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「罪と罰」を読む(第6部第8章)

(186)

 

老婆の十字架が、現実とラスコーリニコフの記憶とで食い違っています。

現実にかけていたのが糸杉と銅、彼の記憶では銀と聖像。

そして、糸杉と銅、というのはソーニャが持っている組み合わせと同じです。

 

無理にこじつけられないことはありません。

 

ソーニャが彼に見せた十字架は糸杉と銅で、老婆がかけていたものと同じ組み合わせだった。

ラスコーリニコフはその偶然の一致を無意識に封じ込めようとして自分の記憶の方を書き換えた。

 

フロイトもびっくりの「記憶の改竄」です。

 

ですがこの仮説にはやっぱり無理があります。

第3巻157ページでソーニャがラスコーリニコフに十字架を差し出した時に、

 

十字架を受け取ろうとしてラスコーリニコフはぎょっとしてあわてて手を引っ込めた

 

みたいな描写があればよかったのですが、動揺らしきものを読み取るのは難しいです。

ここはドストエフスキーの勘違いと解釈するのが妥当だと思います。

 


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