神戸元町ダイアリー2009年(5)

最近定食屋などで「卵かけご飯」という看板を見かけることが多くなりました。
私も卵かけご飯が大好きで、旅館の朝食で生卵の替わりに玉子焼きや温泉卵が出されるとがっかりする口です。
思い出すのは震災の時です。
我が家は水道とガスは3か月近く止まっていましたがなぜか電気だけは当日から通っていて、たまたま買い置きしてあった冷蔵庫の卵と、レンジ対応のパック入りご飯と、電子レンジが無事だったのです。
それからしばらくは毎日卵かけご飯だけだったのですが、それが全く苦痛でなかった憶えがあります。
「卵かけご飯」、一時のブームではなくモーニング、ランチの基本メニューとして定着して欲しいものです。

 

(2009年10月5日)

「卵かけご飯」の話を書いていてふと思い出しました。
「バターご飯」。
熱々のご飯にバターと醤油をかけてよく混ぜて食べるのです。
幼稚園の頃、先生の「一番好きなお母さんの料理は?」という質問に「バターご飯」と答えて、あとで母に怒られたこともありましたっけ。
カロリーの問題もあって最近は食べる機会がありませんが、もし世界があと1週間で滅ぶと言われたらぜひ食べておきたい懐かしい味です。

 

(2009年10月7日)

大食いの人もいれば小食の人もいるのにどうして給食は全員同じ量を食べさせるのだろう?
給食は米飯食主体にして、生徒にそれぞれ食べたいだけよそわせれば無駄も少なくなるし、食糧自給率だってアップするしいいと思う、知り合いの小学校の先生にそんな提案をしたら給食はもうすでに米飯主体なのだそうですね。
すみません、自分が小学生だった40年近く前の感覚で話をしていました。
失礼しました。
小学校の先生と言えば、ずっと不思議に思っていました。
彼らは右と左がよく分からないのです。
レントゲンの検査などで「右を向いてください」と言っても、小学校の先生は反対向いたり、しばらく考えてから右を向いたりします。
「この人たちは賢いはずなのにどうして方向感覚がないんだろう?」とずっと思ってたのです。
これも最近やっと理由が分かりました。
小学校の先生は子どもたちに「さあ右手を挙げて」と言いながら自分は左手を挙げるのです。
「右を向いて」と言いながら自分は左を向かなくてはならないのです。
左右が分からなくなるのは一種の職業病なのでした。
これも完全に誤解していました、ごめんなさい。

 

(2009年10月9日)

山崎豊子の「不毛地帯」がドラマ化されるようです。
ミーハーな私はそういうのに弱くてさっそく本を買ってきて読み始めました。
まだ第1巻ですが、ものすごいです。
それはともかく新潮文庫を読んでいると不景気の波をまともに感じさせられます。
しおりの紐(スピン)の長さです。
左から平成5年の「カラマーゾフ」、平成19年の「その名にちなんで」、そして発売したばかりの「不毛地帯」です。
ここまで短くなると読みにくくて仕方がないのですがシベリア抑留に比べたらこんな苦労など……と自分に言い聞かせながら読んでいるところです。

 

(2009年10月14日)

というわけで「不毛地帯」第1回放送を見ました。
私は原作の第1巻を読み終えたところで、放送は2時間枠で第1巻のほとんどを消化してしまいました。
来週には追いつかれてしまうのではないかと戦々恐々です。
しかし考えようによってはこれは今流行のメディアミックスもどきと言えなくもありません。
週刊コミック誌で発表されたマンガがその週の放送でアニメ化される、「ドラゴンボール」のようなパターンです。
30年以上前の小説を読みながら時代の最先端を走っているようで何となくかっこいいです。

 

(2009年10月16日)

先日の朝日新聞の経済コラムで「関空は米軍基地にすればいい」と書いてあってびっくりしました。
私も以前から同じことを考えていたのですが、さすがに素面では言えず、酔っ払った時に冗談めかして言うのが精一杯でした。
やりますね、朝日新聞。
ところで今までは関空は米軍基地に、伊丹は廃止、神戸空港を拡充して新・関西空港にすればいいと思っていたのですが、神戸沖だと京都からが不便です。
そこで府庁移転に合わせて舞洲、夢洲に新・関空を作ってさらにリニア新幹線の新・新大阪駅を引っぱってきて、大阪湾の中心に関西圏の新都心を建設するというのはどうでしょうか。
問題はその時神戸空港をどうするかです。
神戸空港もいっそ廃港にしてその代わりにUSJと港湾機能を大阪から譲ってもらいましょう。
大阪の人には「勝手に造った赤字空港を廃港にするからゆうて何でUSJ譲ったらなあかんねん」と怒られそうですが。

 

(2009年11月13日)

「罪と罰」のずーっと先、第5部でレベジャートニコフが「婦人問題」について語るところがあります。
リザヴェータの妊娠とその「婦人問題」との関連も興味深いのですがそれは第5部まで置いておきましょうか。
さて全く話は変わりますが、クリエイティブで一見華やかそうで、でも楽(らく)そうな仕事に若者は集まります。
ネイルアーティスト、シナリオライター、カメラマン……、どの仕事も実際にはものすごく大変だと思うのですが若者の嗅覚にはいつも感心させられます。
私もこれから人気の出そうな仕事を一つ見つけました。
「仕分け人」
これから若者の間で人気爆発すること間違いなしです。

 

(2009年11月25日)

民主党政権の数々のマニフェスト達成のための切り札とも言うべき「事業仕分け」が2009年11月11日から始まった。
仕分け人の鋭い突っ込みに担当官僚がたじたじとなる場面がTVでも多く流され、非常に有効な政治パフォーマンスではあった。


電車に早く乗ろうと扉のスペースをふさいでいる人がいます。
扉には二人並んで出られるだけの幅があるのですが、その人がふさいでいるために一人ずつしか降りられず、乗客が降りてしまうまでに倍の時間がかかってしまいます。
早く乗ろうと焦るあまり、結局自分が乗るのが遅くなってしまうわけです。
しかしこういうことは他人の行動ではよく気がつくのですが、自分のこととなると見えなくなるのが怖いところです。
自分ではよかれと思ってやっているつもりなのに周りから見ると間が抜けている……、そんな場面はたくさんありそうです。
実は私もこの間初めて気がついたことがあります。
エレベーターに乗る時、今までは階数ボタンを先に押して「閉」ボタンを押していましたが、急ぐ時は「閉」ボタンを先に押すべきでした。
今の今まで気がつきませんでした、お恥ずかしい。

 

(2009年11月27日)

民主党の仕分け作業についての新聞記事を見て驚きました。
民主党は開業医の優遇税制を廃止する意向を示したが、医師会が猛反発している―――という記事です。
そんな優遇税制があるのなら廃止される前に少しでも恩恵にあやかろうと思って調べてみました。
それは「租税特別措置法第26条」のことでした。
これなら私も知っていました。
「利益」ではなく「売り上げ」が2500万円以下の診療所にはその72%を経費として認める、というものです。
この経費率は売上高が上がると低下して5000万円以下の診療所では57%(プラス490万円の加算金)となります。
事業主の方ならお分かりだと思うのですがどの業種にしても経費率はこんなものではないでしょうか。
こつこつと領収書を集めればこの経費率を上回るし、経費の計上をサボれば下回る。
優遇と言うよりはむしろ「経費率が72%でよければ領収書等をいちいち提出しなくてもいい」という意味合いの簡易税制だと思うのです。
しかもこれは売り上げ5000万円以上の診療所には適用されません。
大儲けしている開業医とは何の関係もない制度です。
どういったタイプの診療所がこの制度の恩恵を被っているでしょうか。
患者数が多いが人件費率が低い。
大きな検査機械が必要でなく検査自体も少ない、薬も院外処方箋。
これはまさに小児科です。
「優遇」税制とは決して思えませんが他業種と比べて不公平ならこんな制度は廃止すればいいと思います(税収はむしろ減るような気もしますが)。
しかし小児科開業医くらいにはこの「優遇」税制を続けてあげてもいいんじゃないかな、と思ったりするわけです。

 

(2009年11月30日)

先日近所のレンタルビデオ店が店じまいしてしまいました。
駅と自宅の真ん中にあってとても便利だったのですがとても残念です。
しかたなくちょっと遠くのビデオ店の会員になり、宅配型の DVD レンタルサービスにも加入しましたが家で見る映画の数はすっかり減ってしまいました……、と思って今年見た映画を数えてみると、何と例年のほぼ倍近い数でした。
行きつけのビデオ店がなくなったことによる減少よりも不景気で外食が減ったことによる増加の影響が大きかったようです。
おそるべし、この不景気。

 

(2009年12月7日)

デフレにも困ったものです。
住宅ローンを抱える身としては100倍くらいのインフレになればローンが一瞬で消滅して助かるのですが。
それは極端としても、デフレになると給付額が一定の年金受給者が有利になり、景気や物価によって給料が変化する現役世代が不利になります。
今やTVの視聴率や新聞の購買部数を支えているのは高齢者層ですからマスコミはあまりこういう側面は伝えてくれません。
このままデフレ傾向が進むと現役世代は職場を失い、賃金はカットされ、老後の年金もどんどん削られます。
しかし民主政治の根幹は最大多数の最大幸福ですから人口比率の多くを占める高齢者層の決定がそうであるなら私たちはそれに従わざるを得ません。
現役世代の声を政治に反映させるためには若い世代の選挙人口を増やすしかないと思います。 
18歳成人法に反対している人を見ると、敵が襲ってきているのに身内でつまらないメンツを張り合っているダメ軍人の姿をついつい思い出してしまうのです。

 

(2009年12月9日)

いかにデフレになろうとも年金の給付額を引き下げるのはなかなか難しいです。
しかし財源がないのも確かで、さらに景気のどん底で政府は消費税の引き上げなんてとても口に出せません。
とすると残された道は年金生活者に無報酬で働いてもらうしかないと思うのです。
子どもの頃によくやった「肩たたき券」や「お手伝い券」の応用です。
まだまだ元気な退職者は元気でない人の介護を担う。
その代わりに「介護ポイント」をもらい、自分が介護が必要な立場になった時にそれを使ってサービスを無料で受けるのです。
実際の介護には専門的な技能が求められるので退職者を現場で使うのは難しいかもしれません。
それならば町や公園の掃除、通学路や夜道のパトロール、駐車禁止や路上喫煙の取り締まりなど、専門性の低い労働を退職者に任せて、それで余った労働者を介護の現場に配置するというやり方でもいいかもしれません。
現役世代がボーナスカットで苦しんでいるのに新聞には特殊性の高い高額な海外旅行の広告がずらりと並んでいる、これはどう考えてもおかしいと思うのです。

 

(2009年12月11日)

もうそろそろ1年が終わります。
先日は「不景気のせいでDVDで見た映画の数が増えた」などと書いてしまいました。
その理屈で言うと読んだ本の数も増えていいはずですが、数えてみると例年より微減でした。
景気と映画の関係はトンデモ理論だったのかもしれません。
せっかく数えたついでに今年読んだ本のベスト3でも選びましょうか。

第3位:山崎豊子「不毛地帯」
年初に読んだ「三国志」を自分へのご褒美に入れようかと思ったのですが、やっぱりより面白いこっちに軍配を上げましょう。
ただし今放送されているドラマ版の方が原作よりも面白いです。
というわけでビミョーな入賞です。

第2位:ブルース・チャトウィン「パタゴニア」/カルロス・フェンテス「老いぼれグリンゴ」
続刊中の河出世界文学全集の1冊です。
今年から第2期に突入しましたが作品のレベルはむしろ前期よりも上がったような気もします。
ただ、2期では長編が少なくなり、たいていが1冊に中編2作という組み合わせ。
そして2編がそろって面白いというのがなかなかないのです。
これは「老いぼれグリンゴ」は最高、「パタゴニア」はもう一つってところで2位にとどまりました。

第1位:ダニロ・キシュ「庭、灰」/イタロ・カルヴィーノ「見えない都市」
というわけで総合点でこちらが今年のナンバー1となりました。
キシュという人は全く知りませんでしたがなかなかすごいです。
訳文もきれいで読んでいてうっとりするほど。
「見えない都市」もヘンな小説ですが悪くないです。

 

(2009年12月14日)

本のベスト3を発表したついでに映画のベスト3も決めましょうか。
全部レンタルDVDでの視聴なので少し時期遅れの作品ばかりです。

第3位:「ラブファイト」
これは意外な収穫でした。
青春ボクシングものなのですが、林遣都と北乃きいの若いカップルの演技がとても瑞々しくて爽やかです。
と思っていると、後半そこに強引に割り込んでくる大沢たかおと桜井幸子の大人のドラマ。
まるで「ガキの学芸会は引っ込んでろ」とばかりに遠慮も手加減もなくドラマの主役を奪おうとするのです。
見ている方はこの映画はどこに向かうんだろうと不安になってしまうのですが、最後には若手がきっちりとベテランを凌駕する演技力で引っくり返してくれます。
何回も出てくる長回しシーンで見せる若い二人の演技には鳥肌が立ちます。

第2位:「ハンサム☆スーツ」
普段はこのコラムでも難しい顔してドストエフスキーの話などを書いていますが実はコメディが大好きです。
今年のコメディのベスト1は文句なくこれです。
きっちり予定調和に従って進むストーリー。
ハマりすぎたキャラクターたち。
ベタベタに展開するのですが、それでも面白い。
これぞコメディの王道だと思うのです。

第1位:「おくりびと」
これはもう何も言うことはありません。
ツボを心得たシナリオ、奇跡的な広末涼子の演技、そして音楽。
チェロ弾きのはしくれとして私もさっそく主題曲の楽譜を入手して子どもたちのためのコンサートの楽器紹介コーナーでワンフレーズだけ弾きました。
子どもたちの反応はあまりよくなかったですが……。

こうして見るとアメリカ映画に元気がないですね。
ベスト5なら「フロスト×ニクソン」がかろうじて入ったのですが、ハリウッドにはもっと頑張ってほしいものです。

 

(2009年12月16日)

いよいよ年末ですね。
3か月前にまとめ買いした本が残り1冊になってしまいました。
例年なら正月休みには大長編に挑戦しようとうきうきする頃なのですが、今年は何を読むかまだ決まっていません。
あと1冊を読み終えるまでに決めなくてはなりません、未読の大長編って何かあったかなあ……と思っているとこんな本がありました。
雑誌「考える人」08年春季号「海外の長篇小説ベスト100」、これは自分で読書計画を立てられない私のようなモノグサ星人にはぴったりです。
さっそく買ってこようっと。
というわけでこの欄の更新は今回が年内最後です。
また来年お会いしましょう。
くれぐれもお身体にはお気をつけください。

 

(2009年12月21日)

神戸元町ダイアリー2009年(4)夏のオカルト特集<main>神戸元町ダイアリー2010年(1)宇宙人の陰謀


健康ディクショナリー2009年(2)

臓器移植法案修正の是非をめぐって参議院で論戦中です。
脳死を一律に人の死と定義づけるか否か、子どもの脳死判定をどうするか、論点は主にこの2点だと思います。
これに関してもどうして現場の医師が発言しないのか不思議です。
植物状態の患者の看護は家族に想像を絶するような体力的、精神的、経済的負担を強います。
現場の医師ならその過酷な看護のせいで生活も身体も人間関係もぼろぼろになっていった家族をたくさん見てきたはずです。
脳死判定を拒み、献身的な看護を続ける家族は本当に素晴らしいと思います。
しかしだからといって、疲れ切った挙句に看護を放棄してしまう家族を責める風潮があってはなりません。
そのためにはいつまでも心臓死に軸足を置いたままではいけないと思うのです。

 

(2009年7月8日)

医師の考え方についてマスコミや論壇が大きく勘違いしているのも議論を混乱させている原因の一つです。
彼らは医者とは移植をしたがるものだと思い込んでいるようです。
しかしそれは全然違います。
医師が助けたいのは目の前にいる患者なのです。
見たこともない人のために目の前にいる患者の治療を中断する、そんな思考回路は臨床にたずさわる医師にはありません。
そして脳死の可能性がある患者を診ている医師と、移植臓器を欲している患者を診ている医師は全然別人です。
他人の受け持ち患者のために自分の受け持ち患者を犠牲にする、そんな発想は現場の医師にはありません。
きれいごとではないのです。
医者が目の前の患者を治したいという動機はそれだけ偏狭で身勝手なものなのです。

 

(2009年7月10日)

自分がタバコを吸わなくても夫が喫煙者だと妻の脳卒中のリスクが42%高くなるという研究報告が発表されました。
家でタバコを吸っているご主人さんは奥さんの寿命を縮めているわけです。
しかし奥さんの長生きを願う亭主族が少ないからでしょうか、この記事は大して話題になりませんでした。
でもこれはどうでしょうか。
受動喫煙でペットが早死にする。
サンパウロの獣医学会の報告では受動喫煙で飼い犬の呼吸器疾患の発生率が高まるそうです。
奥さんの前でタバコを吸っているご主人も、犬の前では吸わない方がいいと思います。

 

(2009年7月15日)

奥さんやペットの長生きに興味がない人にはさらに関係ない話かもしれません。
受動喫煙で子どもの学習能力が低下するという研究報告が発表されました。
喫煙する集団としない集団では当然収入や教育水準が違うのですが、その差を調整したうえでの比較調査だそうです。
6歳から16歳の小児5,000人以上を対象に読解力や計算能力のテストを行った結果ですから信憑性の高いデータです。
愛煙家のみなさん、子どもに「ゲームばかりしないで勉強しろ」と言うよりも、自分が禁煙した方が子どもの成績は上がると思います。

 

(2009年7月17日)

胃カメラが苦手な人のために、当クリニックでは寝ている間に検査をするという方法を取っています。
10時過ぎに検査を受けた場合、検査はすぐ終わりますがそのあと無理に起こしませんから目が醒めるのは12時ごろです。
今日も普段どおり胃カメラの予約を受けていたのですが、そうそう、今日は日食でした。
朝来院された患者さんに「寝ている間に日食が終わってしまいますけど、いいですか?」と一応確かめたところ「別に興味ないから」という返事でした。
TVニュースを見ていると11時前後は全国民が空を見上げなくてはならないような気になっていましたが、そんなことはなかったようです。

 

(2009年7月22日)

新型インフルエンザのワクチンの接種が始まりました。
当院ではいつどの程度確保できるか全く不明です。
情報が入り次第お知らせいたしますのでもう少しお待ちください。
さて肝心の「打つべきかどうか」についてですが、これもかなりややこしい問題です。
何と言っても神戸ではすでに終息期に入ろうとしている感染症なのです。
東京発のマスコミ情報や現場の事情を知らない厚生労働省のガイドラインが念頭に置いているのは「これから流行に向かう」地域のことだけです。
神戸市民の事情などこれっぽっちも考えていません。
私たちは自分で考え自分で判断する必要があります。

 

(2009年10月19日)

考えてみれば「○人以上休めば学級閉鎖」という基準もおかしな話です。
たとえば30人学級で、春の流行期に10人が新型インフルエンザにかかり、秋になって10人がかかり、今日になって残った10人もかかってしまったとします。
このクラスの生徒は全員感染したわけですから学級閉鎖をする意味がないわけです。
実際は学校や地域の単位で考えなくてはいけない問題なのでこう単純ではありませんが、このように感染症というのは流行期と終息期とでは対応が異なってくるわけです。
そこで、問題です。
春に10人がかかり、秋に10人がかかった。
さあ残る10人はワクチンを打つべきでしょうか。
私はこの10人には免疫ができている可能性があると思うのです。
もともと抗体があったのか、あるいは感染したけれども症状が出なかったか、いずれにせよ流行終息期にいたるまで感染しなかった人たちにワクチンを接種する意味はあまりないと思うのです。
このコラムをお読みの方はお分かりだと思いますが、これはあくまでも統計上の話です。
ワクチンを打ってもインフルエンザにかかる人がいるのと同様に、抗体がなくても運よく感染しない人もいます。
しかし目安として、周囲の人はばたばた倒れたけれども自分はぴんぴんしていた、しかも最近では周囲の感染者も少なくなっている、そういう人はワクチンを接種しなくてもいいと思います。

 

(2009年10月21日)

どうでしょうか、神戸のみなさん。
周りを見わたしてみて、新型インフルエンザにかかっている人は減っていると思いませんか?
その実感はおそらく正しいと思います。
つまり神戸に限って言えば今、新型インフルエンザは、2月下旬の季節性インフルエンザと同じような状況にあると言ってもいいと思うのです。
そのタイミングで季節性インフルエンザのワクチンを打つ人はあまりいません。
費用対効果が悪すぎるのです。
新型も同じことです。
30代以上の普通に生活をしている人は高い金を払ってワクチンを打つ必要はないと思います。
ちなみに私もこの間30歳を過ぎたところなので(?)ワクチンは打ちません。
もちろん季節性インフルエンザに対しては例年通りの対処が必要です。
当院では11月から接種を始めます。
受診歴のある方は1,500円、それ以外の方は4,500円です。
どうぞご相談ください。

 

(2009年10月23日)

よく訊ねられるのが「女医の肛門科医はいないのか?」という質問です。
神戸の全ての肛門科を把握しているわけではありませんが、私の知る限り女性の肛門科医はいません。
肛門科というのは消化器外科の一ジャンルです。
肛門科医は外科医なのです。
内科だろうが婦人科だろうがどの科でもハードなことにかわりはありません。
当直をすれば夜中にたたき起こされて急患を診察しなくてはなりません。
ただ、外科医は診察した上に、必要であればそのまま大手術に入らなくてはなりません。
時には夜中に5時間も立ちっぱなしで手術をしたりするわけです。
単純に肉体的にハードです。
そういう事情もあって女性の外科医自体が少ないのです。
実際私も女性の外科医は一人も知りません。
今の時点では女性の肛門科医を探すのは非常に難しいと思います。

 

(2009年11月8日)

それから当院とは直接関係ありませんが「乳腺」も外科の範疇です。
勘違いしている人も多いのですが、胸にしこりがあった時には婦人科ではなく外科に行かなくてはなりません。
もちろん妊娠や授乳にともなうおっぱいのトラブルは婦人科の専門領域ですが、婦人科医には乳癌の診断はできません。
そして前回書いた理由で女性の乳癌専門医はほとんどいないのです。
乳癌の診断にはマンモグラフィーという検査が必要です。
これは熟練した放射線科でないとできません。
そして放射線科も男だけの職種です。
どんなに厳重にプロテクターをつけても被曝が避けられない放射線科の現場は、生物学的に女性向きでないのです。
乳癌検診は女性の医師か技師にしてもらいたいという意見をよく聞きますが、現状ではなかなか難しいと思うのです。

 

(2009年11月11日)

「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!」
ドラマなどでは医師が患者を叱りつけるシーンがよくあります。
しかし患者の立場から言うと、仕事も家庭もあるし「もう少し様子を見たらよくなるかも」と考えるのは当然です。
もし私が調子悪くても病院に行くのはなるべく先に延ばしたいと考えるでしょう。
冒頭のようなセリフはドラマでは見られても現実にはありえない言葉だと思います。
逆にこんなことを患者に言うような医師が万が一にでもいるならそちらの方が大問題だと思います。
とはいうものの年末年始ともなると話は別です。
風邪をこじらせて我慢に我慢を重ねた末に仕方なく12月25日に受診しても、そこまでひどくなった風邪は一日では治りません。
しかも次の週からは開いている病院の数はぐっと減ります。
調子が悪い人はなるべく週の初めに受診した方がいいと思います。

 

(2009年12月18日)

健康ディクショナリー2009年(1)新型インフルエンザについて<main>健康ディクショナリー2010年(1)レセプト開示


「罪と罰」を読む(第1部第7章)

第1部第7章(第1巻:180ページ〜206ページ)

(18)

言うまでもなき、第1部のクライマックスです。
老婆殺しのシーン、おそらくドストエフスキーが生涯書いた中で最も血なまぐさいシーンです。
ここでのラスコーリニコフにはもはや理性のかけらも見られません。
彼を動かしているのはただの衝動です。
殺人の描写の合間にラスコーリニコフの思考の断片、あるいは妙に醒めた客観的な視点のようなものが差し挟まれますが、行動を制御することはできません。
ここを読んでいてすっかりラスコーリニコフに感情移入してしまっている自分に気がつきます。
第6章までをラスコーリニコフに同情的に読むのも、読み方としてはありえると思います。
彼の身勝手な理屈や偏狭な性格に批判的に読むことも可能です。
しかし読み手の立場など吹き飛ばしてしまうほどのド迫力の緊迫感で、第7章はいやおうなく読み手をラスコーリニコフ側に引きずり込むのです。

 

(2009年12月1日)

(19)

ところで第7章には一人印象的な人物が登場します。
このシーンだけの登場でこの場では名前も明かされないのですが、犯行直後に現場にやってくる別の客です。
彼は鍵の具合から老婆が留守なのではなく誰かが閉じこもっているのだと推理します。
その言葉だけでこの若者の方がラスコーリニコフよりも数段頭がいいことが分かります。
彼は居合わせたもう一人の男に予審判事になる勉強中だと自己紹介します。
予審判事といえば、このあとラスコーリニコフを執拗に追求するポルフィーリーは本物の予審判事です。
つまりこの時点でポルフィーリーがラスコーリニコフよりも格段に頭がいいことが提示されているわけです。
先日物語の後半はラスコーリニコフの敗者復活戦だと書きました。
しかもその試合相手は自分より数段格上のようです。
ラスコーリニコフ絶体絶命の大ピンチです。

 

(2009年12月4日)

プロローグ<第1部第6章<main>第2部第1章


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