神戸元町ダイアリー2007年(4)

芦屋市の路上喫煙禁止条例が施行されて1ヶ月になりました。
駅の改札を出るや否やそわそわとタバコに火をつける人を見かけなくなりましたし、駅周辺の道端で吸殻を見かけることもなくなりました。
芦屋駅を一度体験してしまうと、他の駅が薄汚れているように感じてしまうから不思議です。
不動産の場合、最寄駅の雰囲気がこれだけ違うと物件のイメージも大きく影響されるのではないでしょうか。
マンションのグレードを上げるために不動産関係業者は駅周辺の禁煙運動を強力に推し進めた方がいいと思います。

 

(2007年7月2日)

2007年6月30日の講演会で久間防衛大臣が「原爆はしようがなかった」と発言したとの報道がなされた。
実際の発言内容は、原爆で長崎の人は悲惨な目にあったがソビエト情勢も考えればアメリカのやり方もある程度理解できる、という文脈だった。
これに対して各方面からの批判が集中、久間大臣は辞任に追い込まれた。 


全く不勉強でした。
防衛相の発言です。
アメリカの属国日本は「原爆投下は正当だった」とするアメリカの見解を受け入れているものとばかり思っていました。
間違いでした。
今の報道を見ると全国民が「原爆投下は絶対的に悪である」という認識で一致しているようです。
全く正しい認識だと思います。
この勢いで来年の歴史教科書には「アメリカの原爆投下はナチスドイツのホロコーストと並ぶ第二次大戦下二大虐殺事件である」と明記して欲しいものです。

 

(2007年7月4日)

新聞のテレビ欄を見ると昼のワイドショーがかなり硬派な話題を扱うようになってきています。
かねてから昼間在宅率が高かった階層の知的水準が上がったと考えるよりも、知的水準の高い階層の昼間在宅率が高くなったと解釈するべきなのでしょう。

 

(2007年7月6日)

「ロストロポーヴィチ〜人生の祭典」という映画を見てきました。
偉大なチェリスト、ロストロポーヴィチの映画です。
タイトルだけ見れば彼の半生を描いたドキュメンタリーのようですが、実際には映画の半分は妻のガリーナさんのインタヴューに割かれ、ロストロポーヴィチの演奏はリハーサルシーンが断片的に取り上げられるだけでした。
アレクサンドル・ソクーロフは「エルミタージュ幻想」や「太陽」といった個性的な作品で知られる監督です。
この映画はドキュメンタリーなので映像に凝るわけにもいかず、肝心のインタヴューもさほど興味深くもなく、どこが面白いかさっぱり分からない映画になってしまってました。
結局、音楽家は音楽で語れということでしょうか。

 

(2007年7月13日)

2007年6月1日に農林水産大臣として安倍内閣に抜擢された赤城議員であったが、大臣就任早々数々の不正経理問題が発覚した。
議員とカネの問題など珍しい話題ではなかったが、会見場に絆創膏姿で現れ、記者の質問を無愛想に拒絶する姿が繰り返しテレビで流され、妙な形で有名になってしまった。 


この間ニュースショーで赤城農水相の祖父赤城宗徳がどれだけ豪胆な政治家だったか紹介されていました。
コメンテーターが「それに比べると孫は器が小さい」としたり顔で語っていたのが印象的でした。
しかし祖父の世代といえば政治資金など完全に不透明だった時代です。
今は5万円単位の支出には領収書が必要とされます。
政治家に求められる資質が根本的に違っているわけです。
コメンテーターならば何が政治家の器を小さくさせているかを語るべきだったと思います。
私は政治家に限らず日本人も、日本という国そのものも、昔の方がよかったという説には全く組しません。
しかし唯一の例外があって、今のマスコミ。
ああ、昔のマスコミはよかった……。

 

(2007年7月18日)

焼肉が好きでよく食べに行くのですが、一つ提案があります。
焼肉のメニューってハラミとかカルビとかハチノスとか特殊な用語で分かりにくいですよね。
これを解剖学用語で説明を加えてもらえると分かりやすいです。
横隔膜とか肋間筋とか第二胃とか……。
かえって分かりにくいですか?

 

(200年7月20日)

常日頃から心に留めていた疑問がある日夢の中で解決する、よく耳にする話ですが実際には体験したことはありませんでした。
この間生まれて初めて経験しました。
疑問自体は大したものはありません。
「卍(まんじ)」と「ハーケンクロイツ」の違いです。
今までは「左上に横棒がある方が卍」とか「左上から右に進むのが卍」とか、あやふやな方法でしか覚えていませんでした。
うろ覚えもいいところです。
ところがある日、夢の中で自分が人に説明しているのです。
「アルファベットのSが入ってる方がハーケンクロイツだよ」って。
なるほど、感心して目が覚めました。
多分どこかで耳にしたか読むともなく読んだことがあったのでしょう。
それがふとした拍子に記憶の奥底から浮かび上がってきたのだと思います。
とても不思議な経験でした。

 

(2007年7月23日) 

今興味があるのは光文社古典新訳シリーズの「カラマーゾフの兄弟」全5巻です。
お盆休みに読むのに手ごろな分量かなと思っていたのですが、今日の新聞で気になる記事がありました。
最終巻に「父を殺したのは誰か」という訳者による解題が付いているらしいのです。
カラマーゾフの解説本は数あれど、この問題に言及した人はいません。
以前も書いた事がありますが、この問題に言及しない者を私は評論家とは一切認めません。
つまり少なくとも日本にはこれまで「カラマーゾフ」もしくは「ドストエフスキー」評論家は存在しなかった、という三段論法が成立しているわけです。
今回日本で初めてのドストエフスキー評論家が誕生した可能性があります。
というわけで予定を繰り上げてすぐにでも読んでみたくなりました。
ところが全5巻が揃っている本屋がないのです。
1巻がなかったり、4巻がなかったり……。
全5冊まとめて買うとボックスに入れてくれるので細切れで買うのはいやだし。
結局注文する事にしました。
届くのに10日くらいかかるそうです。
やっぱりお盆休みに読むことになりそうです。

 

(2007年7月25日) 

明後日は参議院議員選挙です。
せっかく全国的に盛り上がっているのに兵庫県は1人区。
自民1人民主1人で、事実上無風状態でブームから一人取り残された感じです。
そもそも参議院の地方区が人口に比例して割り振られているのが不条理だと思います。
地方区+比例区という選挙システムなら衆議院と基本的に同じです。
参院不要論が出てくるのも当然です。
参議院は各県1人ずつにするべきでしょう。
そうすれば地方分権も一気に進むと思います。

 

(2007年7月27日)

この間刑事事件の捜査に協力する機会がありました。
捜査のために作られる調書は半端な量ではありませんでした。
警察と検察の馴れ合いを断ち切るためには厳正な調書の作成が必要です。
しかし厳正な調書を作っていると警察の本来の業務が滞ってしまいます。
重大事件の捜査を進めるために軽微な窃盗や傷害は調書に上げないで済ませようと思ったとしても一方的に責められないと思うのです。
日本の警官の優秀な捜査能力を生かすためには、この書類作成を分業化すべきだと思います。
たとえば書類作成補助員のような役職の人を置き、被害届や調書の大枠ができたところで警官が対応するようにしてはどうでしょう。
補助員にとっては書類の作成が仕事ですからそれを面倒がらないはずです。
一方警官も本来の業務に専念できるわけです。
「空き交番0(ゼロ)」を公約に掲げている党もありましたが、それよりも作業の分業化の方が現実的でコストもかからないと思います。

 

(2007年7月31日)

警察官の書類仕事と言えば、時々警察官による個人情報の漏洩事件が報道されます。
自宅で仕事をしようとして書類を持ち帰ろうとして電車に忘れたとか、置き引きにあったとか、そういう事例です。
それ自体は決して許されませんが、考えてみれば彼らは自宅で仕事をしようと、つまり残業代もなしで仕事をしようとしていたわけです。
教師も同じです。
自宅で仕事をしようとして持ち帰った成績表が紛失してしまったという 事件(?)がよく報道されます。
こういう報道に接した時いつも、当事者の善意を無視しすぎではないかと思ってしまいます。
残業はするな、自宅でする時にも気を緩めるな、ではモチベーションは下がる一方でしょう。
「残業代はいくらでも出すから仕事は職場でしてくださいね」というのがごく普通の態度だと思います。

 

(2007年8月1日)

「アラビアンナイト〜文明のはざまに生まれた物語」(西尾哲夫著:岩波新書)という本を読みました。
以前「千夜一夜物語」を読んだ時にさまざまな疑問が浮かびました。
この長大な物語は一体どうやって生まれたのか? 
いろいろな訳文の特徴とは? 
アラビア語本文にはない「アラジン」や「アリババ」のエピソードは誰が付け加えたのか? 
この本はその疑問を取り上げてくれます。
そう、確かに疑問自体は扱ってくれます。
ところが何も答えてはくれません。
つまりそれだけ「アラビアンナイト」の研究が進んでいないということです。
今後アラブの人たちが「アラビアンナイト」に文学的価値を見出してくれればおそらく研究は飛躍的に進むのでしょう。
現時点では全てがもどかしい……、これがこの本の正直な感想です。

 

(2007年8月6日)

「カラマーゾフの兄弟」が届きました。
お盆休みを楽しめそうです。

 

(2007年8月8日)

というわけで「カラマーゾフの兄弟」を読みました。
読みやすい訳文を心がけたという亀山郁夫の言葉どおり、かなり流麗な日本語で綴られた「カラマーゾフ」になっています。
4部構成+エピソードという巻立てを生かした分冊もいい試みです。
ただ文章の流れが良すぎるために、フョードルの爆裂キャラクターの勢いが殺がれているような印象は否めません。
ドミートリーのおバカな彷徨や、終幕の検事と弁護士による長ったらしい弁論は、どちらもかなり読みやすいものとなっています。
冗長さが緩和されたわけではありませんが。
楽しみにしていた解説は力作でした。
肝心の「父を殺したのは誰か」に対する答えは旧来のものでしたが、十分読み応えがあります。
「カラマーゾフ」のスタンダードと言ってもいい訳だと思いました。

 

(2007年8月17日)

ゲーテの「ファウスト」を読んでいます。
そんなつもりは全くなかったのですが、「カラマーゾフの兄弟」の解説に「カラマーゾフ」をより深く理解するためには「ファウスト」を読め、と書いてあったので行きがかり上というか、仕方なくというか……。
しかしこれがまた妙ちくりんな話なのです。
第1部で愛する人を罪に落し死なせてしまったファウスト。
苦しみと悲しみに打ちひしがれるその姿を見て天使たちはその悩みをチチンプイプイと取り除いてやります。
俄然立ち直ったファウストは第2部の冒険に向かっていくのです。
このあっけらかんさには口もあんぐり、です。
テレビゲームにはまった子どもは命すらも簡単にリセットできると信じ込む、と批判する識者がいます。
「ファウスト」第2部冒頭などリセットもいいところです。
きっとゲーテはテレビゲームにはまってたのでしょう。

 

(2007年8月22日)

それにしても「ファウスト」は変な話です。
よくある名作解説などではこう紹介されているのではないでしょうか。
神と悪魔が賭けをする。
真面目一徹の学者ファウストを悪の道に引きずり込めたら悪魔の勝ち、ファウストが最後まで善の道を忘れなければ神の勝ち。
悪魔はファウストをいろいろな世界に引っ張りまわして悪の世界に誘惑しようとするが……。
ところが読んでみると全然違うのです。
ファウストは善など全くおこないません。
何かを行うたびに周りの者を破滅させ無残に死なせます。
恋人を牢死させ、息子を墜死させ、妻を悲嘆の底に叩き落し、帝王をその座から追い落とし、善良な老夫婦を焼き殺します。
そして自分の墓を堀る音を壮大な事業の槌音と聞き誤りながら死んでいくのです。
これを今まで私はゲーテの皮肉だろうと思って読んできました。
今回は、もしかしたらゲーテ(=物語中の神)の「善」の概念が普通と違うのではないかと思って読みました。
でもそうではありませんでした、やっぱりただの変てこりんな話でした。
延々と続く饒舌、そして善悪の概念の消失、話し初めと終わりで全く合わない辻褄。
これは何かの病気の症状だったと思うのですが……。

 

(2007年8月27日)

森鴎外訳の「ファウスト」が興味深いです。
優れた作家とは言えないゲーテのさほど面白くない作品を、文豪とは名ばかりで実績に乏しい森鴎外が訳すと俄然生き生きとした文学になります。
ベルクやウェーベルンと比べると退屈極まりないシェーンベルクのピアノ曲を、退屈なシューマンやショパンしか弾けないポリーニが弾くと突然生命感あふれる音楽に変身するのを思い出させます。
「退屈」×「退屈」=「刺激的」ということなのでしょうか。

 

(2007年8月30日)

医療事故が起きるとマスコミはこれまで医師の倫理を糾して終わりでしたが、最近は医師適正配置や保険制度など構造的な問題まで踏み込んでくれるようになってきました。
論調も「仁術の担い手である医師は金のことを言ってはいけない」という理想論から「よりより医療を行うためには医師の待遇を改善するべきだ」という現実論に変化してきたようです。
現実を論じる立場にあるマスコミが遅ればせながら現実を見始めたようです。
ところがこれが教育の世界だといまだに現実論はタブーのようです。
休憩時間も放課後も生徒指導に追われ、夜間は繁華街の見回り、休日はボランティアでクラブ活動の面倒。
ところが修学旅行の引率で夜ちょっと飲酒すると実名で報道され、生徒が犯罪を冒せば親に代わってテレビカメラの前で謝罪。
これでさらに免許更新制を導入しようと言うのですからあんまりです。
他に就職先のない落ちこぼれしか教師になるなと言っているのも同然です。
論壇の中心たる団塊の世代がそろそろ医者のやっかいになる時代になってきました。
そうして医療の現場を垣間見ることが多くなったために彼らの論調が変わってきたのだと、私は想像しています。
一方彼らが教育の現場にお世話になることは、今後もありません。
理想論による教師バッシングはまだまだ続くでしょう。
教師の皆さん、心から同情します。

 

(2007年8月31日)

神戸元町ダイアリー2007年(3)赤ちゃんポスト<main>神戸元町ダイアリー2007年(5)評論家立花隆


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