新年早々インターネットに接続できなくなってしまいました。
こういう時本当に困りますね。
パソコンが悪いのか、パソコンとケーブル差込口の間にある機械(ルーターというのだそうです)が悪いのか、NTT回線が悪いのか、それともプロバイダーが悪いのか、さっぱり分かりません。
仕方なく順番にそれぞれの「問い合わせセンター」に電話をするのですが、どこの電話もかなり混み合っています。
やっとつながったと思ったら担当者の言うことは専門用語ばかりでちんぷんかんぷん。
意味が伝わったと思ったら「それはうちの問題ではない」という返事。
同じ故障でも冷蔵庫や洗濯機などの家電は相談窓口が一つですからここまでややこしくありません。
考えてみると人間の身体もややこしい点では同じです。
以前にも書いたことがありますが、胸が痛い時に何科に行けばいいのか普通は分からないのではないでしょうか。
狭心症なら循環器、気胸なら呼吸器、逆流性食道炎なら消化器、乳腺なら外科、授乳に由来する炎症なら婦人科、肋間神経痛なら整形外科……。
これを一つずつ回っていくのは大変な時間と労力の無駄です。
せめて窓口が一つなら時間と費用のロスが最低限で済むのですが。
かかりつけ医を持っておくことの大切さを感じた今回の一件でした。
(2010年1月8日)
ぐったりとして意識のない子どもが救急車で運ばれてくる。
診察をしてみると全身打撲ややけどの痕だらけ。
そういう現場を繰り返し見てきた医師は物事をどう考えるようになるでしょう。
親をどやしつけるでしょう、警察にも連絡するでしょう。
そして虐待を正当化するような話の小説やドラマに憤りを感じるようになるでしょう。
たとえば「成績の悪い子どもを殴って蹴ってしつけたら成績が上がりました、めでたしめでたし」などというドラマを見たら、その医師はTVをひっくり返したくなると思うのです。
私だって即座にテレビ局にクレームの電話を入れます。スポンサーの不買運動にも参加するでしょう。
だってそのドラマを見た1万人の親のうち、たった一人でもそれを真に受ければ、一つの命が危機にさらされるんです。
そんなことがあっては絶対にいけないと思うのです。
子どもの前で大人が煙草を吸う場面があったという理由で本が回収されたというニュースがありました。
それに対して喫煙に対する過剰なバッシングであるという意見がもっぱらでした。
しかしそうでしょうか。
親の喫煙は子どもが喘息にかかるリスクを高めます。
喘息で死んでいく子どもを一人でも見たことがある医師ならば、子どもの前での親の喫煙に憤りを感じて当たり前だと思うのです。
虐待を是とするような番組は流すな、という全く同じ理屈で、子どもの前での喫煙を認めるような本があってはいけないと思うのです。
まっとうな小児科医としては過剰でも何でもない、ごく当たり前の反応だったと思うのです。
(2010年1月22日)
乾燥肌でお困りの方も多いと思います。
特にこの季節、皮膚の保湿性を高める薬は欠かせません。
かさつきの広さや程度によって軟膏や乳液、ローションといろいろなタイプの薬を使い分けることになりますが、今回スプレー型の薬が発売されました。
これは便利です。
ここまでくると従来の「おくすり」というイメージからはずいぶんかけ離れてきた感じがします。
医療情勢を考えるとこういう範疇の薬はいずれ保険適用から外されるのでしょう。
今のうちに試してみてはいかがでしょうか。
初診の場合3割負担でしたらスプレー1本1340円です。
(2010年1月29日)
最近新聞などで「レセプト開示」という言葉を目にすることが多くなりました。
レセプトとは診療内容が細かく記載された用紙です。
普段お渡しているのは「診察料○○円、薬品料○○円、検査料○○円……」と項目ごとの料金を記載した領収書ですが、レセプトには薬品名や検査名まで載っています。
これを見ればある意味、カルテを見る以上に治療内容が分かります。
必要な方はどうぞお申しつけください。
(2010年2月10日)
これまで病院はレセプトの開示に積極的ではありませんでした。
私などは「やましいことがなければ開示すればいいのに」などと思っていましたが、いざ渡すつもりでレセプトを眺めてみると積極的になれない気持ちも分かるような気がしてきました。
薬や検査の明細が分かるのはいいのです。
問題は「何とか管理料」とか「何とか指導料」の類です。
これが一体何なのか、実は私もうまく説明できる自信はありません。
現場の医師としては管理も指導も含めての診察のはずで、これらの項目を別立てにする意味が分からないのです。
最近おぼろげに感じるようになったのは、実は病院にはいくつかの側面があるということ。
風邪や食あたりのように初診で一度診察して終了、次に来院するのは1年後だったり5年後だったりという場合があります。
傷の処置や小手術のあとなど短期的に集中して通院する場合があります。
整形外科のリハビリなどのように数か月にわたって毎日のように通院しなくてはならない場合があります。
さらに高血圧や糖尿病などのように何年も定期的に通院しなくてはならない場合があります。
これらの通院にともなう「診療行為」にそれぞれ濃度の差があるのは当然です。
これらを「診察料」とひとくくりにしてしまうと科によって不公平感が生まれるわけです。
かと言って「内科診察料」とか「整形外科診察料」などと科の特性に応じて診察料を変えると、今度は総合病院での診察料計算がややこしくなってきます。
結局「診察基本料」あるいは「病院設備使用料」とも呼ぶべき最低限の額を「診察料」という名目で算定し、それ以外の科の特性に応じた実際の診察料を「指導料」や「管理料」という名目で調整している、そう考えるべきなのでしょう。
こんな説明で納得していただけたでしょうか?
納得できるわけありませんよね……。
(2010年2月12日)
本当はレセプト開示を推進する前に「再診料」は「診察基本料」に、「外来管理加算」は「診察料」に、「特定疾患療養管理料」は「かかりつけ医管理料」などに改称してもらえると助かるのですが……。
おっと。
制度を変えようとする時に、「制度を変えること自体には賛成だが、その前にすることがあるだろう」という論法で反対する人がいますよね。
そういう人たちって結局本音は「反対」なのです。
私もレセプト開示に反対と思われたくないので「賛成、しかしその前に」論はこれ以上は言わないでおきましょう。
(2010年2月15日)
レセプト開示に躊躇してしまう理由がもう一つあります。
「病名」です。
たとえば風邪薬を処方するためにはレセプト上に「感冒」という病名が必要です。
もし「感冒」という病名がレセプトに書かれていなければ保険者は薬代を支払ってくれません。
薬代の3割は患者さんからもらっていますが、残りの7割を病院はもらい損ねるのです。
よくあるのが他の病気で長期に通院している人が風邪をひいた場合。
診察して確かに風邪だという診断に至れば、いつもの薬に加えて風邪薬を渡す、で、時々「感冒」という病名をつけ忘れるのです。
こちらは身銭を切って薬を出すことになり、さらに悪いことにこうした「病名のつけ忘れ」も不正請求にカウントされてマスコミに発表されます。
損しているのはこちらなのに「病院は不正ばっかりしてけしからん!」と怒られたりするわけです。
が、これは今は関係ない話でした。
問題は検査にも「病名」が要求されることです。
不思議ですよね、病名を知りたいから検査しているのに、検査の時点で病名を明らかにせよと要求されているわけです。
みぞおちの痛みで患者さんが来られる。
胃潰瘍かもしれないが痛みのパターンから考えると「胆石」の可能性もある、となれば「胆石」があるかないか調べるために超音波検査が必要になります。
あまり腹部症状が強くない、むしろ動悸などの心臓の症状が強い、となれば「狭心症」の可能性を考えて心電図をとります。
そしてこれらの検査にも「病名」が必要なのです。
この人のカルテにはたちまち「胃潰瘍」「胆石症疑い」「狭心症疑い」という病名が並ぶことになります。
患者さんはレセプトを見ると自分が重病人のように思えてびっくりすると思います。
また5年前に胃癌の手術をした患者さんに定期的に肝臓の検査をしている場合、こちらとしては転移していないことを再確認するためにしているのに、レセプトを見ると「肝転移疑い」などと書かれてしまうわけです。
レセプト開示推進の前に、「病名」ではなくて「症状」で診療報酬が請求できるようになればいいのですが……、おっとまた前回の繰り返しでしたね。もうやめておきます。
(2010年2月17日)
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