神戸元町ダイアリー2008年(4)

2008年夏、中国産鰻を国産と偽装する不正表示事件が報じられた。
それを期に他の卸業者による同様の事例が数多く発覚し、さらに他業種での産地偽装、消費期限偽装、成分偽装などありとあらゆる偽装問題が連日新聞紙上をにぎわせた。
 

本格的に暑くなってきました。
こういう時はやっぱり鰻ですね。
不正表示事件のあおりを受けて売り上げが落ちて値下がりするのではないか、いやいや「下手に値段を下げると産地偽装ととられかねない」と売り手が考えて値下がりは期待薄か、などといろいろ考えています。
こういう時こそ経済評論家が「値下げは売り上げ減のためで産地偽装のためではありません」と言ってくれると、売り手も安心して(?)値下げできるのではないでしょうか。
森永さん、ひとつどうですか?

 

(2008年7月4日)

マイクル・コナリーの「終結者たち」(講談社文庫)を読み終わりました。
14か月かかってコナリーの翻訳された16作品全30冊を読破したことになります。
ハリー・ボッシュ・シリーズはまだ続くようですが、この1年間本当に充実した読書生活を楽しませてもらいました。
次はジェフリー・ディーヴァーにしようか、それともローレンス・ブロックの未読作品を片づけようか、わくわくしながら考えているところです。

 

(2008年7月7日)

近所のレンタルビデオショップがコミックのレンタルも始めました。
入ってみると昔の貸本屋みたいでなかなか懐かしい感じです。
話題になっている作品を借りたいと思うのですが、話題作はたいていまだ連載中です。
さすがにリアルタイムで追いかける余裕はないので、評判がよくてなおかつ完結した作品に限って読もうと思っているところです。
今は浦沢直樹の「モンスター」というのを読んでいます。
感想はまた後日。

 

(2008年7月9日)

誕生祝にケーキをもらいました。
ケーキといっても和菓子です。
中には餡子が入っているらしいです。
デコレーション饅頭とでも言えばいいのでしょうか?
神戸駅近くの「幸福堂」というお店で、「ネコとチェロが好き」と伝えたら作ってくれたそうです。
チェロにはちゃんと弦が張られて、求肥には音符マークが焼き付けられてなかなか細工が細かいです。
食べるのがもったいない感じです。

 

(2008年7月11日)

浦沢直樹の「モンスター」を読み終わりました。
全18巻です。
読みながらユゴーの「レ・ミゼラブル」を思い出しました。
ともに主人公が逃避行を続けながらその先々で人を助けてしまうというお話で、執念深い刑事が登場するのも同じです。
違うのはタイトルにもなっている「モンスター」の存在です。
しかし同時にこの「モンスター」の存在がこの作品の最大の弱点でもあります。
冷酷無比の巨大な悪、これにリアリティがなさすぎるのです。
「誰が」「なぜ」犯罪を犯すのかは描写されても、「いかにして」は描かれず、とてももどかしいです。
面白かった、しかし長すぎる。
これが正直な感想です。

 

(2008年7月14日)

先日パリ国立オペラの「トリスタンとイゾルデ」に行ってきました。
指揮はセミヨン・ビシュコフ、演出がピーター・セラーズ、そして映像がビル・ヴィオラでした。
演奏はあくまでも正統派でオーケストラも歌手も素晴らしかったのですが、演出が斬新でした。
ステージ中央に設置された巨大スクリーンにヴィオラの作品が映し出され、歌手たちはその前で演技をします。
演技と言っても動きは最低限に抑えられ、その代わりにヴィオラのビデオアートが登場人物たちの心象風景を語るという仕組みでした。
ワーグナーの音楽はさすがに長くてところどころ退屈です。
ヴィオラの作品も例によってさほど面白いものではない。
ところが二つが一緒になるとなかなか面白いのです。
3幕4時間の間全く眠気に襲われることなく音楽を楽しむことができました。
考えてみれば「トリスタンとイゾルデ」はもともと全く動きのないドラマです。
第3幕など死の床にあるトリスタンが45分間ああでもないこうでもないと歌い続けるのです。
派手な演出のつけようがありません。
それならトリスタンは寝かしておいて、観客の視覚はスクリーン映像で楽しませる、というのが真っ当な発想なのかもしれません。

 

(2008年7月23日)

「トリスタンとイゾルデ」の演出で気になったのは演技の抑え方の不徹底さです。
第1幕はちょっと抑え気味という感じでしょうか。
媚薬を飲んだ二人の胸の中で愛情が高まるシーン、二人はぴたりと並んで立ってはいますが決して触れ合いません。
第3幕にいたってはトリスタンはイゾルデの腕の中で息絶えるはずなのに、イゾルデは舞台中央のトリスタンに近づこうともしません。
ところが第2幕では待ちに待った出会いの時、二人は普通に抱き合って口づけを交わします。
もしかすると3幕で駆けつけてきたイゾルデはトリスタンの願望から生まれた幻覚という解釈なのかな? とも思いましたがその後の展開を見るとそうでもなさそうでした。
いっそのこと第2幕も二人が抱き合わなければよかったのに、そう思えてなりません。

 

(2008年7月25日)

オペラ「ヘンゼルとグレーテル」が終わりました。(7月21日at灘区民ホール「マリーホール」)
若手の歌手たちと学生主体のオーケストラがタッグを組んで作り出した手作りオペラです。
会場もほぼ満席となりお客さんもとても喜んでくれました。
制作のスタッフの苦労は大変だったと思います、本当にお疲れ様でした。
さて一プレイヤーとして参加して不満が二つ。
一つは演奏していると舞台が見えないこと。
演出、舞台監督、美術、それぞれがいい仕事をして楽しいステージを作っていたらしいのですが、自分の目では全く見えないのです。
これは少しもったいないです。
もう一つは自分の伸びしろのなさ。
最後の2週間でぐんぐんと上達していく学生たちを横目で見ながら、自分は公演直前にはすっかり息切れ状態。
あっという間に自分を追い越していく若い人たちを見るのは頼もしいようであり、実はやはり寂しいものです。
またこういう企画があればぜひ参加したいと思っています。

 

(2008年7月28日)

「憮然」は正しくは失望して呆然とすることらしいです。
私も間違えて使っていました、「憮然として席を立った」のように。
しかしこの間プロの小説家も間違えて使っているのを発見しました。
馳星周の「長恨歌」です。
馳星周は私がその文章力や言語感覚を絶対的に信頼する作家の一人です。
こうなってくると「憮然」の意味が現代では変わってきていると解釈した方がいいと思います。
負け惜しみかもしれませんが。
さて氏の「長恨歌」は衝撃のデビュー作「不夜城」のシリーズ3作目にして完結篇です。
あの衝撃とエネルギーはそのままで、さらにダークに進化を遂げた佳作だったと思いました。

 

(2008年7月30日)

最近は女子大学生も日傘を差しています。
紫外線から肌を守るのはいいことです、若い時からそうやってしっかりUV対策を取ることが大切……、とうなずいていたら目の前を日傘を差した女子中学生が通り過ぎていきました。
松本胃腸科クリニックは明日9日から17日まで休診します。くれぐれも体調管理にお気をつけください。

 

(2008年8月8日)

お盆休みも終わってしまいました。
みなさまゆっくり過ごせましたでしょうか?
さて私も2日ほど帰省していたのですが田舎の人たちはオリンピックを見るでもなく、高校野球を見るでもなく、ましてやプロ野球を見るでもなく。
そういえば兵庫県代表のチームの試合の時も三宮の街頭テレビの前に人の集まりはできていませんでした。
テレビや新聞が騒ぎ立てるほどは世間は盛り上がってないのではないか? と感じたりしています。
みなさまの学校や職場は盛り上がってますか?

 

(2008年8月18日)

お盆休みの間にジェフリー・ディーヴァーの「ボーン・コレクター」を読みました。
ニュータイプの安楽椅子探偵という感じでとても面白かったです。
でも本以上に面白かったのはGoogleの「ストリートビュー」です。
パソコン画面上で街を自由に歩きまわれるというGoogleの新機能です。
ディーヴァーは犯行現場の地名などをかなりリアルに書き込んでいます。
「37丁目と11番街の交差点そばのアムトラック線路脇」というふうに。
ここまで書いてくれれば私たちは「ストリートビュー」で犯行現場に行くことができるのです。
これからは「リンカーン・ライム」「ハリー・ボッシュ」「新宿鮫」の各シリーズの読書にはパソコンが欠かせない存在になりそうです。

 

(2008年8月20日)

待合室のBGMとしてベートーヴェンを流していましたが、とうとう全集87枚が一巡しました。
聴き終えて思ったのは「ベートーヴェンも結構つまらない曲を書いてるんだなあ」ということ。
やっぱり有名な曲にはそれなりの、そうでない曲にはそれなりの理由があるようです。
休み明けからはバッハが流れています。
バッハとは2年近くのお付き合いになりそうです。

 

(2008年8月22日)

2008年の北京オリンピックで日本が獲得した金メダルは9個。
印象的なものとしては連覇の北島康介、柔道石井慧、女子ソフトボール。
その他にはチベットなどの人権問題に端を発したボイコット騒動など。 


今年のオリンピックはほとんどTV観戦することもなく終わってしまいました。
見れば面白かったのでしょうが、見なければ見ないでそれほど惜しい気持ちにもならない、個人的にはそんな感じの大会でした。
ちなみに2004年8月30日の記事によると4年前は盛り上がっていたようです。
と言いながら今大会、内柴選手の金メダルの瞬間はたまたまTVで見ていました。
寝技に持ち込んで相手に覆いかぶさったと思ったら相手がすぐタップ。
内柴選手もきょとんとしたあっけない勝利の瞬間でした。
面白かったのは試合終了からメダル授与式まで10分近く、解説者が技の名前を口にしなかったことです。
アナウンサーも一切訊こうとしませんでした。
きっと解説者が「技の名前は訊かないでくれ」オーラを出していたのでしょう。

 

(2008年8月25日)

オリンピックの開会式の演出に対して不満を感じる人もいたようですが、見ていない立場からするとぴんと来ない話です。
口(くち)パクやCGに対する失望感は、リアルタイムで見た人にだけ許されるささやかな慰みなのだと思いました。
あとで知ったのですが開会式の総合プロデューサーはチャン・イーモウだったとか。
派手な色使いと大袈裟なワイヤーアクションが特徴的な映画監督です。
クラシックファンには紫禁城での「トゥーランドット」の演出家と言った方が分かりやすいかもしれません。
スケールが大きければ大きいほど真価を発揮するタイプの人です。
だとしたら断片的なニュース映像ではなくてディレクターズカット版「開会式」を見てみたいものです。

 

(2008年8月27日)

オリンピックの人気種目の競技時間をアメリカのゴールデンタイムに合わせることに疑問を感じる人がいます。
私には、金を出す人が口を出すのは当然のように思えるのですが、物事にはいろいろな受け止め方があるのでしょう。
ところでその問題の放映権料ですが日本の1億8000万ドルに対してアメリカは8億9400万ドル、約5倍の額を支払っています。
ハリウッド製作の超大作娯楽映画ならばいくら資金をかけても全世界で上映されるのでペイできます。
ところが放映権料についてはアメリカ国内で放映される分だけ、つまり在米アメリカ人に対する広告料だけが収入源です。
日本の2.5倍の人に対して5倍の広告料が投下されている、つまりアメリカ人は日本人に比べて2倍の広告効果が見込めると思われているということです。
アメリカ人はオリンピックに対して多額の放映権料を支払っていること自体は誇りに思っていいと思います。
その一方でコマーシャルに対して日本人よりも2倍踊らされやすい(と思われている)ことについてはちょっと恥ずかしく思った方がいいかもしれません。

 

(2008年8月29日)

私が小学生のころですからミュンヘンオリンピックの時でしょうか、担任の先生が「日本の入場行進が一番美しい」と言っていたのをおぼえています。
その当時、きっちり整列して入場するのは日本だけだったと思います。
アメリカやヨーロッパの選手たちはリラックスモードでだらだら歩いて、子ども心にだらしないと感じた記憶があります。
ところがそれから4年経つと、整然と行進する日本選手たちを見てさすがに私も「気持ち悪い」と感じるようになっていました。
モスクワオリンピックは日本は不参加でしたが次のロサンゼルスでは日本選手たちも自由に入場するようになっていました。
私が小学校のころは規律を重んじる教育がまだ主流で、それ以降どんどん自由や人権を大切にする進歩的教育が広がってきました。
今、時代はこの行き過ぎた過保護教育を見直す流れになっています。
そうすると不思議なもので今回の入場行進を見て「行進中に携帯でしゃべったり列から離れて記念撮影したり、いくら何でもこれはだらだらし過ぎだろう」と感じる私がいます。
私の感性は時代に流されやすい頼りないもののようです。

 

(2008年9月1日)

今回のオリンピックにはあまり興味がない、と言っておきながらオリンピックネタで引っぱります。
入場行進ですが、莫大な放送権料を支払っているアメリカのTVメディアがどうして文句を言わないのかが不思議です。
トライアスロンを2時間程度のショートバージョンに改変し、野球にはタイブレーク方式を導入し、競技をTV放送枠に収めることしか考えていないスポンサーたちなのに、どうしてあのだらだらした入場行進はOKなのでしょう。
入場行進は1カ国10人までに制限して、それ以上は一人1,000ドルの参加料を取ればいいと思います。
開会式の時間も短縮されるし、参加者の意識も高まると思います。

 

(2008年9月3日)

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