神戸元町ダイアリー2008年(1)

1月3日放送の「古代ローマの歴史スペシャル」という番組を後半の1時間だけ見ました。
塩野七生の「ローマ人の物語」をもとにBBC制作の再現ドラマを再構築した番組です。
スイッチを入れるとちょうどカエサル(ジュリアス・シーザー)の箇所でした。
塩野七生言うところの歴史上ナンバー1のカリスマヒーローです。
番組は彼女の解釈に沿ってカエサルを魅力的で天才的な軍師政治家として描こうとします。
ところが元の映像を制作したBBCのドキュメンタリーは実はカエサルには批判的なのです。
考えてみれば当然です、イギリス人にとってはカエサルは侵略者だったのですから。
映像のカエサルはさほど魅力的にも見えず、戦場での天才的な軍略も全く描かれず、ぎくしゃくした不完全燃焼ドラマに終わってしまいました。
せっかく意欲的な番組だったのに少し残念でした。
それにしてもこういう番組にもタレントが大挙出演しているんですね。
映像の合間合間にキャスティング趣旨不明瞭なタレントたちが完全に的をはずしたコメントを語ってくれます。
企画会議でのやり取りが目に浮かぶようです。

プロデューサー「バラエティ形式にしてタレントを多く使ってくれないか」
ディレクター「そういう趣旨の番組じゃないんですが」
プロデューサー「事務所がこのタレントを使わないとあのタレントも出さないって言ってるんだよ、頼むよ。他に枠もないしさ」

ローマ帝国の歴史のロマンに夢をはせるよりも、テレビ局の舞台裏がついつい気になってしまう1時間でした。

 

(2008年1月9日) 

以前からずっと不思議に思っていたことがあります。
どうしてテレビドラマでは優等生は利己的なキャラクターとして描かれるのでしょう? 
落ちこぼれの主人公がクラスで何かイベントを企画するとします。
最初は誰も賛同してくれないけれども1人ずつ協力者が増えていきます。
それでも最後まで優等生は協力しようとしません……。
ドラマではおなじみの展開です。
しかし現実にはスポーツ大会でも合唱大会でも、クラスを引っぱるのは優等生です。
テレビがどうして優等生をないがしろにするのか不思議でした。
最近ようやくその理由が分かりました。
優等生は普段テレビを見ないのです。
だからテレビ局が優等生を不当に描いても誰もクレームをつけません。
実に簡単な理由でした。

 

(2008年1月25日) 

河出書房から世界文学全集が出ています。
池澤夏樹個人編集という意欲的なプロジェクトです。
全集好きの私ですが「世界文学全集」だけにはあまり興味がありませんでした。
普通の世界文学全集だと既読の作品が多く含まれます。
ごく一部の未読の作品のために全集を買うのはさすがにもったいないからです。
ところが今度の全集はものすごいラインナップです。
何がすごいと言って、第1期には既読作品が0、第2期にわずかに2冊含まれるだけなのです。
池澤さん、やってくれました。2年間ついていきます。

 

(2008年1月28日)

最近新聞を読んでいてもどかしく感じることがあります。
激しい選挙戦を展開しているアメリカ大統領選ですが、候補者の肩書きが市長や知事だと選出州を書いてくれるのに上院議員だと選出州は書いてくれないのです。
何か理由でもあるのでしょうか? 
ちなみに有力候補の選出州は以下の通りです。
ジョン・マケイン アリゾナ州選出上院議員
ミット・ロムニー 前マサチューセッツ州知事
ヒラリー・クリントン ニューヨーク州選出上院議員
バラック・オバマ イリノイ州選出上院議員

 

(2008年1月30日)

タバコ購入カードが導入されるようです。
このカードがないと自動販売機ではタバコが買えません。 
さてこのカードを使ってタバコを買おうとしていると、見るからに高校生風の若者がやってきて「カード忘れたんで一緒に僕の分も買ってくれる? お金は払うから」と言ってきたとします。
そんな時「馬鹿野郎、高校生がタバコなんか吸うんじゃない!」と怒鳴りつけられるのはごく一部の人ではないでしょうか。
たいていは卑屈な笑顔を浮かべながらも一緒に買ってあげて、せめてものお慰みに別れ際に「健康のために吸い過ぎに注意しましょう」と言うのがせいぜいだと思います。
タスポを使う時は回りに高校生がいないことを確かめた方がいいと思います。
まあそれは冗談として、タスポ導入のついでに一つ提案があります。
ずいぶん前にも書いたことがあるのですが、喫煙可能年齢を毎年1歳ずつ上げていってはどうでしょうか。
年金受給年齢を少しずつ上げるのと同様、政府が得意なやり方です。 
10年もすればタバコを吸うのはオヤジばっかりになります。
大人の吸うタバコに憧れる高校生達も、オヤジが吸うタバコには憧れないと思います。

 

(2008年2月1日)

先日、池澤夏樹個人編集の世界文学全集について書きました。
彼は朝日新聞の書評を担当していて、その目の付け所や文章がとてもいいのです。
「彼の鑑識眼を全面的に信用する! この世界文学全集は絶対に買いだ!」と私は知り合いに熱く語っていました。
ところが朝日新聞の書評家は「池澤夏樹」ではなくて「池上冬樹」でした。
彼の鑑識眼は信用できても私の記憶力が信用できないようです。
また先日彼の「悪の華」というハードボイルド小説を読んで、「こんなハードな小説を書く人があんな繊細な書評を書くんだ」と驚いたのですが、それは「池上冬樹」ではなくて「新堂冬樹」でした。
全面的に信用できる書評家なら名前くらい憶えておきたいものです。

 

(2008年2月4日) 

メタミドホスとジクロルボス。
どちらも最近話題の薬物ですがとても憶えにくい名前です。
まずメタミドホス(Methamidophos)。
ホスと付けば大体「有機リン酸(phosphate)」のことで、それにメチル基とアミド基が付いたもの、くらいのニュアンスでしょうか。
ジクロルボス(Dichlorvos)もクロル基が二つ付いた「有機リン酸」という意味合いなのでしょう。
こう考えれば舌をかみそうな名前も憶えられそうです。
しかし本来「phos」であるべきところが後者だけどうして「vos」になっているのかはよく分かりません。
混入経路も気になりますがこっちの方も気になって仕方がないところです。


2007年12月に十数人の中毒者を出した中国製冷凍餃子(JTフーズ輸入販売)から検出された毒物がメタミドホスとジクロルボスだった。
ちなみにジクロルボスはdimethyl-2,2-dichlorvinylphosphateで、ビニル基(vinyl)が含まれた有機リン酸(phos)なのでvosと略されるらしい。 

 

(2008年2月6日)


JTが「当社の商品で健康被害が発生した」とのお詫び広告を出しています。
JTは餃子以外にも年間数万人単位の健康被害を生んでいる商品を扱っていたと思うのですが……。
それはさておき、今回の事件がJTの多角化、脱タバコ化の流れに水を差すのではないかというのが最大の懸念です。

 

(2008年2月2日)

洋画を見る時、字幕版を見ますか? 吹き替え版を見ますか?
私は基本的に吹き替え派なのですが、たまに字幕を見ながら吹き替えたセリフを聞きます。
吹き替えの方が情報量が多いと信じていましたが必ずしもそうでもないようです。
テレビの解像度が上がったために字幕の字数が増えたからかもしれません。
それならば古い映画の字幕もどんどん付け直していって欲しいものです。
「勝手にしやがれ」とか「気狂いピエロ」とか、本当はどういう話だったのか気になるところです。

 

(2008年2月15日)

映画「チーム・バチスタの栄光」を見てきました。
エンターテインメントとしてかなりよく出来ていたと思います。
とにかく最後まで退屈せずに見られました。
これ以上はネタバレになるので詳しくは書きませんが、原作では一人称でストーリーを追っていく主人公が、映画では第三者的に描写されます。
そうなるとどうしても思ってしまいます。
「で、結局主人公は何をしたんだっけ?」
原作ではそれほど気にならなかったことです。
小説の「視点」がいかに大切か考えさせられた映画でした。

 

(2008年2月18日)

それからもう一つ。
推理小説ではいくつかルールがあって、そのルールに従っていないとマニアからは「フェアじゃない」と言われてしまいます。
たとえば犯人であるはずの人物が殺人時刻に100キロ離れたところで目撃されている。
つまり完璧なアリバイがある。
一体どういうトリックなんだろう? と思っていると最後の最後になって探偵が「実は犯人には双子の兄弟がいるのです」などと言いだす、これはだめです。
双子の兄弟がいるなら謎解きの前にちゃんと提示するか、ある程度推測できる形で伏線を張っておかないと「アンフェア」と言われるわけです。
そのルールの一つに「未知の毒物を使ってはならない」というのがあります。
被害者は毒殺されている。
しかし食べ物の中には毒は入っていなかったし、どこにも注射の跡もない。
一体どういうトリックで犯人は被害者に毒を与えたんだろう? と思っていると最後になって探偵が言うのです。
「これは触るだけでも死んでしまう毒だったのです」
それならそういう毒の存在をあらかじめオープンにしておかないと反則です。
「チーム・バチスタ」の場合は限りなく黒に近い感じがするのですが、どうでしょう?

 

(2008年2月20日)

推理小説のルールというと「ノックスの十戒」とか「ヴァン・ダインの二十則」というのが有名です。
どちらも古いものなので今となっては噴飯ものの規則が含まれていますが、ミステリとはフェアであるべき、という考え方を徹底させたという意味でとても意義深いものだと思います。
たとえば小説の中で監察医が「この死体は死後2時間経っている」と言ったとします。
それが最後になって監察医が「ごめん、ちょっと勘違いしてました」なんて言うのはノックスやヴァン・ダインを引き合いに出すまでもなくアンフェアです。
ワルヴィンスキー医師が「スメルジャコフの癲癇はうたがう余地のないものである」と断言して仮病の可能性をばっさり否定したからにはスメルジャコフは犯人ではありえないのです。
つまり「カラマーゾフの兄弟」です。
私はドストエフスキーはフェアな作家だと信じていますが、不思議なことに世の中には彼をアンフェアな作家だと思い込んでいる人が多いようです。
可哀想なドストエフスキー。

 

(2008年2月22日)

何をどう考えていいのかよく分からなくなってきました。
沖縄県在住の米軍関係者4万4963人。
うち基地外居住者1万748人。
沖縄県の人口138万人、強姦、強制わいせつ認知件数76件(2007年1月から10月)。
神戸市の人口153万人、昨年の強制わいせつ認知件数152件。

 

(2008年2月25日)

前回のコラムは非常に舌足らずでした。
言い訳になりますが性犯罪についてのしっかりとした統計がないのです。
沖縄の米兵による強制わいせつ事件は、今回のものと、2005年の7月のもの、それから10年遡ってもう1件と、10年間に3件が大きく報道されました。
それ以外にも犯罪件数があるのかどうかは不明です。
一方沖縄と神戸で発生した性犯罪件数は米兵とは関係ない数字です。
というわけで検証に耐えられる資料ではないのですが、単純に割り算してみます。
強制わいせつ事件の発生率は1万人1年あたり

 

在沖縄米兵0.3

沖縄県民0.5

神戸市民1.0

 

という値になります。
米兵より神戸人の方が三倍以上危険ということになりますがきっと何かの間違いだと思います。

 

(2008年2月27日)

神戸元町ダイアリー2007年(6)椿三十郎リメイク<main>神戸元町ダイアリー2008年(2)姫路菓子博


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