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夢見る映画〜20世紀の100本の14本目

14本目は1957年、ディック・パウエル監督の「眼下の敵」です。

 

 

第二次大戦中の大西洋を舞台に、駆逐艦と潜水艦の戦いを描いた男くさい映画です。

 

1957年といえば、終戦後まだ13年。

戦争の記憶がまだ生々しく残っている時期です。

興味深いのはこの「生々しい」時期に作られたにも関わらず、必ずしも「アメリカ万歳」ではないところです。

 

米軍駆逐艦艦長はかつて新婚の妻を独軍潜水艦「Uボート」の攻撃によって失っています。

「それでUボート狩りに情熱を燃やしているのか?」と訊かれた彼はこう答えます。

「これは私の戦争ではない」

 

一方の独軍潜水艦館長も大のナチス嫌い、ヒトラー嫌い。

さらに、機械化されて人間味が失われた近代戦争も嫌いな偏屈オヤジです。

 

この二人の設定が心憎いです。

(2019年1月16日)

 

この渋い二人が海面を挟んで息詰まる知的バトルを繰り広げる、……と言いたいところですが、いろいろもどかしいところもあります。

 

まず、兵器や作戦の細かな機微がよく分かりません。

たとえば、レーダーとソナーの使い分け、それぞれの精度、

「造泡カプセル」と呼ばれる音響煙幕がどの程度有効なのか、

潜水艦が魚雷を発射するために必要な条件、などなど。

 

せっかく両方の艦にそれぞれ新米兵士が乗り込んでいるのですから、新米兵に上官に質問させて欲しかったです。

「今発射したのは何ですか?」

「ばかやろう、造泡カプセルも知らないのか、あれはな……」

という風に。

 

閉鎖空間に閉じ込められて精神のバランスを失いかけた乗員のために、潜水艦艦長は軍歌のレコードをかけます。

当然駆逐艦に見つかってしまいます。

ところがこのために圧倒的に不利になるわけでもなく、逆に士気を高めて英雄的な反撃に出るわけでもなく。

せっかくのエピソードなのに作劇上、あんまり有効に機能しませんでした。

 

「艦長! 音楽なんかかけたら敵に見つかってしまいます!」

「どっちにしろじり貧だ。どうせなら好きなだけ爆雷を落とさせてやろう。実は敵の爆雷攻撃のパターンで気が付いたことがあってな」

という会話でもあればよかったのですが。

(2019年1月18日)

 

しかし、やっぱり一番引っかかるのは「5分間の猶予」です。

 

魚雷を食らってしまった駆逐艦に対して潜水艦艦長は「退艦のために5分の猶予を与える」と言います。

駆逐艦艦長はそれに対して「猶予をくれて感謝する」と返信して、油断させて、その隙に反撃を開始するのです。

 

ちょっと、いや、ものすごく卑怯です。

それまでのハラハラドキドキを返せ、と言いたくなります。

 

とまあ、名作と言われている割に突っ込みどころの多い映画ですが、やはり「潜水艦もの」の嚆矢(こうし)としてランクインさせるべき作品ではあるのでしょう。

 

ところで、軍事オタク、兵器マニアの皆さんのこの作品に対する評価をネットで調べてみると面白いです。

時代考証がしっかりしているという人もいれば、無茶苦茶だという人もいます。

両艦長の知的攻防を楽しんでいる人もいれば、噴飯物の作戦だとこき下ろしている人もいます。

 

どうせならディスクの裏音声で軍事オタクたちの座談会を収録すればいいと思います。

「この部分のこの行動はおかしい!」

「いやこの艦長はこう考えて、あえてその行動を取ったんだ」

などなど。

最初はなごやかに始まっても、きっと最後には取っ組み合いの喧嘩になると思います。

でもその方が本篇よりも面白いかもしれません。

(2019年1月21日)

 


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