間違いだらけの病院選び〜「お尻の病気」篇

間違いらだけの病院選び〜「お尻の病気」篇

 〜お尻の病気は電話では診断できません〜

ネット相談コーナーや口コミサイトが大流行です。

私も外食する時、口コミサイトを参考にして店を決めることがあります。
人気店だと大勢のレビュアーがたくさんの感想を書き込んでいますが、すべての人の評価が一致することはありません。
ある人が最高だと評価した店をある人は最悪と切り捨てる……、口コミサイトではよくあることです。
そういう時、私たちはレビュー数の多い人の方を信じたくなります。

お目当てのフランス料理店をチェックしてみると、Aさんは五つ星をつけているのにBさんの採点は星一つです。
よく見ると、Aさんはラーメン屋ばかり20件ほどレビューしているのに対してBさんは全国のフランス料理を何百軒も食べ歩いている。
フランス料理よりもラーメンの方が好きな私でもBさんを信じてしまいます。

しかしこれは飲食店だから成り立つ話です。
第一に、食べ歩いた店の数と評価の真っ当さにはある程度の相関が期待できます。
第二に、仮にその評価が間違っていても命に係わることはありません。

病院に関してはどちらも当てはまりません。
(2015年6月8日)

たとえばよくネット質問室でお尻のトラブルについて相談している方がおられます。
そしてそれに丁寧に答えてくれる親切な人も少なからずいます。

しかしお尻の病気と言っても原因も症状も様々です。
病名が同じでも程度によって治療法は全く異なります。
しかも一生のうちでそう何度もかかるものではありません。
つまりお尻の病気には無数の局面があるにも関わらず、そのうちのほんの一つか二つの事例しか経験したことがない人がアドバイスしているわけです。
「今度神戸に行くのでお勧めの中華料理店を教えて」に対する「3年前に遊びに行った時食べた南京町の店が美味しかったよ」という返事と同じようなものです。
回答者は真面目なのでしょうが、その助言は全く役に立たず、しばしば落とし穴となります。

中には経験豊富な助言者もおられます。
何年もお尻の病気で苦しんでいる人です。
しかし何年も患っているということは治っていないということです。
治療法のアドバイスを求める相手としてはふさわしくないかもしれません。

最近は医師が直接答える相談コーナーというのもあります。
コーナーを担当している医師の勇気には賞賛を送りたいと思います。
しかし勇気で病気の診断はできません。
腹痛の診察には腹部の触診が、咳の診断には胸の聴診が、お尻の病気の治療には肛門診が不可欠です。
(2015年6月10日)

クリニックにはよく病気の相談の電話がかかってきます。
先日も書きましたが私は電話口での診断は一切おこないませんので、いろいろ症状を説明されても返事はただ一つです。

「どうぞ来てください」

ただ、電話でのやり取りの時点で、頭の中である程度の仮想診断はおこなっています。

さあ、その方がクリニックに来られました。
診察室でさらに詳しく問診を取って、肛門診をおこなって診断します。
電話相談の時点で私が予想した診断の正解率はどの位でしょうか?

せいぜい8割です。
問診によってそれが9割になり、肛門診によって確定診断にいたります。
専門でない医師の電話相談だと正解率はせいぜい7割程度ではないでしょうか。
さらに電話よりも情報量が乏しい文面だけの相談であれば6割を大きく割り込むと思います。

5割そこそこの正解率と言うと、もはや経済評論家の景気予測レベルです。
元町商店街の占い師の方がはるかに信用できます。

健康問題で困っている方に私が助言できるのはたった一つ、

「病院に行きましょう」

これだけです。
(2015年6月12日)

〜電話で相談できること、できないこと〜

返事に困る電話相談が他にもあります。

「痔の日帰り手術をしていますか?」

という質問です。
実は「日帰り手術」という名前の手術があるわけではありません。
前回も書きましたが痔にはいろいろな種類があって、それぞれに対してそれぞれの治療法があります。
そのうちの一部、入院しないでおこなえる処置や小手術のことを「日帰り手術」と呼びます。
ですからいろいろな病気に対していろいろな「日帰り手術」があるわけです。

一つの病院でも設備の関係で、できる「日帰り手術」とできない「日帰り手術」が当然あります。
また技術的には可能だけれども医師の信念に基づいて日帰りでおこなわない場合もあります。
大きな専門病院でもすべての「日帰り手術」ができるわけではないのです。

ですから「日帰り手術をしていますか?」という質問にはこう質問を返すことになります。

「どこかの病院でその手術をするように言われたのですか?」

もし相談者がまだどの病院にもかかっていないのであれば、その人が気にすべきなのは「日帰り手術ができるかどうか」ではありません。
とりあえず病院にかかってまず診断してもらうことです。
その結果、日帰り手術どころか全く治療を必要としない場合もあります。
逆に、緊急で直腸切除術が必要になる場合もあります。

また繰り返しになりますが、ある病院では日帰りでおこなう手術を、別の病院では安全性や効果をもっと深く考慮した上で「入院手術」としておこなう場合もあります。

大切なのは「日帰り手術ができるかどうかで肛門科を選ばない」ということです。
(2015年6月15日)

似たような意味で次の質問に答えるのも結構難しいです。

「大腸の検査をしていますか?」

当院では大腸内視鏡検査はおこなっておりません。
したがって「大腸の検査をしていますか?」と尋ねれられれば「内視鏡検査はおこなっていません」とお答えするしかありません。

しかし大腸内視鏡が必要となる場合にもさまざまな状況があります。

自覚症状はないけれど検診の便検査で引っかかった場合、内視鏡検査は大至急必要というわけではありません。
この場合、内視鏡が上手という評判の個人病院、たいていそういう病院は予約が数か月待ちのことが多いですが、そこを予約するのがベストだと思います。

最近下痢気味で時々便に血が混じる、という場合はどうでしょうか。
すぐにでも救急外来を受診した方がいい場合もあればしばらく整腸剤で様子を見てもいい場合があります。
その判断のためにいきなり大病院を受診するのは非効率的です。
直接大病院にかかっても、ほとんどの場合、検査は何日かあとになります。
まず当院を受診しても手間は変わりません。
当院で診察して内視鏡検査が必要であれば大病院を紹介します。
地域医療連携システムなるものがあるので、個人的に大病院を受診して内視鏡を手配してもらうよりは、スピーディーに予約できると思います。

大腸の検査について問い合わせる時には、ぜひ症状も併せてご相談ください。
 (2015年6月17日)

もう一つ答えに困る質問があります。

「病院に行きたいがどの病院に行けばいいのか?」

たいていは「うち(松本胃腸科クリニック)に来てください」で済むのですが、問題は遠方の人の場合です。
お尻の病気はほとんどの場合一定期間の通院が必要ですから、基本的に「一番近い病院」が「一番いい病院」です。
近くに「肛門科」の病院がない場合はどうすればいいのでしょうか?

「肛門科」は「消化器外科」の1ジャンルです。
ですからちょっと前までは「外科」に行けば普通に肛門の診察もしてもらえました。

ところが最近は必ずしもそうではありません。
専門の細分化のせいで、すべての外科医が肛門疾患の診察をおこなえるとは限らない時代になってきました。
これには私も困っています。
当院に通院中の方が転居する時、どこに紹介すればいいのかよく分からないのです。
結局病院に電話をして「おたくは肛門疾患を診てくれるのか」と尋ねることになります。

ですから遠方の方の「どの病院に行けばいいのか」という質問には、本当に情けないのですが、こう答えるしかありません。

「申し訳ありませんが、私にも分からないのです……」
(2015年6月19日)
 

間違いだらけの病院選び〜「病院でのコミュニケーション術」篇(下)

(12)

他の病院でもらった薬について相談を受けることがあります。
「山のように薬をもらっているけれど本当にどれも必要なんでしょうか?」という風に。

検査データなどから「これは必要ですよ」と言ってあげられる薬もあります。
一方医師の匙加減一つという薬もあります。
同じ医師ですから処方に至った胸中のプロセスはよく分かります。
医師のバックボーンや考え方、その医師がその患者をどういう風に見ているか、将来的にどうしたいのか、そこまで透けて見えることもあります。
処方を見ればそこまで分かる、つまり逆に言うとそこまでの関係性をもって医師は薬を出しているわけです。
こちらからアドバイスできるのは「主治医に聞いてみれば?」ということだけです。

ところが多くの方がこう言います。
「怖くて聞けない」

まあ、主治医に聞けないから私に聞いているわけで、その答え自体は驚くべきことではありません。
驚くのは、そう訴える人の多さ、です。(2015年1月21日)

(13)

「怖くて聞きたいことも聞けない、そんな医師を主治医にするなよ」と突っ込むのは簡単です。

勤務医時代を思い出します。
ナースステーションに入ると何人かの看護師がカルテを挟んで悩んでいます。
理由を聞くと「発熱時の指示がない」と言うのです。

医師が患者を入院させる時には入院指示を出します。
どの検査を何時にして、何時から何時間かけてどの点滴をして、食事は何カロリーのどの硬さで、検査に行く時は車椅子で……、そういう細かな指示の数々です。
その中には「何度以上の発熱の時にはどの薬を使って」などの異常時の指示も含まれるのですが、どうやら先ほど入院してきた患者のカルテに「発熱時の指示」が記入されていなかったようなのです。
指示すべき項目があまりにも多いのでこういう指示漏れは珍しくはありません。
それ自体は問題ではありません。

問題は主治医が怖い場合です。(2015年1月23日)

(14)

電話機を前に看護師がもじもじしている場合、理由は一つです。
「こんなことを質問して怒られたらどうしよう?」

どんな医者だって受け持ち患者の容体の重大な変化を知らされれば怒ることなく普通に答えます。
どんな医者だってくだらない質問ばかりされれば怒鳴りたくもなります。
しかし重大な連絡とくだらない連絡の境目が医師によって大きく異なるのも事実です。

こういう時に「じゃあ僕が聞いてあげるよ」と言ってくれる若手医師がいると看護師から重宝されるのですが、それは今は置いておきましょう。

現実問題として「よく怒鳴る医者」がいるということです。
考えてみてください。
看護師は一般人よりも医療に詳しいです。
普段から医師と協力し合って治療に当たっています。
一般人よりもはるかに「医師に質問しやすい」立場のはずです。
ところがその看護師たちをしても「聞きたいことが聞けない」医師がいるのです。

そういう現実を踏まえると、「聞きたいことを聞けないのは患者が悪い」などというのが全くの空論であることが分かります。
(2015年1月26日)

(15)

ちょっと質問をしただけですぐ不機嫌になる、場合によっては大声で怒鳴ったりする「怖い医師」の対処法は一つしかありません。
主治医を替えることです。

ただ、ここでよく考えないといけないのは医師が不機嫌になる理由です。

「血圧の薬を飲まなくてはならない」と医者に言われたとします。
「薬は飲みたくないんです、何か他に方法はありませんか?」と訊ねるのは何も問題ありません。
ところが「週刊誌に血圧の薬は飲むなと書いてあったから薬は要りません」と答えたとしたらどうでしょう。
それはつまり「私はあなたよりも週刊誌の方を信じます」ということです。
面と向かって「あんたなんか信用していない」と言ったも同然なのです。
こんなことを言われたら医師でなくても怒ります。

頭痛で医師の診察を受けるとします。
「インターネットで調べたらいろいろ怖い病気が並んでいて心配になった」と言うのは大丈夫です。
ところが「この症状だとくも膜下出血のようだからすぐCTを撮ってくれ」と要求する患者がいたらどうでしょう。
大抵の医者は「どの検査が必要か考えるのは自分だ」と不機嫌になるでしょう、医師の存在理由を根本から否定しているわけですから。

医師が怖い場合、わけがあって怖いこともあるのです。(2015年1月28日)

(16)

理由があって怖い医者と、理由なく理不尽に怖い医者がいます。
理不尽に怖い医者を見分ける方法はあるでしょうか?

理由があって医師が不機嫌になっている場合、主治医を替えても次の医師も不機嫌になる可能性が大きいです。
病院を替えただけ手間が増えることになります。
検査をやり直すこともありますから体力的経済的負担も余分にかかってきます。
簡単な見分け方があるといいのですが。

実は、あります。

紹介状を頼むのです。
「なかなかよくならないから一度他の病院でも診てもらいたい」と正直に言ってもいいし、それが言いにくければ「いろいろあって通うのが不便になった」という言い方がお薦めです。

そして、それで怒るようならそれは理不尽に怖い医者です。(2015年1月30日)

間違いだらけの病院選び〜「病院でのコミュニケーション術」篇(上)

コープカルチャーの講座が終わりました。

今回は初めての方を対象にした第1回目講座でした。
「大病院の外来担当表の見方」や「ぽっくり往くのも楽じゃない」などのお話をしましたが、それよりも皆様の興味を引いたのは「医者に自分の気持ちを伝える方法」だったようです。
講座のあとの質問コーナーでも多くの方が「かかりつけ医とのコミュニケーション」に対する不満を訴えておられました。

どんな医者にでも通用する方法があればいいのですが、医者の性格も診察のシステムも病院によってさまざまです。
医者としての立場、それから最近自分も患者の立場になることが多くなってきたので、患者としての立場から「自分の思ったことをうまく伝える方法」を考えてみたいと思います。

「病院でのコミュニケーション術」、不定期掲載になると思われますがお見逃しなく。(2014年10月31日)

間違いだらけの病院選び〜「病院でのコミュニケーション術」篇

(1)

どんな名医でもヤブ医者になる時があります。

たとえば夜中まで大きな手術をして、そのまま当直で寝ずに救急診療を続けているところに救急車がやってきたとします。
重症患者優先のルールに従って搬送患者を先に診察室に運びいれます。
待合室で「順番を飛ばされた!」と怒鳴っている患者もいますが、クレームの相手をする時間もないので医師としては先にするべきことを先におこなうしかありません。
ようやく処置が終わってクレームをつけていた患者の順番がきました。
それが朝の5時過ぎ。
で、聞いてみると「今からゴルフだけど何となく身体がだるいから栄養剤の注射を打て」とのお言葉。

こういう時に名医であり続けるのは難しいです。
「こういう患者を叱りつける医師こそが名医だ」と言う人がいるかもしれませんが、診察をしてこその名医です。
もし名医の診察を受けたいと思えば、私たちは名医が名医でいられる状況を選ばなくてはなりません。
(2014年11月26日)


(2)

はい、結論です。
空いている時間に受診しましょう。

「馬鹿なことを言うな! 名医の外来はいつも大混雑で空いている時間などない!」
という反論が聞こえてきそうです。
そのとおりです。

ここで私たちは一度「名医とは何か」という問題に立ちかえらなくてはなりません。
予約がなかなか取れないのが名医なのか、マスコミに「神の手」と言われているのが名医なのか。

あなたにとっての「名医」とは何でしょうか?
「病院でのコミュニケーション術」というタイトルに引かれてきた皆さんにとっての「名医」とは、まずじっくりと話を聞いてくれる医者のことではないでしょうか?

「じっくり話を聞いてくれても治療技術が劣っていれば役に立たない」と思われるかもしれません。
逆に考えてみましょう。
「じっくり話を聞かないで治療できるほどの名医がいるだろうか?」

いません。占い師のように「黙って座ればぴたりと当たる」、そんな医者はいないのです。
技術的な「名医」というのはいます。
が、それと診断の「名医」とは全然別です。
格闘技と格闘ゲームくらい違います。

今、皆さんが必要としているのは、診察の「名医」です。
手術が抜群に上手だという評判に引かれて患者さんが行列をなしている外来もあります。
しかし皆さんが並ぶべきなのはその行列ではありません。
(2014年11月28日)

(3)

さて、取りにくい予約を頑張って取って、いざ診断の「名医」の診察を受けることになりました。
外来は大混雑です。
あなたも受付してからもう2時間近く待っています。
周りの人たちも殺気立っています。
こういう時に果たして名医ならではの診察を受けることができるでしょうか?

結論から言うと、非常に難しいです。
名医でも、いや逆に名医だからこそ問診にはかなりゆったりとした時間が必要です。
ところが今そんな状況ではありません。
空気が読める人であれば気持ちが焦るでしょうし、空気が読めない「名医」というのも微妙な感じです。

それでは大混雑の外来で「名医」らしい診察を効率よく受けるためにはどうすればいいのでしょうか?
(2014年12月1日)

(4)

話は変わるのですが、最近、症状をインターネットで調べて自分なりに診断をつけて来られる患者さんが増えてきました。
当たっている場合もありますし、はずれている場合もあります。
それから当たってないことはないけれどもニュアンスが違うと言うか、ピントがずれていると言うか、そういう場合も多くあります。
それについては皆さんもご自分の専門領域について専門外の人が語るのを聞く時によく感じられるのではないでしょうか。
「うーん、ちょっとずれている」というもどかしい感じ。

つまり診断をつける時、医者は皆さんがインターネットで調べるのとは違う道筋で考えているということです。
咳の原因の多くは風邪だし、下痢の原因の多くはウイルス性腸炎と呼ぶと大げさですが、いわゆる胃腸カゼだし、お尻からの出血の原因の多くは痔です。
そして医者がこういう症状に接した時に心がけるのは、正しい診断名にいたることではなく、第一に症状を取り除くこと、第二に重大な病気を見逃さないことです。

あなたが発熱と咳があるので病院に行ったとします。
診察を受けて最後に「これは風邪ですか?」と質問すると、医者はちょっと変な反応を見せると思います。
医者はそれが風邪かどうかさほど重要な問題と考えていないからです。
 (2014年12月3日)

(5)

最近「ヤブ医者を見分ける方法」なるものがよく取り上げられますが、その中に「風邪に抗生物質を出す」という項目があります。
風邪はウイルス疾患だから抗生物質は効かない。効かない薬を出すのはヤブ医者だ、という論法です。
理屈自体はまったく正しいです。
ただし、その正しさは「教科書的に」という意味ですし、あるいは「インターネット上にまことしやかに流れている情報的に」と言い換えてもいいかもしれません。
医者は、あなたが風邪かどうか確定診断をつけたい、そんなことを思って診察しているわけではありません。
そういう立場から見ると「風邪に抗生剤を出すのはヤブ医者だ」という文章を見ると、ちょっとずれてるなあと思うわけです。

インターネット情報で自己診断して来られた患者さんによく訊ねられるのは「これは癌でしょうか?」という質問です。
下痢と下血という症状から病名を検索すると「大腸癌」という病名が間違いなくヒットしますから、当然の心配であり当然の質問です。
で、患者さん本人も分かって質問しているとは思うのですが、検査をしないと癌であるかどうかは分かりません。
分からないけれども大抵の場合ピンと来ます。
大至急大腸の精密検査をした方がいいのか、それともしばらく痔の治療を続けて様子を見てもいいのか。
その「ピンと来る」感じを研ぎ澄ませるために医者は修練を続けているのです。
(2014年12月5日)

(6)

咳の原因は大抵風邪だ、と書きました。
そして実際の診察の場で何が最初におこなわれるかと言うと、「とりあえず風邪と考えて話を進めても大丈夫そうだ」ということを確認しているわけです。
それは名医でも同じです。
いきなり難病奇病を疑ってかかったりはしません。
最初はまず、ありふれた病気と考えていいかどうかの確認から入ります。

ここまで長々と寄り道をしましたが、結論はこれです。
「問診の最初の10分は確認作業」
名医の診察を効率よく受けるコツはこのへんにありそうです。
(2014年12月8日)

(7)

ここでまた話が脱線するのですが医者の間では「後医は名医」という言葉があります。

つまり診察においてはちょっとでもあとに診た医者が有利なのです。
「ちょっと」というのがどのくらいレベルかと言うと、一日は当たり前、数時間でも十分、極端に言えば10分でもあとに診た方が有利です。
わずか10分間でもその間の経過は重要な手掛かりになり得ます。
もし24時間あれば、痛みの場所、種類、持続時間、好発時間帯、食事や便通、体勢、動作との関連などなど、得られる情報は莫大です。
中でも一番役に立つのは「どの薬が効いてどの薬が効かなかったか」ということです。
「先医」が処方した薬を見ると医者は大体分かります、「先医」がどういう道筋でその処方に至ったか。
いくつかの選択肢がある中で「先医」がどの病気の可能性が最も高いと考えたかが分かるわけです。
そしてその薬が効かなかったならば選択肢の幅はかなり狭まります。

言い換えると薬が効かなかった時点で正しい診断に相当近づいているのです。

時々「あの病院はヤブだ」という話を耳にしますが、よくよく聞いてみるとほとんどがこれです。
「病院の薬が効かなかったので次の日に違う病院に行った。別の薬をもらってすっきりよくなった。だから前の病院はヤブだ」
それはちょっと違うのです。
次の日に同じ病院にもう一度かかったとします。
薬が全然効かなかったと聞けば当然医者は別の薬を処方します。
そうしたら別の病院に行ったのと同じようにすっきりよくなっていたと思うのです。
(2014年12月10日)

(8)

それから病気は大抵の場合、最初は漠然とした軽い症状から始まって、徐々に典型的な症状に変化していくものです。

朝から何となくだるかったのが昼になって咳が出始めて夜には熱が出た。
そこで「ああ、風邪だったのか」と分かる。
皆さんも日常的によく経験されることだと思います。

急性虫垂炎、いわゆる盲腸もしばしば胃の痛みから始まります。
胃痛以外の症状がない時点で病院にかかれば胃薬で様子を見ようということになります。
ところが二三日するうちに痛みが少しずつ右下に移動して痛み方も強くなってきたので違う病院にかかった。
そうしたら今度は何と!「盲腸」と診断された。
あなたは当然「前の病院は盲腸を見逃した」と思うでしょう。

それは違うのです。
二日前の段階ではどの病院に行っても「盲腸」とは診断されなかったと思うのです。
普通の医者であればこういう場合必ず説明します。
盲腸はしばしば胃痛で始まって、そのタイミングで診断をつけるのは難しい。
その段階で診たらおそらく自分でも分からなかったろう、と。

「後医」がその説明を怠ると患者は「先医」がヤブ医者だと思いこみます。
まれに「どうしてこんなのが診断できなかったのかなあ」などと患者に聞こえるように言う非常識な医者もいます。

「先医」がヤブ医者呼ばわりされる時、実は「先医」よりむしろ「後医」に問題がある場合が多いから要注意です。
(2014年12月12日)

(9)

先医が得た情報を最大限に生かし、名医の名医たるすぐれた診断能力を最大限に発揮させる方法はあるでしょうか。
あります。

「紹介状を書いてもらう」

あなたが名医の診断を必要としているのはあなたの症状が「ありふれた病気」ではないからです。
しかし「ありふれた病気」を否定するのには時間と手間がかかります。
先医がその手順をきちんと踏んでいれば後医の負担はぐっと軽減されます。
紹介状に「○○という疾患を疑って検査をしたが違っていた」「××という疾患を想定して治療を開始したが改善しなかった」と書いてあれば診断の選択肢は大幅に狭まります。
問診の最初の10分間が必要でなくなるのです。

問診が短くて済む以外にもう一つ大きなメリットがあります。
説明が倍になるのです。(2014年12月15日)


(10)

知人から相談されることがあります。
「病院でこう言われたんだけれど、どういう意味なんだろう?」
これに対して「分からなかったのならその場で訊ねればよかったのに」と言うのは簡単です。
しかしそれは果たして現実的でしょうか。

先日携帯電話の販売店で料金プランの説明を受けました。
その場では何となく分かったような気になったものの、店を一歩出ると頭の中が真っ白になっている自分がいました。
店員さんは道筋に乗って説明して、こちらもその流れに乗っている間は理解できているけれど、いったんその道筋を取り払われてしまうとその説明を頭の中で再現することができなくなる……という現象が発生しているのではないかと推測しているのですが、診察室でもまったく同じ現象が起きているのでしょう。
別に医者が怖いから、とか理解力が低いと思われるのが癪だから、とかそんな理由で質問を遠慮しているのではないと思うのです。
その時には分かったつもりになっているから質問しないのです。
そして分からないのであればもう一度説明を受けるのが一番いいのですが、それこそ現実的ではありません。

こういう時こそ先医の出番です。
紹介状を持って診察を受けると後日先医のもとには返事が届けられます。
その返事を読んで先医はあなたにもう一度(あるいはもっと)同じことを説明することができるのです。
説明時間が倍になると言ってもいいし、二人の医者が説明してくれると言ってもいい。
専門医の説明を聞いてから新たに浮かんだ質問をぶつけることもできます。


紹介状はもちろん大切なものです。
しかしあなたにとってもっとも価値があるのは実は「紹介状の返事」なのです。
(2014年12月17日)

(11)

医者の仲間内での笑えない笑い話があります。

高血圧の患者さんに降圧剤の必要性を訴えるけれど納得してくれない。
その患者さんはどう説明しても薬はいやだと言い張るのです。
最後には医者も根負けして「そこまで言うのなら薬なしでもうちょっと様子を見ましょう」と言ってしまう。
その患者さんがある時脳卒中を起こして別の病院に運ばれました。
そこで担当医に「どうしてこんな高血圧を放置していたのか」と聞かれた患者が言うには
「前の医者が薬を飲まずに様子を見ようと言った」

現実によくある話だけに本当に笑えません。
「塩分の摂り過ぎは喫煙以上に危険」という言葉を「喫煙は大して危険じゃない」と解釈したり、「入院できなければインシュリン治療を始めるのは難しい」という説明を「インシュリンは必要ない」と受け取ったり、人間とは聞きたい言葉だけ聞くようにできているものだとつくづく思います。
そうした人間の本質に基づくエラーを防ぐためにも紹介状という仕組みは非常に有効です。

……と紹介状の有用性についてここまで長々と書いてきたのですが、実は皆さんもそんなことは十分に分かっていると思うのです。
皆さんのお悩みはもっと手前の、もっと初歩的なところにあるんですよね。つまり、

紹介状を頼めるくらいなら苦労はしない。(2014年12月19日)

間違いだらけの病院選び〜「便秘の人」篇

間違いだらけの病院選び〜「便秘の人」篇

(1)

便秘でお困りの方は多いです。
何が一番困るかといえば、便秘で悩んでいる人をまともに相手にしてくれる病院がない事ではないでしょうか?

大病院にかかっても、検査をして異常がなければ、「病気じゃないから気にするな」で終わり。
診療所にかかっても薬を出されて終わり。
薬が効かないと訴えればもっと強い薬を出されて終わり。
それでも効かなければさらに強い薬をたくさん出されて終わり。

得体の知れない民間療法や、値段と宣伝文句だけは立派な市販薬に頼りたくなる気持ちはよく分かります。

得体の知れない民間療法といえば、いまだに「腸洗浄」についての問い合わせがあります。
「腸洗浄」がいかに危険で、しかも効果がないかについてはずっと以前にこの欄で書きました。

いかがわしい民間療法の代表の「腸洗浄」ですが、洗浄機を導入した施設は元が取れるまではやめられないのでしょう。
もうしばらくは派手な宣伝が続くでしょうが、惑わされませんように。(2012年3月14日)

(2)

便秘治療で難しいのは人によって原因も症状もさまざまで、そして薬に対する反応もまちまちな点です。

そんなの便秘に限らずどの病気でもそうじゃないのか? と反論したくなるかもしれません。
その通りです。
便秘と他の病気とで決定的に違うところがあります。
それは「便秘についての一般常識を語っているのは便秘の専門家ではない」というところです。

TVや新聞で便秘について解説しているのはどこかの大学の先生です。
しかし考えてみてください。便秘で困っている人が大学病院に行くでしょうか?
逆に大学病院が便秘の人をまともに相手してくれるでしょうか?
大学の先生は便秘の患者を診察した事もなければ治療をした事もないのです。
医者の言う事が頼りにならない。でも雑誌などに氾濫するのは便秘の怖さをアピールする広告ばかりです。

一体誰の言う事に耳を傾ければいいのでしょうか?(2012年3月16日)

(3)

「便秘」でお困りの方に、まず耳を傾けて欲しいのは、自分の身体からのメッセージです。

便通は何日ごとにあるのか。
その時の便はどんな状態か。
お腹が張ってくるのは何日目か。
今までどんな薬を試してきたのか、その効果はどうだったのか。

そして最も大切なのは、「あなたは便秘の何に困っているのか?」という事です。

よくあるのがこういうパターンです。
薬も何も使わず、3日ごとにきっちり便通がある。
特にお腹が張るわけでもないし、便も硬くない。
何かに困っているわけではないが、毎日排便がないのは異常だと言われたので便秘外来に来た。

診察をしたところ腹部に異常はありません。
腸の動きも正常ですし、お腹の壁を通して伝わってくる内臓の活力も悪くありません。

こういう時あなたは、自分の身体の「何にも困ってない」というメッセージを信用して大丈夫です。(2012年3月19日)

(4)

ところが「自分の身体が発するメッセージを信用する」というのがなかなか難しいのです。

たとえば便秘治療の目的で毎日ヨーグルトを食べている人がいます。
ヨーグルトを食べるとお腹が痛くなるけれども、健康のためにがんばって続けている、という人は多いです。
しかし食べるとお腹が痛くなる、その時点で身体は悲鳴を上げているのです。
仮に他の9人の健康にいいからと言って、あなたの健康にとっていいとは限りません。
口コミや宣伝文句ではなく、「自分の身体がそれを求めているかどうか」をまず客観的に判断しましょう。

食物繊維もそうです。
朝食を食べる習慣もそうです。

どんなに立派な大学の先生が「自然なお通じのためには毎朝しっかり朝食を摂りましょう」と言っていても、それがあなたにあてはまるかどうかはあなたにしか分からないのです。(2012年3月21日)

(5)

そういうわけで便秘でお困りの方には、最低2週間「お通じカレンダー」をつけてみる事をお薦めします。
いつ便通があったか、いつどんな薬を使ったか、お腹の張りや食欲はどうか、「お通じ」に関する全てを書きこんでみるのです。

便秘外来の診察で、理想的なのは毎日腹部を触診する事です。
便通が1週間に1度の人であれば、便が出た日から次の便通の日まで、毎日お腹を見せて欲しいです。
しかしそれは現実的ではありません。
その場合、2週間分の「お通じカレンダー」があれば、かなり役立ちます。

実際にカレンダーをつけて初めて分かる事も多いです。
便秘そのものが悩みの原因だと思っていたのが、実は便秘とは関係ない膨満感だったり、便通と勤務のリズムが合わない事だったり、あるいは便秘薬の副作用だったり、意外な事が見えてきたりするものです。

「便秘外来」を上手く利用するコツは、気がついた事は何でも「お通じカレンダー」に書きこむ、その一方で自分の先入観は真っ白にリセットする、その二つです。(2012年3月23日)

(6)

今までどんな薬を試してきたかというのも大切です。
これは便秘に限りません。

「近所の病院でもらった薬を飲んだが胃痛が治まらない」という方が来られます。
この時「効果がなかった薬の名前」も非常に大切な情報です。
この種類の薬が効かないとすればかなり重度の潰瘍が疑われる、とか、神経性の胃炎の可能性が高い、とかある程度の事が推測できるからです。

便秘でも同じです。
今まで薬を試した事があれば、その名前と効き具合を教えてください。
その時に「効いた」「効かない」では誤解のもとになります。
「この薬は効かなかった」という患者さんの話をよくよく聞いてみると、水のような便が何回も出ている、という事がよくあります。
その人にとっては「硬い、形のある便が出ないから効いていない」という事なのでした。
この場合は「効いていない」のではなく「効きすぎている」と考えなくてはなりません。
どんな便が何回出るのか、という情報をお願いします。(2012年3月26日)

(7)

便秘外来受診のこつをまとめましょう。

最低2週間の「お通じカレンダー」をつける。
今まで試してきた薬を書き出す。
お腹の張りで困っている方は、なるべく症状が強いタイミングで受診する。
お腹が診察しやすい衣服を選ぶ。

その一方で、それ以外の事は「なるべく普通」でお願いします。
普段朝食を食べる人はどうぞ食べてきてください。
普段飲んでいる薬があればいつもどおり飲んでください。

あと憶えておいて欲しいのは「便秘の診察には時間がかかる」という事です。
問診だけで30分程度はかかります。
ぜひ予約をお願いします。(2012年3月28日)

間違いだらけの病院選び〜「40代から60代の人」篇

間違いだらけの病院選び〜「40代から60代の人」篇

(1)

基本的にまだまだ体力があるこの年代の特徴は「とにかく忙しい」という事です。
待合室でのんびりと何時間も待たなくてはならない、そんな事態は極力避けたいものです。
慢性的な病気、たとえば高血圧や高コレステロール血症であればたいていの診察は簡単な問診だけで終わります。
時間にして数分です。
あらかじめ数分と分かっている診察のためにあなたは何分待つか? という問題なのです。
必要なのは診察までの待ち時間だけではありません。
診察のあと会計までの待ち時間、薬局まで移動する時間、薬局で薬が出てくるまでの時間、それらにあなたはどれだけかけられますか?

もう少し問題を整理してみましょう。(2011年9月16日)

あなたが割かなければならないのは以下の時間です。

1)病院に行くまでの時間
2)受付から診察までの時間
3)検査までの時間
4)検査の結果が出るまでの時間
5)診断について説明を受けて、必要な薬を処方されて診察が完結するまでの時間
6)薬を受け取るまでの時間
7)会計が終わるまでの時間
8)病院から帰るまでの時間

よく考えなければならないのは1)と8)です。
「病院に行くと何かと時間がかかる」とこぼす人に話を聞いてみたら病院滞在時間よりも通院時間の方が長かった、というのはよくある事です。
それまでの主治医が転院したからわざわざ遠くの病院まで通っているという人は結構多いです。
特に理由はないけれども人に勧められたから何となく遠くの病院に通っているという人も少なくありません。
その距離と時間があなたの治療のために本当に必要なのかどうか、もう一度考えてみましょう。
もし判断に困れば正直に主治医に訴えればいいのです、「通うのが大変です」と。
もしその病院での治療が絶対的に必要なら「命にかかわる事だからがんばって通ってください」と言われるでしょう。
しかしほとんどの場合は「近くの病院で大丈夫ですよ」と言われるはずです。(2011年9月21日)
 
診察時間が毎回数分で終わる事が分かっているのであれば、通うべき病院は間違いなく職場の近くが便利です。
自宅の近くではおそらく平日の診察時間に行く事は難しいでしょう。
高血圧や糖尿病などの慢性疾患は薬を2、3日飲み忘れても自覚症状が出にくいのが特徴です。
ついつい薬をもらいそこねて、それでも特に不具合を感じずそのまま薬をやめてしまうという例が実際かなりの頻度であります。
自分の健康を守るためには「仕事がどんなに忙しくても薬だけは取りに行ける」病院を選択する事が大切です。

たとえば自宅が明石で職場が神戸駅だとします。
その場合に三宮元町の病院を選ぶのはあまりいい選択ではありません。
仕事のあと自宅と逆方向に向かうのは気が進まないものです。
このちょっとした面倒臭さが今後あなたの健康に重大な影響を及ぼすかもしれません。
ベストは職場と駅を結ぶ線上にある病院です。 (2011年9月28日)

(2)

もちろん通院するのにある程度の距離が必要な場合もあります。
病気によっては待合室で知り合いに会いたくないものです。
家からも職場からもなるべく離れた病院に行きたい、そういう時にはより一層慎重に病院を選ぶ必要があります。
その病院に毎週通わなければならなくなった時に通院が可能かどうか、をまず考えてみましょう。
自宅が明石で職場が神戸駅の場合、大阪の病院を選んでしまうと2回目以降の通院は現実的に無理だと思います。
この場合は三宮あたりがベストではないでしょうか。(2011年9月30日)

つまりコンプレックスに関わる病気の時です。

少し話が変わるのですが、念のために書いておきましょう。
当クリニックにはお尻の病気の患者さんが多く来られます。
うつ病の薬も処方しています。
勃起不全の薬も扱っていますし、男性の薄毛の薬もお出しします。

当クリニックではそういった症状の患者さんは全く珍しくありません。
スタッフにとっても、もちろん私にとっても、決して特別な事ではありません。
問診でコンプレックスに関わる事に触れられるのは、誰しも気が進まないものです。
しかし絶対に信じて欲しいのです。
私たちがプライベートの場で患者さんの病気を話題にする事は全くありません。
なぜなら私たちにとって全くの日常ですから。 (2011年10月3日)

さて、話を元に戻しましょう。次に問題になってくるのは「受付から診察までの時間」です。
ごくごく単純に考えればその時間は「患者一人当たりの診察時間」×「患者の数」です。
しかし病状によって診察時間が変わってくるのが難しいところです。

待合室に5人いても、全員が薬だけ受け取りに来た患者さんならあなたは10分後には診察を受けられるでしょう。
待合室に誰もいなくても、診察中の患者さんの病状が複雑でややこしければあなたは30分以上待つ事になります。
ここで鍵を握るのは医師の臨機応変の判断能力です。

便秘の悩みで来られた患者さんの場合、たいていの場合は30分程度の問診が必要になります。
お尻の病気によっては診察室で簡単な処置が必要な場合があります。
簡単とは言っても小さな手術ですから10分や20分は必要です。
さあ、今目の前に便秘相談の患者さんがいる。
次に待っている患者さんも、問診票を見ると処置が必要となる可能性が高そうだ。
さらにそのあとに薬だけの患者さんが何人か続いている……。
こういう場合、患者数そのものよりも医師がどう判断するかが待ち時間の長さを左右するわけです。

とすると最初に書いた数式はこう書き換えるべきかもしれません。

「混雑具合」÷「医師の状況判断能力」 (2011年10月5日)

次は「検査までの時間」と「検査結果が出るまでの時間」です。
これは病院の機能が問われる部分です。
前者は医師が出した検査オーダーがどこをどう巡って検査部署に届けられるかといういわゆるソフト面を、後者は検査機器の処理能力のいわゆるハード面を表します。
ハード面では新しい病院が有利です。
しかし新しい病院ではソフトが確立していない事が多くて、オーダーから検査結果までの時間短縮に結びついていない事例が往々にして見られるので要注意です。

しかしこういった診察を取り巻く環境よりも、実は医師の判断能力がここでも時間に大きく影響します。
たとえば診断能力と効率性が低い医師は患者さんを目の前にして初めてカルテを開きます。
問診の結果、レントゲン検査をオーダーします。検査結果が出るまでに小一時間。
その結果を見て血液検査を追加します。検査結果が出るまでにさらに小一時間。
こんな調子だと診察が終わる頃には、誇張ではなく、日が暮れてしまいます。

融通の利く医師であれば患者さんの入れ替わりなどのちょっとした合間に、待っている患者さんたちのカルテに目を通します。
問診するまでもなく検査が必要である事が明らかな患者さんがいれば、先に検査をオーダーします。
問診に時間がかかりそうな患者さんの場合は逆に問診途中に検査を入れて問診時間を小間切れにします。

「○○先生の外来はいつもいっぱいで朝一番に受付しても診察が終わるのは2時3時になる」
という話をよく聞きます。
本当に忙しいのか、要領が悪いだけなのか、忙しい人こそよく見極める必要があります。(2011年10月7日)

(3)

そう言えば勤務医時代を思い出します。

平日の午後、手術日なのに予定手術が入っていない事があります。
そういう日に外科医は普段できない書類仕事を片付けたり、受け持ち患者のカルテをゆっくり見直したりして、ある意味のんびり過ごします。
終業時間が来て、さあ今日は早く帰れる、と思った時、内科医から「虫垂炎疑いの患者がいるので、手術が必要かどうか診て欲しい」との要請の電話が入ります。
診察すると明らかに手術が必要な状況です。
外科医はおそるおそる尋ねます。
その患者がいつ内科を受診したのか、と。
そうして絶対に聞きたくない答えを聞くのです。
「午前中の外来で」
何と外科に回ってくるまでに6時間以上経過しています。
外科医ががっくりくるのはこういう時です。

問診と触診で右下腹部の痛みがはっきりすればすぐ外科に回して欲しいのです。
検査の段取りは外科サイドで考えるから、余計な検査に時間をかけずにすぐ回して欲しいのです。
予診票に「右下腹部痛」とあれば、問診をする事なく外科に回してもいいのです。

外科への紹介が午前中に行われていれば、手術はスタッフが充実した午後の時間帯に余裕をもって行えるのです。
内科医が判断を躊躇すると手術は手薄な夜間にせざるをえなくなります。
多少融通が利かなくても丁寧に診てくれる医師がいい、という考え方もあります。
しかしそれも程度問題です。
要領の悪い医師にかかるというのは、あなたの時間を無駄にするだけではありません。
あなたの命も削っているという事を憶えておいた方がいいと思います。 (2011年10月14日)
 
繰り返しになりますが、あなたが病院で割かなければならないのは以下の時間です。

1)病院に行くまでの時間
2)受付から診察までの時間
3)検査までの時間
4)検査の結果が出るまでの時間
5)診断について説明を受けて、必要な薬を処方されて診察が完結するまでの時間
6)薬を受け取るまでの時間
7)会計が終わるまでの時間
8)病院から帰るまでの時間

さて、5)に関してです。

こんな事を言う内科の教授がいました。

「風邪をひいたから風邪薬を出してくれ」と言う患者がいるが、風邪かどうかを決めるのは医者であって患者ではない。
 薬だけ欲しいのなら薬局に行け! と追い返してやった。

医学生を相手に、診察に対する心構えと医術に携わる誇りを植えつけるために聞かせる話としては、面白いかもしれません。
しかし現実にはどうでしょうか?
たとえばあなたが、午後から大切な会議があるのでその間だけでも咳を抑えたい、と思って病院に行ったとします。
さっきの教授先生なら咳の原因を調べるためにレントゲンを取り、アレルギーの検査をして、3時間後にようやく「なるほど確かに風邪のようだ」という結論に至り、そこからさらに「ただの風邪だから薬なんか必要ない、栄養を摂って寝ておけば治る」とあなたを診察室から追い出す事でしょう。

大学病院なら許されるかもしれません。
咳がひどいので近所のクリニックに行き、薬をもらって1週間様子を見たけれどもよくならない、レントゲンではよく分からないが風邪以外の重大な病気ではないだろうか?
大学病院とはそういう人のための病院ですから。
そこではきっちりと検査をして、仮に「やっぱり風邪ですね」と言われればそれはそれでありがたい事です。

しかし「ちょっと風邪っぽい」という症状でかかった病院でこれをやられるとたまったものではありません。
時間もかかる。費用だって項目によってはアレルギーの検査も1万円近くします。
病院の形態によってそこに求められるものはそれぞれ異なります。
かかりつけの病院には、「絶対的に間違いのない診断力と最新式の検査機器」よりも「あなたの健康にまつわる諸問題に対して適切な判断を下してくれる」総合力こそが求められると思うのです。(2011年10月17日)
 
薬の話を後回しにして、次に会計までの時間について考えましょう。

今ではほとんどの医療機関が電子カルテを採用しています。
診察が終わり、スタッフが診療内容をコンピュータに打ち込めばすぐ診察料がはじき出されます。

医師本人が入力すれば時間は最短ですみます。おそらく5分以内で会計は終了するでしょう。
受付スタッフが入力するところではもう少し時間がかかります。
単科の診療所で診療内容がある程度パターン化されているところであれば10分以内。
複数の医師が診療を担当して処方内容や検査項目の組み合わせがそれぞれ異なる場合だとちょっとややこしいので10分ではすまないでしょう。
総合病院になるとさらに複雑になりますので会計に20分はかかるものと覚悟しておくべきでしょう。

5分から20分の幅、これ自体は大した時間ではありません。
しかし人はついつい診察が終了すればすぐ帰れるものと思いこんでその後の予定を立ててしまうものです。
忙しい人は特に、会計時間まで頭に入れてスケジュールを調整した方がいいと思います。 (2011年10月19日)

さあ最後は一番問題となる「薬」です。

薬の受け取り方に二通りあるのは、みなさんご存知の通りです。
病院で直接薬を受け取る「院内処方」と、処方箋だけ受け取って、薬局で処方箋と引き換えに薬を受け取る「院外処方」です。
患者の立場からすると「院内処方」の方が時間も費用も節約できて誰がどう考えても便利です。それなのに多くの病院が「院外処方」を選択しているのには理由があります。
まず薬の価格はほとんど納入価レベルに定められているので、病院は薬をどれだけたくさん出しても利益が出ないようになっています。一方処方箋の値段は高めに設定されています。在庫のスペースや管理の手間を考えると「院外処方」の方が楽だし儲かるのです。
どうしてこういう仕組みができあがったのでしょうか?(2011年10月21日)

これは膨れ上がる医療費を抑えるために考えられた仕組みです。
薬をどれだけ出しても儲からないのであれば医者は最低限の薬しか出さないでしょう。
実際、医者が処方箋にどれだけ薬を書きこんでも、診療報酬は「処方箋1枚あたりいくら」です。
たくさん薬を処方しても手間がかかるだけで全然儲けにつながりません。医者は本当に必要な薬しか出さなくなるでしょう。
院外処方制度に切り替わっていけば薬漬け医療が改善され、さらには医療費が抑えられるはず

……と、かつての厚生省のお役人は考えたのです。

しかしよくよく考えてみればこれはとても失礼な考え方です。
つまり「医者は金儲けのために不必要な薬を出している」という前提に基づいているのですから。
よく当時の医者たちが怒らなかったものです。

結果はどうだったでしょうか。
医療費が全く抑制されなかったのはみなさんご存知の通りです。
厚生省発案の壮大な社会実験は「医者は金儲けの事ばかり考えているわけではなさそうだ」という結論に至ったわけです。

想定と反する結論が出たのですからとっとと仕組みを戻せばいいと思うのですが、調剤薬局はこの流れに沿って人員も設備も増やしてきています。
彼らにしても突然梯子をはずされると困ってしまいます。
かくして思いつきで制度を変えてみたものの、進むに進めず、退くに退けず、医療費は膨らみ続ける一方、という事態に陥っているわけです。(2011年10月24日)

しかし医療体制のあるべき姿や保健行政の行く末についての議論はここでは置いておきましょう。
政策の誘導によって「院外処方」の仕組みを採用している病院の方が多くなっている、その現実にどう対応するべきか。ここではその事をまず考えたいと思います。
「院外処方」のメリットは、薬手帳を発行してくれる事、薬についての情報をプリントしてくれる事、それから医師以外の第三者から薬についての説明を受けられる事、以上3点です。
このメリットが、「手間と費用が余分にかかる」というデメリットを上回る人は「院外処方」の病院を選ぶべきです。
かつて薬の副作用で苦しんだ経験があるので医師だけではなく薬剤師からも詳しい説明を聞きたい、そういう人は「院外処方」を選びましょう。
循環器科にもかかり整形外科にも通い心療内科にも通院している、そういう複数の病院からたくさん薬をもらっている人は薬手帳を発行してもらった方が薬のチェックが簡単です。
下痢の症状で来られた患者さんの話をよくよく聞いてみると3つの病院からそれぞれ下剤が処方されていた、などという事は決して珍しくありません。薬手帳があればそういう重複処方は防げます。
転勤族で、行きつけの病院が短期間で変わってしまう、そういう人も院外処方の方が便利です。

めったに病院にかかる事がない人がちょっとした不調で病院にかかる時、そういう場合は「院内」か「院外」かにこだわる必要はないと思います。
ただ、病気についての説明と薬についての説明は、違う人から受けた方が頭の中で整理しやすいかもしれません。
もし何か慢性疾患が見つかって長期の通院が必要になったら、その時にあらためて「院内」「院外」について考えたのでいいと思います。

しかし何年も同じ薬を飲み続けていて、検査も定期的に受けていて、健康上何も困っていない、そういう人は「院外処方」のために手間と費用を余分にかける必要は全くありません。(2011年10月26日)

他人の印象で病院を評価するのは難しいです。

風邪でもほとんどの場合は「どんどんひどくなる増悪期」と「日に日にましになる回復期」を経て1週間もすれば治ります。
よくあるのが、ひどい風邪で何軒か病院を回ったけれど、どこの治療も効果がなかった。
それがあの病院の薬を飲んだら翌日には嘘のように治った。だからあの医者は名医だ! というような話です。
断言します。
それは名医なのではなく、たまたま回復期に受診しただけです。
さらに「前の病院でどんな検査をして、どう診断されて、どういう薬を出されたか」という情報は医師にとって最高の診断材料です。
「後医は名医」と言われるゆえんです。
あとに診た医師は圧倒的に有利なのです。
ですから病院をあちこち渡り歩いている人の情報は、実は見当違いの事が多いです。

病院の雰囲気は大切です。
その点に関しては口コミは参考になります。
しかし「腕がいい」とか「有名」とかの評判はあてになりません。

激しい腹痛で大病院にかかったとします。
検査をして胃潰瘍やその他の重大な病気ではないと判明した時点で、往々にして大病院の医師は患者に対する興味を失います。
「どこにも異常がないから治療の必要はありません」とぴしゃりと言われたりします。
開業医では逆です。
「現実にある症状をどうやって抑えるか」が開業医の役割です。
名医が放り出した病人を治さないといけないのです。
いい医師とは最終的にはあなたと相性のいい医師だと思います。
重大な病気をかかえてから相性のいい医師を探すのは大変です。

風邪でも腹痛でもあるいはインフルエンザの予防注射でも、そういう機会を利用して一度かかりつけ候補病院を偵察しておくのがいいかもしれません。 (2011年10月28日)
 


間違いだらけの病院選び〜「70歳以上の人」篇

間違いだらけの病院選び〜「70歳以上の人」篇

(1)

かなり以前ですが新聞の投書欄にこんな文章が載っていました。

「月に一度大学病院に通っている。
これまで長い待ち時間が苦痛であったけれども、先日待ち時間の間に試しに建物の外に出てみた。
するとそこにはよく見ないと気がつかないような季節感あふれた自然があって、私は長い待ち時間を忘れて過ごす事ができた。
私は月に一度の通院が楽しみになってきた」

それはそれで大変に素晴らしい経験だったのだろうと思います。
その一方で医療に携わる立場からするとどうしても拭えない疑問もあります。

「月に一度大学病院に通院しなくてはならない病気って何だろう?」

地域によっては大学病院が地域医療の最前線を担っているところもありますし、科による特性もあるでしょう。
しかし場所を阪神地区に限って言えば、一般の内科や外科で月に一度の大学病院通院を必要とするような病状をあまり思いつきません。
大学病院は最先端医療の場です。
他の病院では原因や治療法が分からない病気や、従来の治療法では効果がない病状の人を専門的に診察する場です。
大学病院でしかできない検査や治療を必要とする病気はあります。
しかしそれが定期的に、つまり急を要しない状態で「毎月」必要とする病態となると私には全く思い浮かびません。

必要のない人が大学病院に通うというのはつまり、必要な人の待ち時間を増やしているという事です。
大学病院の待合室での2時間を有効的に過ごそうとするのは素晴らしい事です。
しかしもし大学病院に行かなければ、有効利用を考えずとも待ち時間そのものがぐっと短縮されます。
そして本当に必要な人の待ち時間が何%か減らせます。

今回考えてみたいのはあなたはどの病院に行くべきか、という問題です。
題して「間違いだらけの病院選び」です。(2011年6月10日)


病院選びが一番重要になってくるのは70歳以上の人だと思います。
思わぬ時に思わぬ事が起きる可能性が高くなってくる年代。
この年代の方が選択すべきなのは

自宅から近い機動力のある中規模病院か、そこを退職した医師が近所に開業した診療所

です。
診察の時にちょっとした世間話ができる、それくらいの人間関係が主治医との間に築けるとベストです。
大病院ではそうはいきません。
まず、医師の出入りが頻繁で、一人の医師に長期間担当してもらう事が難しい。
それから大病院は往々にして機動力に難があります。
何かがあった時に入院させてくれない。それどころか救急外来にさえ受診させてもらいない事も珍しくありません。
普段の診療では「主治医と患者の人間関係」が大切なのですが、救急の現場では「病院内の医師の人間関係」も大切です。
当直医が違う科の医師であっても、医師同士が信頼し合っていれば「○○先生の患者だったら診てあげよう」と考えます。
科を超えた医師の交流がない病院では「今日の当直は内科なので整形外科の患者はよそに行って」と門前払いされたりするわけです。

科を超えた交流がある規模とは、せいぜいベッド数500までだと思います。

ある病院に通っているからいざという時にはその病院が診てくれる、と盲目的に信じている人もいます。
そうではありません、特に大病院の場合。
必要性もないのに大病院に通院している人はせっかくのカードを無駄に使っていると考えた方がいいと思います。(2011年6月13日)

もう一つ、大病院にかかっている人に知っておいて欲しい事があります。

大病院には最新の設備があります。治療技術も最新です。
しかし技術にはハードとソフトの両面があります。
大病院には優れたハードがあります、たとえば高性能の検査機械や放射線照射装置。
これらが必要な人は絶対的に大病院に頼らなくてはなりません。
しかし既に確立した技術、たとえば大腸の検査や胆石の手術についてはどうでしょうか。
大病院でこれらの診療を担うのはほとんどが若い医師たちです。
大病院なら最高水準の診療をしてくれるはずという思い込みは、ハード面については当たっていても、ソフト面については正解とは限らないのです。

技術の進化についても大病院と中規模病院とでは方向性がずいぶん違います。
たとえば胃癌の手術だと、大病院では周囲の内臓やリンパ節などを根こそぎ取ってしまう「拡大手術」をよしとする傾向があります。
高度進行癌の治療には必要な手技です。
一方中規模病院では転移や再発の可能性のない早期癌であれば小さい手術を目指します。
体力的にも経済的にも患者の負担を少なくしようというベクトルで動くわけです。

ですから基本的な考え方はこうです。

「大病院でしかできない検査や治療以外は、なるべく中規模病院で受けた方がよい」(2011年6月15日)

普段から大病院にかかっていて、ある時健診で早期胃癌が発見されたとします。
早期胃癌の手術であれば中規模病院で受けた方が入院日数的にも、術後の体力回復度的にも、経済的にも楽です。
ところが大病院から中規模病院に紹介という流れはなかなか難しい。
一方中規模病院から大病院への紹介はスムーズです。
きちんと健診を受けてさえいれば、70歳以上になってから大病院でしか対応できない病気になる事はそうそうありません。
つまり普段は中規模病院に軸足を置いておく方が絶対的に有利なのです。

しかし実は中規模病院よりももっといい選択肢があります。

それが最初にちょっとだけ触れた
「自宅に近い機動力のある中規模病院を退職した医師が近所に開業した診療所」です。(2011年6月17日)

(2)

一人の医師に健康管理を任せる事についてはメリットとデメリットがあります。

メリットは薬や検査が少なくて済む。

たとえば医師があなたの胃の粘膜に何か異常を認めたとします。
おそらくは炎症による粘膜の変化で、悪性の可能性は限りなく0。
もしあなたがたまたま胃の検査だけ受けにきた患者であれば、医師としては念のために細胞検査を追加します。
しかしあなたが定期的に通院している患者で、1年後にもきっちりと胃カメラをしてくれると分かっていれば追加検査はしません。
薬でも同じです。
検査でコレステロールが高かった。
あなたがこちらが指示した食事療法や運動療法を守って3か月後に来てくれる事が分かっていればすぐ薬を出したりはしません。

お互いに顔が見える関係だと医師はそうそう即座に検査や薬をオーダーしないのです。

デメリットもあります。

医師の思い込みで、必要な検査がおろそかになっていたりするのです。
たとえばある時の検査で、あなたが糖尿病ではない事が確認された。
医師は「この人には糖尿病はない」と思い、次の検査からは糖尿病関連の検査項目を省きます。
良心的な医師としては当然の行為です。余計な検査をする必要はありませんから。
ところが年月はあっという間に過ぎていきます。
「この間検査をしたら糖尿病ではなかった」という「この間」がふと気がつくと5年前だったりするわけです。

これを防ぐためには時々は違う医師にも経過をみてもらう事が必要です。

ころころ主治医が変わるのは困りものです。
しかしずーっと同じ医師に任せきりになるのも危険です。

そこで浮かんでくるのが「中規模病院との関係(コネ)が強い開業医」という選択肢なのです。(2011年6月20日)
 
「白い巨塔」で有名になった大名行列のような教授回診ですが、その目的は患者の経過を第三者の目からチェックする事にあります。
検査計画や治療手順に見落としがないか、違った角度から見直すのです。
回診やカンファレンスなど、入院患者についてはどの病院でも主治医以外のチェックが入る仕組みになっています。
ところが外来患者ではそうはいきません。

ここだけの話ですが、糖尿病や高血圧など、管理がもう一つ上手くいっていないのに「もうちょっとだけ」とずるずると様子を見ている患者を、どの医者も何人か抱えているものです。
患者に「今回は必ずしっかりと食事療法をするから薬だけは勘弁してください」と頼まれ「じゃあもう一度だけ様子を見ましょうか」と譲歩し、その「もう一度だけ」が二度になり三度になりあっという間に1年になったりするわけです。

そういう状況は勤務医であろうと開業医であろうと同じです。
で、状況が同じなのであれば、様々な検査を検査伝票一枚でオーダーできる勤務医よりも、病院に検査を依頼する際には経過を記した紹介状が必要な開業医の方が「経過をおさらいする」機会が多いのではないかと思うのです。
もちろん検査を病院に依頼する事自体が少なくては意味がありません。
そういう意味で「中核病院と親密で良好な関係をもっている」というのが絶対条件なのです。

もう一つ開業医にかかりつけになっておくと有利なポイントがあります。(2011年6月22日)

このシリーズの最初で「中規模病院は大病院に比べて機動力がある」と書きました。

たとえばあなたが高血圧である病院に通院中だとします。
夜中に突然激しい頭痛に襲われたので、病院に電話すると当直は整形外科医でした。
もし中規模病院でその整形外科医とあなたの主治医の内科医が親しければ、「とりあえず診察しましょう、自分の手に負えない状態であれば主治医に連絡します」という流れになるでしょう。
こういう場合もあります。
高血圧で通院中に腰痛に襲われたとします。主治医から整形外科に紹介されて診てもらったところ手術の必要なヘルニアでした。
さっそく入院、手術の手続きをして一つの病院であらゆる事がスムーズに片付きました。
こういう機動性は中規模病院の一番のメリットです。

ところが現実には通院中の病院で手術を受けたくない事もあります。
主治医の内科医には満足しているけれども手術するとなればもっと評判のいい医者にして欲しいとか、もっと家の近くの病院がいいとか、個室に入れてくれる病院がいいとか、理由はさまざまですが、こういう要望は実際に数多くあります。
そういった時には逆に医師同士の距離が近すぎる事が患者にとっての足かせになる可能性もあるわけです。

そういった時に開業医が仲介役であれば自由度はぐっと高くなります。
「A病院で検査をして手術を薦められたけれども、手術はB病院でしたい」
そんな相談は開業医にとっては珍しくも何ともありません。
その相談に乗るのが開業医の仕事の一つでもあるし、またその段取りにも慣れています。

主治医選びの際に、いろいろ相談に乗ってくれる開業医が近くにいるのであれば、中規模病院の勤務医よりも多少有利かもしれないと思うのは、そういう理由なのです。(2011年6月24日)

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