫っていた。
 これも短いので、よろしい。

21 「捨てられた女」 創元15 河出8
 ボーセアン夫人は年下の男と幸せな同棲生活を送っていたが、
 彼に有利な縁談が持ち込まれたことを聞いて身を引く。
「夫人」なので女性には夫がいます。
 この貞操概念を受け入れることができれば、きっと最高の純愛小説なのでしょう。

22 「オノリーヌ」 創元17 
 自立を求めて家を飛び出した妻を、陰ながら助け続ける夫。
 結論は「女に自立なんてありえない」ということみたいです。

23 「ベアトリクス、または強いられた愛」 創元15には「ベアトリックス」として収録
 ベアトリクスを巡る三つ巴、四つ巴の恋の争奪戦。
 長い。ベアトリクス、あんまり重要じゃないし。

24 「ゴプセック」 創元18 藤原7 河出14 岩波文庫にも同題で 
 無慈悲と思われていた高利貸しにも知られざる側面があった。
 短いのはいいけれど、これも回想形式にする必要性があったのかどうか。

 

(2012年10月31日)

25 「三十女」 萬里閣「バルザック人間叢書」
 ナポレオンの閲兵式で主人公ジュリーの恋が始まる。
 その恋はすぐ冷めて別の男性と恋に落ちて、息子が娘に殺されたり、海賊が出てきたり行き当たりばったりの大河ドラマ。
 題名の付け方がいい加減なのもバルザックの特徴ですが、これもまさに、そう。 

26 「ペール・ゴリオ」 藤原1 創元8と河出7には「ゴリオ爺さん」として収載
 パリ裏町の小さな下宿屋に住む住人たちのドラマ。
 オールスターキャストで話も引き締まっているし、間違いなくバルザックの代表作。 

27 「ピエール・グラスー」 河出15 水声芸術狂気1
 グラスーは才能のない画家だったが、堅実な生活を続けて世間の評価を得てしまう。
 バルザックには珍しい、真面目な人が報われるお話。ほっとします。 

28 「無神論者のミサ」 河出7に「無神論者の弥撒」というタイトルで
 厳格な無神論者と思われた医者が、実は年に一回こっそりとミサを上げていた。
 短くて面白い。 

29 「禁治産」 入手不能 

30 「結婚契約」 入手不能 

31 「婿と姑」 構想のみ 

32 「続・女性研究」 水声幻想・怪奇3 光文社古典新訳文庫の「グランド・ブリテーシュ奇譚」はこの後半部分
 男たちが語る女性の生態。
 さまざまなエピソードが語られるが、ポオの、あの話を思わせる最後のエピソードが出色。 

33 「谷間の百合」 創元9
 男性を愛しながらも拒み続ける女性。死の間際になって、彼女はうわ言で本音を漏らす。
 主人公がこういう「耐える」タイプだと名作ポイントが上がるようです。面白いかどうかは全く別ですが。 

34 「ユルシュール・ミルエ」 水声幻想・怪奇4 河出2には「ユルシュウル・ミルエ」として
 金持ちの老人には、可愛がっている義理の娘がいた。このままでは遺産を彼女に奪われると危惧した親戚たちが、策略を弄する。
 いつもは善人はむしられるだけむしられて終わりのバルザックだけれど、これは一応懲悪で終わる。
 オカルト趣味も珍しい。 

35 「ウジェニー・グランデ」 創元5
 金持ちで純真な少女が男性と恋に落ちる。少女はジャワに旅だった男を待ち続けるが……。
 バルザックの、数えるのも面倒くさい、何番目かの特徴が、カタルシスのないところ。
 そこが「人間喜劇」の醍醐味なのかもしれませんが、そんな醍醐味、わざわざ味わいたくないし。 

36 「ピエレット」 創元4
 貧しい少女を襲う、不幸の連鎖。これもカタルシス、全くなし。   

 

(2012年11月2日) 

37 「トゥールの司祭」 創元20
 トゥールの司祭が社交界と政界に振り回される。
 これも主人公が不幸の連鎖に襲われるお話。
 作者も、特に主人公に思い入れがある風でもなく、誰に肩入れして読めばいいのか分からなかったりします。 

38 「ラブイユーズ」 創元17 藤原6
 悪党同士の壮絶な騙し合い。バルザック版「アウトレイジ」?
 ラブイユーズというのは、特に重要でもないある登場人物のニックネームです。 

39 「名うてのゴディサール」 創元10には「ゴーティサール」として、あと藤原7
 人を騙すはずのセールスマンが騙されるお話。騙し騙されの知的コンゲームを期待すると騙されます。 

40 「皺だらけの人々」 構想のみ 

41 「田舎ミューズ」 創元22では「いなかミューズ」として、あと水声芸術狂気3
 田舎では美貌と話術で社交界の花形だった主人公が、愛する男を追ってパリに出る。
 この小説にも金と女にだらしのない男が登場。
 バルザックは放蕩に身を持ち崩す男の話が好きみたいです。 

42 「旅周りの女役者」 構想のみ 

43 「才女」 構想のみ 

44 「かわり者」 構想のみ 

45 「ボワルージュの相続人たち」 構想のみ 

46 「老嬢」 創元8
 金持ちのオールドミスとの結婚をたくらむ男たち。
 これも誰に肩入れしていいのかよく分からないお話です。 

47 「骨董室」 創元16 藤原7
 またまた貴族の放蕩息子の話。放蕩に放蕩を尽くしていっさい反省せず、
 金持ちの庶民の娘と結婚して、借金を返済してもらってめでたしめでたし。 

48 「ジャック・ド・メス」 構想のみ         

 

(2012年11月14日) 

49 「幻滅」 創元11、12 藤原4、5 河出3、4
 これをバルザックの代表作とする人もいるようです。
 実直な青年はずるがしこい連中に土地も金もむしり取られ、放蕩な若者は社交界の虚飾に溺れて
 親兄弟のささやかな財産を食いつぶし、しかもそれぞれに訪れるカタルシスのない結末。
 確かに「最もバルザックらしい」作品ではあります。 

50 「十三人組物語・フェラギュス」 創元7 藤原3
 ジュール夫人が密会を続ける相手とは誰か?
「カタルシス」も、バルザックに抜け落ちている要素の一つですが、もう一つ欠けているのは
「ミステリ的発想」だと思います。これも読んでいてもどかしくてもどかしくて。 

51 「十三人組物語・ランジェ公爵夫人」 創元7 藤原3
 ランジェ夫人とモンリヴォー侯爵の愛は、断崖の上に立つ修道院で悲劇的な結末を迎える。
 男心をもてあそび続けてきた女主人公が男主人公の真摯な愛に打たれて、真剣な恋を追い求めるようになった。しかしその恋は実らず、女は絶海の修道院に身を寄せる。
 と、いう展開にリアリティーを感じられる人には、感動的かもしれません。 

52 「十三人組物語・金色の瞳の娘」 創元7 藤原3
 金色の瞳の娘は私と逢瀬を重ねる。しかし彼女は私に、誰か別の人物像を重ねているようだった。
 ミステリ的な筋立てに同性愛という刺激的な要素が加わって、いくらでも面白くなりそうな話なのに、遠回しの表現と舌足らずの描写で台無し。 

53 「平役人」 構想のみ 

54 「サラジーヌ」 水声幻想怪奇3 岩波文庫「サラジーヌ」
 ランティ伯爵邸には謎の老人が身を寄せていた。
 これもカストラートという刺激的な素材を使いながら、すっきり話が進まずもどかしい。
 サラジーヌは一応主人公ですが、この名前をタイトルに持ってくる感性もよく分かりません。
 短いので読みやすいのですが。 

55 「セザール・ピロトーの隆盛と凋落」 創元10藤原2河出5にそれぞれ「セザール・ピロトー」として
 実直な香水商のピロトーがずるがしこい連中に財産をふんだくられる。
 バルザックの他の小説だと、善人はふんだくられて終わりのことが多いですが、
 この小説には一応「報われたと言えなくもない」程度の結末があります。 

56 「ニュシンゲン銀行」 藤原7
 偽装倒産を繰り返して財産を増やし続けるニュシンゲン。
 他の作品にも登場するなじみのキャラクターたちが多く登場するのと、短いのとで、読みやすい作品です。 

57 「ファチーノ・カーネ」 河出15 水声芸術狂気2 光文社古典新約文庫にも
 盲人のクラリネット吹きの秘密とは。
 透視能力という絶好の素材を登場させながら、本筋に絡んで来ず。 

58 「カディニャン公妃の秘密」 創元24水声芸術狂気3にそれぞれ「ド・カディニャン公妃の秘密」として
 恋の手練れカディニャン公妃があの手この手を使って若い男をたぶらかす。
 若い男が自堕落でなく、物語も短いので読みやすいです。 

59 「娼婦盛衰記」 60と併せて創元13、14に「浮かれ女盛衰記」 藤原8、9に「娼婦の栄光と悲惨」として
「幻滅」の主役の一人リュシアンと、彼を愛するエステルの物語。
 放蕩を続けて反省することのないリュシアンに、一つの結末が訪れると言う意味では新味はある。
 しかし全体として行き当たりばったり。 

60 「ヴォートランの最期の変身」 59の第4部として収載
 悪役として異彩を放っていたヴォートランのその後の顛末。
 ヴォートランファンはこれでいいのでしょうか?        (2012年11月16日) 

「考える人」08年春季号「海外の長篇小説ベスト100」<第57、59、60位<main>第52、56、58位の後半


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