便秘外来お詫び

便秘外来お詫び

(1)

当院では便秘外来をおこなっております。

これまでも便秘についてはこのコラムで繰り返し書いてきましたが、便通に正解はありません。
1日4、5回が正常な人もいれば、1週間に1回が正常な人もいます。
ですから当院での便秘外来ではまず、その人にとっての正常なリズムはどれか? という診察から始まります。

とても時間と手間がかかります。
最低でも30分。
ですから時間枠を決めてさせてもらっています。

仕事の都合で6時にしか行けない、という方も多いです。
でも6時からでは診察時間がどうしても足りません。
申し訳ありませんが、5時までに来院できる日を何とか調整していただきたいと思います。
本当にすみません。
(2016年10月19日)

(2)

便通に正解がないのと全く同じ理由で、治療に正解もありません。

ところがちまたにあふれる便秘改善法の数々はどれも「これさえ飲めばたちまち快便!」みたいな売り文句です。
大学の偉い先生が提唱する便秘治療法もあります。
テレビの健康番組で紹介される治療法もあります。
どれも「これでみんなさっそく快便」みたいな勢いです。

すごいなあと思います。
当院でおこなうのはその人にしか通用しない治療法です。
便通によい食事も人によって全然異なります。
身体によい食事の摂り方も違います。身体によい食べ方も人それぞれです。

この世に同じ体質の人は二人といません、理想的な便通のあり方も千差万別です。
私には「あなたに最適の治療法」しか提示することができません。

「これさえ飲めばたちまち快便!」みたいな薬は、残念ですが、お出しできません。
本当にすみません。
(2016年10月21日)

(3)

便秘外来は、ここ最近の便通の状況を聞き取るところから始まります。

「一番最後にあったお通じはいつですか?」
「何日前の何時ごろでしたか?」
「それは食事の前でしたか、あとでしたか?」
「その前にお腹は痛くなりましたか?」
「便の硬さはどうでしたか? 量はどうでしたか?」
などなど、です。
便秘薬を使っている場合は、何を、いつ、どれだけ使ったかも知りたいです。
便通前後のお腹の張り具合や、すっきり感の有無も大切な情報です。

患者さん側からすると非常にわずらわしいと思います。

中には便通の状況なんか言いたくないという方もおられます。
ましてや腹部の触診などもっての外という方もおられます。
使っている便秘薬の名前もご存じない方もおられます。

以前は「自分が使っている便秘薬の名前くらい覚えておいてくれよ」と思っていました。
つまり徹底的に問診を取るという私の診察方法が標準であると思っていました。
今はちょっと考え方が違います。
便秘に対する考え方が人それぞれなのと同様に、便秘治療に対する考え方も人それぞれである、と。

便秘の治療には細かな問診と腹部の触診が必要である、というのはあくまでも私の考え方です。
他のやり方も可能性としてはあるかもしれません。
しかし申し訳ありませんが、松本胃腸科クリニックでは徹底的に問診を取るというやり方以外の方法はおこなっておりません。
黙って座れば万能薬がすっと出てくるというやり方をご希望の方については、ご希望に添えないと思います。
本当にすみません。
(2016年10月24日)

(4)

当院はクリニックです。
私は医師です。
医学を信じています。
薬の恩恵を信じています。

症状を抑えて病気を治す、というのはもちろん薬の正しいあり方です。
その一方で「糖尿病だけれど、この1錠を飲めば好きなものを好きなだけ食べられる」というのも薬の恩恵の一つだと信じています。
ですから、「薬は悪」という考え方には与(くみ)しません。
下剤もちゃんとした薬です。
便秘に対する様々なアプローチの中で、最も簡単で、最も安価で、最も健康上安全なのは、最適のタイミングで最適な量の下剤を使うことです。

「簡単でなくてもいいから薬なしで便秘を治したい」という相談には乗れます。
しかし「サプリメントや健康食品はいいけれど、薬だけは絶対使いたくない」という方のご期待には添えないと思います。
本当にすみません。
(2016年10月26日)

(5)

そして先に謝っておきます。

徹底的な問診と腹部の触診、それから場合によっては直腸や大腸の検査を経たあと、およそ半分の方に私はこうお伝えすることになります。
「あなたは便秘ではありません」

今までありとあらゆる薬を使い、あらゆる健康法を試し、それでも便通がなくて苦しんできたのです。
それが「便秘じゃない」なんて馬鹿にするな、と言いたくなると思います。

でも、そう結論づけざるを得ない場合があります。
どんなにいきんでも水のような便しか、それも少量しか出ず、当然すっきり感もなく、お腹はずっと張って痛い。
こういう場合、実は便が溜まって張っているのではなく、下剤の使い過ぎでお腹が苦しくなっている可能性があります。
この場合の対処はまず、下剤を減らすことと、もう一つは「便秘であるという思い込み」をやめることです。

いきなり「便秘じゃない」と言われたら誰でも戸惑ってしまうと思います。
ですが、「水のような便しか出ないのはもしかすると下剤が効き過ぎているからかもしれない」という発想はどうでしょうか。
そこを理解してくださると次の段階に取り掛かれます。
逆に言うと、そこを理解していただけないと「下剤を少しずつ減らして便の硬さと量を正常に戻していく」という治療に踏み込めません。

いろいろ問診をして、いろいろ診察をして、いろいろ説明をして、一時間近く時間をかけたあと
「腸には便が残っていません。お腹が張って苦しいのは便のせいではなく、薬のせいです」
と言っても、
「でも今、現に苦しいから何か下剤を出してくれ」
という方もおられます。

お互い一時間が無駄になったことになります。

「水のような便しか出ないのは薬のせいかもしれない」
その発想を絶対に認めたくない方は、残念ですが、当院ではあまりお役に立てないと思います。
本当にすみません。
(2016年10月28日)

 

その薬飲むべきか、否か?<main>


その薬飲むべきか、否か?

(1)

 

週刊誌広告で「この薬は飲むな」とか「この手術は受けるな」などの見出しをよく見かけます。

 
真に受ける患者さんがおられたらどうしよう、と戦々恐々でしたが幸いなことに当院の患者さんではそういう方はおられませんでした。
場所柄知的水準の高い患者さんが多いという理由もあると思います。

ですが、服薬中の薬に対して少しでも不安がある方はどうぞ遠慮なくお尋ねください。
(2016年6月6日)

 

(2)

 

実は週刊誌の記事は読んでいないのですが確かに、飲まなくてもいい薬や飲まない方がいい薬というのもあります。

 

1)効果がない薬

 

血圧を下げてくれない降圧剤や血糖値を下げてくれない糖尿病薬などがこれにあたります。

降圧剤や糖尿病薬は効果が数字にはっきり表れるので判断は比較的簡単です。
医者と患者さんが一つのデータを一緒に見て「この薬は効いているのかどうか」判断できるわけです。
高いくせに効果がない薬や切れ味の悪い薬を使い続けると医者の方が見捨てられてしまいます。

そういう意味で「効果がない薬」を医者は出しません。
少なくとも当院でお渡ししている薬には「効果がない薬」はないと、私は信じています。

 

2)効果が健康に結びつかない薬

 

勘違いされている方が多いのですが、降圧剤を飲むのは血圧を下げるためではありません。
糖尿病の薬もそう、コレステロールの薬もそうです。
血糖値を下げたりコレステロール値を下げるのが目的ではありません。

高血圧や高血糖状態が引き起こす脳卒中や心臓病を予防するためです。

もしあなたが飲んでいる薬が血圧は下げるけれども脳卒中などの発症率を減らさないとすれば、それはまさしく「飲まなくていい薬」です。
ただし「血圧を下げるかどうか」に比べると「脳卒中を予防するかどうか」判断するのは結構難しいです。
専門家集団による大規模で長期間の追跡調査が必要になります。

新薬発売後十年近く経って「実は効果がなかった!」という大規模研究の結果が報告されて騒がれることが時々ありますが、最近はあまり聞きません。
週刊誌で扱われているのはこの領域の薬ではないと思います。
(2016年6月8日)

 

3)効果が感じられない薬

 

降圧剤や糖尿病薬は自覚症状のない病的状態を治す薬です。

本来薬とは痛みを抑えたり熱を下げたり、具体的に困っている症状を治すものでした。
しかし時代が変遷して、実り豊かな人生を送るためには自覚症状の出ないうちに病的状態を改善させた方がいい、という認識が一般的になりました。
降圧剤などの、自覚症状を改善させるわけではない、いわば特殊な薬の方が健康面では重要になってきたわけです。

ところがこういう時代の変化についていけない人もいます。
いまだに子どもは叩いて躾けるべきだと主張する人もいれば、会社の宴会では女性社員が酌をして回るのが当然だと思っている人もいます。
そういう人に自覚症状がない状態を病気と認めてもらうのは難しそうです。

自覚症状もないのに薬を飲んでもらうことはもっと難しいと思います。
そして困ったことに医者の中にも一部そういう頑迷な人がいて、おそらく今回の週刊誌の記事などはそういう医師に取材した結果ではないかと思ったりします。

さて、健康維持のための主役が新しいタイプの薬に移りつつあるとはいえ、ほとんどの薬が自覚症状を改善するために使われていることに変わりはありません。
そのジャンルの薬の存在意義は「効くか効かないか」にあって、それ以外にはありません。
(2016年6月10日)

 

(4)

 

医者からすると不思議に思える現象は多いのですが、よくあるのがこういうねじれ現象です。

つまり、降圧剤を頑強に拒む人が、特に効果を感じないまま漢方薬を飲み続けていたりするのです。

繰り返しになりますが血圧の薬は今日の血圧を下げるために飲んでいるのではありません。
明日の脳卒中を防ぐために飲んでいるのです。
今、無症状でも明日のために必要な薬です。

ところが漢方薬はそうではありません。
長く飲み続けることによって体質の改善も期待できるとはいえ、いくらなんでも何か月も漫然と飲む意味はありません。
もちろん「冷え性が改善された」「便秘が治った」などの自覚できる効果があれば別です。
しかし漢方薬を処方されている人に「これは何の症状に対して飲んでいるんですか?」と尋ねると、少なからずの人からこの答えを聞くことになります。

「よく分からないけれど出されたから飲んでいる」

胃腸薬やビタミン剤にも同じような傾向が見られます。
たとえばビオフェルミンはとてもいい薬ですが、せっかくのいい薬がそれこそ全く意味のない状況で使われていることが多いです。

薬には「自覚症状がなくても飲まなくてはならない薬」と「自覚症状がないなら飲む必要のない薬」の二種類があることをはっきり意識した方がいいと思います。
(2016年6月13日)

 

4)副作用のある薬

 

どの薬にも効果と副作用がある、というのは皆さんご存知のことだと思います。

ある程度の副作用を覚悟しつつ使わなくてはならない状況もあれば、「この症状が出たらすぐ服用中止」となる深刻な状況もあります。
まったく逆に、大した効果を期待して処方しているわけではないのでわずかでも副作用が出れば中止するしかない場合もあります。

つまりポイントは薬の副作用そのものにあるのではなく、医師が効果と副作用をどう天秤にかけているか、そしてそれを患者さんに納得してもらっているかどうか、です。
副作用が強いから使わない方がいい薬がある、というものではありません。
結局は医者と患者さんの間のコミュニケーションの問題に言い換えられます。

それを踏まえると、「この薬は副作用が強いから使わない方がいい」と言う医者がいれば、それは私には「患者とコミュニケーションする気なし」と宣言しているように思えるのです。
(2016年6月15日)

 

5)費用対効果

 

消化器系にはそれほど高い薬はありませんが、循環器系や糖尿病系になると処方する側でもびびってしまう高価な薬があります。

特に血をサラサラにする薬にはピンからキリまであってびっくりします。

ピンからキリまである中でどの薬を使うかは医者の裁量範囲です。
ですがその裁量の中にコスト意識がまったく感じられないことが多いのも、事実です。

こういう時高い薬、つまり最新の薬を先に使ってしまうとなかなか安い薬に変更できません。
安い薬に変えたあとで脳卒中が起きれば責められる可能性があるからです。
医者でもそうなのです。
患者さんの立場からすると「この薬なら脳卒中になる可能性を最低限に抑えることができる」と言われれば従わざるをえないのではないでしょうか。
(2016年6月24日)

 

(7)

 

ここで話は変わるのですが、「自分の患者には絶対心筋梗塞はおこさせない」と豪語する循環器の医者がいます。

一見胡散臭いですが、よく聞くと、大変な心構えがあって初めて言える言葉です。

血圧やコレステロール値は通常よりも厳しく基準を定めて、生活習慣の改善や薬によって徹底的に管理します。
それに従えない患者さんとは大喧嘩も辞しません。
そう書くと、「従えない患者が離れていくから質のいい患者ばかりが残るだろう」というやっかみの声も聞こえてきそうです。
それはそうかもしれません。

 

しかし誰かの健康のために喧嘩ができる、この誠意とエネルギーはすごいと思います。
そしてそこまでしないと「自分の患者は心筋梗塞では死なせない」というスタンスは貫けないだろうと思うのです。
(2016年6月27日)

 

(8)

 

もしかすると「喧嘩」というのがキーワードになるかもしれません。

 

今思いついたのですが、あともう一つは「タバコ」。

薬の飲み方や生活習慣の指導を受けている時に「タバコはダメですか?」と尋ねるという手はどうでしょうか?
ご存知の通り喫煙は最先端の薬の効果をも打ち消してしまう最強最悪の毒物です。
「タバコはダメですか?」という質問に対しては「ダメに決まっているでしょう!」という答え以外はありえません。

ところがもしそこで「まあ、ほどほどにしてくださいよ」などと答える医者がいるとすれば、その医者はあなたの健康についてさほど興味はありません。
その医者が、ピンからキリまである中で、もし馬鹿高い方の薬を出しているとすれば、それは「この薬を出しているのはあなたのためではなく私の都合だ」と判断してもいいと思います。
「医者が信用できるか」は、「医者が自分と喧嘩してくれるかどうか」と言い換えられると思います。
(2016年6月29日)

 

(9)

 

自分のために喧嘩までしてくれる医師を見つけるためには「ドクターショッピング」なるものが必要です。

口コミがどんなによくても、所詮は他人の評価です。
自分の訴えを真面目に聞いてくれるのか、自分の症状に真剣に向き合ってくれるのか、自分の不安を丁寧にすくい取ってくれるのか。
こうしたことはやはり直接顔を見てじっくり話をしてみないことには分かりません。

新しく病院に行くのは億劫なものです。
しかし健康に関する不安を抱えて毎日過ごすのは辛い事です。
一度思い切って別の医者にかかってみるのはいい方法だと思います。

 

ただし患者さんの中には別の目的で「ドクターショッピング」を実践されている方がおられます。
つまり「自分の求めている答えを与えてくれる医者」を探している人です。

「どの病院に行っても降圧剤を飲めと言われる。
おたくはあまり薬を出さないと聞いたから、よそとは違うことを言ってくれると期待して来た」

という方です。
(2016年7月4日)

 

(10)

 

すでに何軒も回っているということは、ある意味態度がぶれないということです。
何とかして説得しようとしても「そんな話を聞きに来たわけじゃない」と拒絶されるでしょう。

以前なら「生活習慣を改善して、それでもだめなら薬を飲みましょう」という説明の仕方をしていました。
教科書的な指導法です。
しかしそれが通用するのは当院に長くかかっていて、個人的にもよく分かっている患者さんです。
初めて顔を見る人に、生活習慣が改善できる人なのかどうかも分からないのに「まず生活習慣を改善しましょう」と言うのは無責任だと思うのです。
生活習慣病とは脳や心臓の血管がパンクするリスクを背負っている状態です。
「まず生活習慣を改善しましょう」と言うのは、つまり、改善してくれるかどうかも分からない、改善したからといって血圧が下がるかどうかも分からない、そんな状態で数か月放置するということです。

教科書的には正しいかもしれないけれど、きっとそういう医者はあなたのために喧嘩はしてくれないと思います。
(2016年7月6日)

 

(11)

 

内緒ですが、生活習慣の改善を勧める医者の心の奥底にはこういう考えもほんのちょっとだけあります。

「生活習慣なんてそうそう改善できっこないだろうから、数か月後には薬を飲んでくれるだろう」

患者さんにとっては身をもって薬の必要性が実感できるし、医師にとっては説得の時間と手間が節約できて「数か月のリスク」に目をつぶればWIN-WINと言えないこともありません。

ですが、自分の求めていることしか聞きたくない患者さんの場合は別です。

 

よくあるのがこういうパターンです。

「まずタバコをやめて食事の塩分と脂肪分を減らしましょう」
「仕事の付き合いもあるし、絶対無理」
「タバコだけでもやめられませんか」
「禁煙って考えただけでもストレスで死にそう」
「せめて節煙とか。たとえば朝起き抜けの一本を思いとどまることから始めてみませんか」
「それくらいなら……」

禁煙への第一歩として提案した私の言葉ですが、中にはこう受け取る方がおられます。

「起き抜けの一本を我慢したら薬は要らないと言ってくれた」

その患者さんが欲しかったのは薬でも説明でもなく、医者のお墨付きだけだったのでした。
(2016年7月8日)

 

(12)

 

「ドクターショッピングに行こう!」と言っておいてすぐドクターショッパーの悪口を書いて、相変わらず意地悪なコラムですが、現実はそういうものです。
「求めている答えしか聞きたくない!」くらいのタフさがないと、病院を何軒も回ることなどできないということです。

さらにその一方で病院も医師も専門化が進んでいます。
「うちは呼吸器内科だから腹痛の相談をされても困る」
みたいなことが現実に起き始めています。
実際に消化器内科でもそろそろ「検査専門病院」と「治療専門病院」とに大きく分かれつつあります。

これまでは「胃が痛ければ胃腸科」と比較的単純でしたが、今後はそうではありません。
ただでさえ面倒なドクターショッピングが今後もっとややこしく、難しくなります。

逆に言うと、いいかかりつけ医を見つけるチャンスは今しかないということです。

それについてはまた機会を改めて一緒に考えましょう。
(2016年7月11日)

 

健康講座で教えられたこと<main>便秘外来お詫び

 


健康講座で教えられたこと

神戸新聞カルチャースクールが無事に終了しました。

何度かこういう講座を担当させてもらいましたが、こちらの勝手な思い込みに気づかされることがよくあります。

1)ほとんどの人は「医療不要論」など信じていない。

街を歩けば書店の店頭やコンビニのマガジンラックなどに並ぶ医療不要論本の数々が、いやでも目に飛び込んできます。
そのたびに思います。
健康講座を開くことがあればとにかく真っ先にこういうデマをきっちり否定しよう! と。

そして意気込んで「医療不要論」の話を始めるのですが、たいていの場合みなさんきょとんとされています。
そうなのです、そもそもみなさん「医療不要論」など相手にしていないのです。
「コレステロールの基準値を低めに設定しているのは製薬会社の陰謀だ」という雑誌記事を見て、ほとんどの人は「そんなことを言ってどうせまた変な健康食品を売りつけようとしているんでしょ」と冷静に判断しているようなのです。

そう、ほとんどの人は。
(2015年8月21日)

それから前回の記事とほとんど重なるのですが、

2)ほとんどの人は近藤誠など相手にしていない。

これにも驚かされます。
最初はトンデモ理論としてスルーを決め込んでいた医者たちですが、近藤がマスコミで派手に扱われるのを見て危機感を感じてきたようです。
雑誌などで反論コメントを見かけることが多くなってきました。
私も危機感を感じている一人です。

ところが講演で近藤誠の名前を出しても、みなさんの反応は限りなく薄いです。
「がんもどき」という名前を出してもほとんどの人は「そう言えばそんなことを言っている人がいたっけ」程度の反応です。
マスコミでのもてはやされぶりに焦っている私たちが拍子抜けするほどの冷静さです。

そうなのです。
ほとんどの人は。
(2015年8月24日)

それでは医療不要論や近藤誠をもてはやしているのは一体誰なのでしょう?

前回「ほとんどの人は医療不要論も近藤誠も相手にしていない」と書きました。

しかし安くもない受講料を払って健康講座に来られるのは、よく考えてみると限られた階層の方々です。
意識が高く、所得も高い人たち。
この人たちはちまたにあふれる情報の洪水から正しくて有用なものだけを選択することができます。
マスコミの扇動にも簡単には踊らされたりしません。
医者たちが医療不要論の隆盛に危機感を感じていると言いましたが、その言い方に従うなら、心配に及ばない人たちです。

医療不要論や近藤誠理論はこの人たちとは違う階層をターゲットにしています。
マスコミに操られてこの理屈に飛びついた人は、受けられるはずの医療を拒んで寿命を縮めます。

つまり医療不要論は、意識と所得が低い人を選択的にむしばむ、悪辣で卑劣な心の伝染病なのです。
(2015年8月26日)

子どもばかり狙うような犯罪者は許せない、と私は思います。

それはもしかするとあまり論理的な発想ではないかもしれません。
「大人を狙う犯罪者なら許せるのか?」と反論された時に上手く答える自信がありませんから。
感じたまま「卑劣だから許せない」と答えたいところですが、「卑劣」という言葉にどれほどの論理性があるのかもよく分かりません。

ここは逆に「人は、子どもばかり狙うような犯罪を卑劣と感じる生き物である」と考えるべきかもしれません。
我ながら詭弁そのものですが。

しかし自分の気持ちをよくよく観察してみると「卑劣なものに対する許せなさ」が、大脳の表面ではなく、もっと奥底に根差している事だけは感じられます。

そしてその「許せなさ」がざわざわ騒ぐことが最近多いのです。
(2015年8月28日)

かつて持てる者も持たざる者も同じようにタバコを吸っていました。
その時代であればタバコは人の健康を「均等に」にむしばむ薬物と言ってよかったと思います。

しかし今は違います。
持てる者の喫煙率は下がり、一方持たざる者は今なお高い割合でタバコを吸い続けています。
タバコは人の健康を「選択的に」にむしばむ物質となってしまいました。
タバコは持たざる者から、かろうじて残された健康をむしり取ってしまう毒物なのです。
そこに「卑劣さ」を感じるのは間違っているでしょうか?

所得の高い人は近藤理論を相手にせず、所得の低い人は近藤理論を信じる。
近藤理論は所得の低い人から貴い命を奪い取る洗脳商法です。
それを許せないと感じるのはおかしいことでしょうか?
(2015年8月31日)

ずいぶん前にこのコラムで、タバコは健康格差を広げるから反対だ、と書きました。

貧しい人だけが年貢を納めるような体制は間違っています。
貧しい人だけがどんどん病気になるような社会はそれ以上に間違っていると思います。

タバコは健康の「逆進税制」です。

経済的な「最低限の生活」であれば福祉によってある程度補うことができます。
健康面での「最低限の生活」はどうでしょうか。
いったん大病をわずらってしまうと、医療費が免除されようが、税金が控除されようが、元通りの身体には戻れません。
経済的な「逆進制」よりも健康面の「逆進制」の方がはるかに深刻で恐ろしいのです。

だから「逆進税制」の様相を呈してきたタバコを社会は厳しく制限するべきだ、という論法だったと思います。
(2015年9月2日)

今の気持ちは少し違います。

「逆進税制」とか「健康格差」とか、そういう理論的な発想ではありません。
とにかく許せないのです。
弱いものからさらに大切なものを奪い取るやり方そのものが。

子どもばかり狙う犯罪者とか。
所得に低い人から金と健康をふんだくるタバコやパチンコとか。
健康意識の低い人につけこむ近藤理論とか。

健康講座で近藤理論を相手にしない人たちを見て、かえって近藤理論への憎しみを増した私なのでした。
(2015年9月4日)

健康講座で感じたこと、まだ続きがあります。

3)ダイエットにそれほど興味がない。

すべての人がダイエットに興味があるものと、何となく、思っていましたが、全然そんなことはありませんでした。
ダイエットを実践できるのは30代まで
必要性は感じてもなかなか実践できないのが40代
もう必要性すら無きものにしたい50代
そして60代になると基礎代謝も食欲も落ち着いて、その人なりの体型に自然収束する
という感じでしょうか。

筋力維持や心肺能力アップのためのトレーニングには関心があってもダイエットには興味が薄い、というのが受講者みなさんの特徴のようです。
(2015年9月7日)

最後です。

4)嫁姑問題に悩んでいない。

詳細は省きますが、そういうことみたいです。

で、こうして書いてみると、いかに自分がステレオタイプの世代イメージに捕らわれていたかよく分かります。

若い世代に「お年寄りの好きなTV番組は?」と聞くと大多数の人が「時代劇」と答えるけれど、実際にお年寄りの方に聞くと答えは圧倒的に「ニュース番組」だった……というのは以前からよく言われてきたことです。
自分勝手な思い込みを捨てて、十把一絡げな決めつけもやめて、今後は柔軟な姿勢で健康講座に臨まないといけないなあ、と思った次第です。

そこでまたまた脱線なのですが、TV業界も10年ほど前になってようやく「実はお年寄りは時代劇よりもニュースの方が好き」ということに気づいたようで、その後TV時代劇は完全に消え去りました。
ところがその一方で時代劇映画は安定した興行成績を上げ続けます。
この矛盾をTV業界は「TVで時代劇を放送しなくなったことによる飢餓感」と解釈したようです。

これがまた大いなる「勝手な思い込み」だったわけです。
(2015年9月9日)

病院にかかる時に知っておけば得をする、いくつかのこと<main> その薬飲むべきか、否か?


病院にかかる時に知っておけば得をする、いくつかのこと

効率よく病院を受診するための秘訣をまとめてみました。
すべての病院に共通とは限りませんのでご注意ください。
(むしろ松本胃腸科クリニック独自の部分の方が多いかもしれません)

1)診察時間について

診察時間は平日の10:00から13:00までと16:00から19:00までです。
胃内視鏡検査と便秘外来は予約制ですが、それ以外の症状の方は予約不要です。
初診の方は18:30までにご来院ください。

お願い1:クリニックのドアが開くのが10時ちょうどと16時ちょうどです。
せっかく早く来られてもその時刻まではクリニック内でお待ちいただけません。
また11時台が比較的空いております。
時間の都合がつくようでしたら11時以降にお越しください。

お願い2:胃内視鏡は10:30か16:30、便秘外来は11:00か17:00という1日2コマの枠でおこなっております。
当日空いていることもあれば1週間先まで埋まっていることもあります。
2週間分程度のスケジュールをご確認の上、電話でご予約ください。

お願い3:診察は19時まではおこなっております。
しかしお尻の病気の簡単な処置も、経過観察の都合上、18時以降にはできないことがあります。
また17時を過ぎると救急病院の受入れ率が極端に下がります。
軽い胃腸炎と思っていたのに実際は緊急手術が必要な虫垂炎だった、ということも少なくありません。
午後の診察では少しでも早い時間帯に受診されることをお勧めします。

お願い4:年に数日間、不定期な休診日があります。
休診日はあらかじめホームページで告知いたしますのでご確認の上ご来院ください。
(2015年6月1日)

2)診察に際して

当院では診察券を発行しておりません。毎回保険証をご提示ください。
服薬中の薬や最近受けた検査のデータもお持ちください。
検尿が必要な場合があります。トイレに関しては受付でお尋ねください。
診察室は土足ですが脱ぎ着しやすい靴での受診がお勧めです。

お願い1:月途中で保険証が切り替わる方も増えてきました。毎回の保険証提示にご協力お願いします。

お願い2:薬によって起きる下痢や吐き気や倦怠感もあります。
お尻や皮膚の症状でも飲み薬が原因で悪化している場合があります。
正しい診断のために服薬中の薬はすべてお持ちください。

お願い3:サプリメントや健康食品が健康を損ねている場合もよくあります。
食事療法や健康法もすべての人に効くわけではありません。
使用中のサプリメントや実践中の健康法があればお教えください。

お願い4:腹部の診察が必要になる場合があります。ワンピースでの受診は避けた方がいいでしょう。
また胃内視鏡検査の時にはズボンでの受診がお勧めです。
(2015年6月3日)

3)お問い合わせ

電話でのお問い合わせも診察時間内にお願いします。
検査や処置の時など、電話に出られない場合もあります。ご面倒ですが10分後にもう一度おかけください。
電話でのお問い合わせも11時以降がお勧めです。

ただし、「こういう症状ですが病院に行った方がいいでしょうか?」というお問い合わせに対しては「不安なら最寄りの病院に行ってください」とお答えするしかありません。
言葉による説明だけでは正しい診断はできません。
電話口ではいっさいの診断、またはそれに準ずることはおこないません、ご了承ください。
その代り、「こういう症状ですが何科にかかればいいのでしょうか?」「腹痛で受診したいが食事は抜いた方がいいのか?」という内容でしたら遠慮なくお問い合わせください。

 4)アクセス

クリニックは元町駅西口の北側にあります。
神戸生田中学校とローソン(北長狭通5丁目店)の間のビルです。
ちなみに大丸があるのは東口の南側、JRAがあるのは西口の南側です。

(2015年6月5日)

健康ディクショナリー2015年(2)<main>健康講座で教えられたこと

健康ディクショナリー2015年(2)

院外処方の病院では薬をどれだけ出しても売り上げは変わりません。
また基本的に勤務医はどの医療行為が利潤率が高いのかすら知りません。そもそも興味がありません。

しかし院内処方の病院は違います。
販売価格は「薬価」として国によって決められています。
薬で儲けようと思うと納入価格を安く抑えるしかありません。

院内処方の開業医(たとえば松本胃腸科クリニック)は大儲けするべく薬の問屋と日夜激しい交渉を繰り広げているのです!

と書くとかっこいいですが(?)、実は恥ずかしながら私はそういう経営者として当然の努力をこれまで怠っていました。
(「そんなわけないだろ!」と思われる方はエイプリルフールネタとしてどうぞスルーしてやってください)
いい機会なのでいろいろなタイプの薬の販売価格と納入価格の差額を調べてみました。
(2015年4月1日)

まず胃潰瘍の薬を見てみましょう。いずれも1日1回1錠です。

最初が、これまでもっとも多く使われてきたスタンダードな薬です。
100錠の販売価格が15,570円、100錠の納入価格が14,791円、差額は100錠あたり779円。
つまりこの薬を1か月分処方すれば、3割負担の方は窓口で1,400円支払い、234円が私の儲けとなります。

次にこの薬のジェネリック製品。特許期間が終了したので同じ成分の薬が安く作られるようになりました。
1か月分の金額は、皆さんの支払額が560円、私の儲けが340円。

最後がこの間発売されたばかりの最新の抗潰瘍薬です。
この薬の場合、皆さんの支払額が2,160円、私の儲けが341円。

なるほど。最初はジェネリック薬品を処方して、それが効かなければ最新の薬を出す、というのが患者さんの立場からも経営者からの立場からもWIN-WINなやり方のようです。

次に花粉症の薬を調べてみました。

最初がスタンダードな薬。
支払額が1,220円、儲けが354円。

次にこの薬のジェネリック製品。
支払額が300円、儲けが172円。

最後に最新の花粉症の薬です。
支払額が2,280円、儲けが638円。

これは意外ですね。普通は新薬ほど利益率が低いものですが。
「今年の花粉症はやっかいだから最新の薬を出しましょう!」というやり方が経営者としての正解だったようです。
私は一番儲からないやり方を選択していました。
花粉症の季節はそろそろおしまいだというのに、気がつくのが遅すぎました。

来年は花粉症シーズンの前にちゃんと計算しておきたいと思います(?)。
(2015年4月3日)

男性型脱毛症用薬「プロペシア」の後発品が発売されました。

ファイザー社の「フィナステリド」です。
当院では28錠(1日1錠)6千円です。

少し身近な薬になりました。
どうぞご相談ください。(2015年4月8日)

5月29日にコープ兵庫で健康講座を開きます。

題して「医師が語る本音の話」。
まだまだ構想中ですが、今回は医療とお金の話が中心になると思われます。

興味がありましたらぜひどうぞ。
(2015年5月25日)

健康ディクショナリー2015年(1)医者の陰謀<main>病院にかかる時に知っておけば得をする、いくつかのこと

健康ディクショナリー2015年(1)

先日報道された「食事によるコレステロール制限の必要なし」というニュースに驚かれた方は多いと思います。

よく読まないと、いやよく読んでも勘違いしそうな記事でした。

コレステロールにもいろいろな種類があって、血管にこびりついて脳梗塞や心筋梗塞の原因となるタイプのものを悪玉コレステロールと呼んでいます。
これまではこの悪玉コレステロールを下げるために食事の制限をしてそれでもダメなら薬を飲みましょうと指導していました。

ところが悪玉コレステロールのほとんどは実は肝臓で作られています。
頑張って食事制限をしても値はなかなか下がってくれません。
どうせ下がらないのならそんな食事制限を患者さんに求めるのはやめましょう、今回の提言はそういう内容です。
決して「コレステロールは高くてもいい」という内容ではありません。

ご注意ください。(2015年3月11日)

それでは検診などで悪玉コレステロールの高値を指摘されたらどうすればいいのでしょうか?

答えは一つです。
薬を飲むしかありません。

先の記事を読んで「やった、コレステロール値を気にしなくてもいいんだ!」と勘違いしてしまった方も多いと思います。
いまだに誤解したままの記事を流し続けている週刊誌もあります。
提言の趣旨としては完全に逆です。

悪玉コレステロールを下げるためには薬を飲むしかありません。
身も蓋もありませんが、つまりはそういうことです。
(2015年3月13日)

高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などを生活習慣病と呼んでいます。

この「生活習慣病」というのが分かったような分からないような言葉です。
狙いはよかったと思うのです。
自覚症状がなくても恐ろしい病気なのだということを直感的に伝えるのには最善のネーミングでした。

それが徐々に新鮮味がなくなり言葉から切迫感が失われました。
あたかも「五月病」や「金欠病」のようなニュアンスを帯びてきました。
働き盛りの人なら避けられない不摂生のような。

しかし「生活習慣病」は言葉のお遊びではありません。
ビジネスマンの勲章でもありません。
「生活習慣病」とは実際の病気以上に深刻な「危機的状況」です。
(2015年3月16日)

「病気以上に深刻な危機的状況」と言われてもぴんと来ないかもしれません。

たとえば飛行機の中でエボラ出血熱患者の隣に乗り合わせてしまった状況を想像してみて下さい。
あるいはメルトダウンした原子力発電所に閉じ込められたとしたら?

今現在あなたには何の症状がなくてもウイルスは刻々とあなたの粘膜の中で増殖し、放射能は刻々とあなたのDNAを蝕みます。
実は生活習慣病も同じです。
ウイルスが粘膜を、放射能がDNAを傷つけるのと同様の深刻さと避けがたさで、高血圧や高血糖や悪玉コレステロールは刻々とあなたの血管をぼろぼろにし続けているのです。

エボラ流行地域に滞在した人が入国した可能性があると言う報道で日本中がパニックにおちいった事は記憶に新しいです。
致死率のウイルスは単純に恐ろしいです。
もし「もし日本でエボラが大流行しても俺はかからない気がする」などと言えば周囲からは無知で滑稽で哀れに見られるだけです。

ところが「血圧は高いくらいがちょうどいいのさ」なんて無知で滑稽で哀れな言葉がまかり通ったりするから不思議なものです。
(2015年3月18日)

前回に引き続き、エボラウイルスや放射性物質にさらされている状況を想像してみて下さい。

生命の危険状態に瀕した私たちがまずするべきこととは何でしょうか?

そうです。
この状況から一刻も早く逃げ出すことです。
ウイルスの抗体価を測定するとか炉心の損傷度を調べるとか、そんなことの前に私たちは速やかにその場から脱出しなくてはなりません。

生活習慣病に対しても本来は同じであるべきです。
まず血圧を下げて、まず血糖値を下げて、まず悪玉コレステロール値を下げなくてはなりません。
食生活の改善やジョギングなどはそのあとのことです。
(2015年3月20日)

高血圧、糖尿病、高脂血症が生命の危機に瀕した状態であって、その場合何よりも速やかな避難が最優先されるとすれば、すぐにでも投薬治療を開始するのが本来のあり方です。

などと書くとすぐ「金儲け主義の医者の言うデマだ!」と叩かれそうです。

皆さんご存知と思いますが病院によって薬の出し方に二通りあります。
病院では薬を出さず処方箋のみ発行する「院外処方」の病院と、病院で直接薬を出す「院内処方」の病院です。

院外処方の場合、薬を何種類出しても病院の利益は増えません。
処方料は処方箋の枚数に対して支払われますから。
1枚の処方箋でたくさんの薬を出しても手間が増えるだけで医者はあんまりうれしくないのです。

ですから「院外処方」の病院の医者がたくさん薬を出すとすれば、その理由はたった一つです。
患者さんを治したいから、なのです。
(2015年3月23日)

「薬をどれだけ出しても医者は儲からない仕組みになっている」と書いてもこの時代、それで納得される方の方が少ないかもしれません。

処方箋を扱う薬局や製薬会社から何らかの資金提供のルートがあるのではないか。

政治家の金銭スキャンダルを多く見てきた私たちからすれば、そう考える方がむしろ自然だと思います。
確かにごく一部の医師には製薬会社からお金が流れています。
新薬開発にあたっての研究、発売されてからの治験、学術講演会などの謝礼です。
講演会で医師が受け取る謝礼が先日公表されましたが、文化人やスポーツ選手に比べると格段に安いです。
開発に携わった医師は治験に参加しない、などのルールを作れば「わいろ性」はかなり払拭できるのではないでしょうか。

それに製薬会社からお金がもらえるのはごく一部の医師です。

たとえば飲食店でも露骨に常連客ばかり贔屓する店は一般客には嫌われます。
それと同じ理屈でごく一部の医師だけに多額の謝礼を渡せばその製薬会社は一般の医師からは反発を食らいます。
それだけ医者という人種は妬み深いのです。

妬み深い医者がごく一部の特権医師の存在を許すはずがない

ごく一部の医師に多額の資金を渡すのは難しい

そういう資金提供のルートなどない

こんな無茶な三段論法で納得していただけますでしょうか?
(2015年3月25日)

病院でも経営改善会議のようなものがあります。
会議をしたからと言って売り上げが上がるわけがないのに上司から一方的に突き上げを食らって、下っ端としてはできれば出席したくない苦行です。
皆さんの会社の会議と同じではないでしょうか?
そこで勤務医時代の私は入院患者の家族説明など無理やり用事を作ってサボろうとしたわけですが、皆さんもきっと同じですよね。
(皆さんの会社の会議が実りある会議でしたらごめんなさい)

そこで上司から言われるのは「救急要請を断るな」ということでした。
患者を増やすもっとも有効な方法は救急患者を多く見ることですから。
それに対して下っ端の医者たちは「現場には現場の事情があるんだよ」と刑事ドラマのようなセリフをつぶやいたりしていました。

しかしそういう不毛な会議でも「この薬を使え」とか「もっとたくさん検査をしろ」とか言われたことはありません。
薬の内容や検査の要否についてはあくまでも医師の判断に任されていました。

少なくとも十数年前までは勤務医が病院の儲けのために薬を選ぶということはなかったのです。
(2015年3月27日)

だらだらと取りとめもない事を書いていますが、前回の記事を書いてから気がつきました。

この数年で医療情勢が激しく変わりました。

もしかすると、病院経営者が医者のやり方に口を出さないというのは過去の話かもしれません。
生活保護受給者にはジェネリック薬品しか使えないようにしようという提言もあるくらいです。
利に聡い経営者であれば利潤率の高い医療行為を医者に要求するでしょう。

幸いなことに医者同士の雑談でも「理事長から意に沿わない薬を使うよう命令された」という話はまだ聞いたことがありません。
が、間違いなく利潤優先の病院も増えてくるでしょう。
その時には「製薬会社と医者の(というよりは病院の)陰謀で必要のない薬を飲まされる」ことも現実のものとなります。

陰謀説なんて馬鹿馬鹿しいという趣旨で書き始めた文章ですが、書いているうちに不安になってきました。
陰謀説を唱えている方々、実はあなた方が正しいのかもしれません。
ただしその陰謀は現場の医師の思惑とは全く関係ないレベルで動いています。
せっかく陰謀説を主張するなら「医者の陰謀」で片付けず、本当は誰の陰謀なのかもう一歩深く追求してくださるとうれしいです。
(2015年3月30日)

健康ディクショナリー2014年(2)基準値は変わっていません<main>健康ディクショナリー2015年(2)医者の儲け方

健康ディクショナリー2014年(2)

最近「血圧やコレステロールの基準が変わったのですか」とよく訊かれます。
人間ドック学会の発表に基づいたマスコミの記事に惑わされたのだと思いますが、結論から言えば、

基準は変わっていません。

今回ドック学会から発表されたのは、今後5〜10年に及ぶメガスタディのための基礎データにすぎません。
……ということを、診察の合間に、一分程度の時間で納得してもらえるように説明する方法を今、考えているところです。
それまでは週刊誌やアドバイス好きの知り合いの言葉に惑わされず、薬を勝手にやめないで飲み続けましょう。(2014年5月30日)

血圧が高めの人もいれば低めの人もいます。
一体どのくらいの血圧が理想なのでしょうか?

理想の血圧を導き出すのは結構大変です。
まず「今現在健康な人を大勢集める」ところから始めなくてはなりません。
これまで大きな病気を患ったことがなく、今も何らかの自覚症状がない人。
さらに喫煙などの明らかなリスクにさらされていないことが条件になります。
こういう人をとにかく大勢集めます。

そして次にその人たちをとにかく長く追跡します。
病気になる時期に最適も最悪もありませんが、個人レベルでも社会レベルでも一番影響が大きいのは働き盛りの年齢層での急病です。
結婚して子どもが生まれた。今は元気だけれどこのままの不摂生を続けていて、子ども関連の出費が増える10年後から20年後にこのまま健康でい続けられるんだろうか?
今は激務もばりばりこなしている新入社員。連日の残業、接待も体力で何とかカバーしているけれども、今後大切なプロジェクトを担う10年後、20年後にまだその体力はあるんだろうか?
今元気であれば何となく来年も元気なんだろうな、というのは分かります。
しかし自分では想像もできず、しかも最も大切なのは「10年後、20年後の健康状態」です。

つまり追跡期間は最低でも10年は必要ということです。(2014年6月20日)

たとえば血圧の調査はいろいろおこなわれていますが、ほとんどが高血圧の人を対象にした調査です。
高血圧の人を集めて、一方には降圧剤を飲んでもらい、一方はそのまま。
そして数年間追いかけて脳梗塞や心筋梗塞の発生率に変化があるかどうか見極めようという種類の調査方法です。

これはこれで大変ですが、前回書いた
「できるだけ大勢の健康な人を、最低でも10年追いかける」
に比べると普遍性に欠けます。

日本でおこなわれた唯一の大規模調査が「久山町研究」です。
これは人口8400人の久山町という町で50年前から続けられている健康追跡調査です。
対象者の数から言っても追跡期間の長さから言っても日本ではナンバーワン・アンド・オンリーワンの調査です。
ちなみにこの調査では、「血圧140以上の人は120以下の人に比べて脳卒中の発生率が高い」という結果が出ています。

つまり「血圧は140以下に押さえた方がいい」というのが、今、日本で唯一の医学的真理です。(2014年6月23日)

先日、日本人間ドック学会があらたな大規模調査のための基礎データを発表しました。
ドック受診者150万人の中から現時点で健康そうな人を34万人選び出して追跡調査していこうというものです。
「今健康そうに見える人」ですから当然その中には「血圧が高めなのに薬を飲んでいない人」も含まれます。
その人たちと「今血圧が低めの人」との間に今後差が出てくるのかどうか長期的に調べるわけです。

この研究が実を結ぶと久山町研究より普遍的な結論が得られるかもしれません。
しかし成果が出るのは10年、20年先です。
(1年程度で結論が出てしまう可能性もあります。つまり未治療高血圧の人が1年以内にバタバタ倒れた場合ですが)

今回発表されたのは「20年後に向けて準備が整った」という報告です。
それを大々的に発表してしまったのは勇み足だったと思いますが、20年後への思いの強さを慮ると、意気込みを隠しきれなかったのだろうと同情したくもなります。

というわけで血圧の基準値は何も変わっていません。
一緒に20年間データの蓄積を見守りましょう。(2014年6月25日)

「基準値が変わったわけではない」と長々と書いてきましたが、これを診察の現場で簡潔に説明するのは難しいです。

結局は、いろいろはしょって
「あれは誤報です。基準値は変わっていません」
と言ってしまうかもしれません。
ご了承ください。(2014年6月27日)

健康ディクショナリー2014年(1)まともな医者が近藤誠に反論しない訳<main>健康ディクショナリー2015年(1)医者の陰謀

健康ディクショナリー2014年(1)

大勢の患者を紹介してくれるコンサルタントに契約料を払う、ポイント制で患者を囲い込む、
いずれも従来の医療観からすると違和感のある行為です。
しかしその違和感を理論で説明できるかというと、これも難しい。
パソコンをちょこちょこっと操作して莫大な利潤を手にするトレーダーのあり方に感じる違和感と似ています。

保険会社による治療制限もそうです。

たとえば腰のヘルニアが見つかったとします。
手術をすれば痛みが楽になると言われたので保険会社に相談してみると、契約していない病院での治療には保険金は支払えないと言われる。
保険会社に紹介された病院では手術はしてくれない……。

個人医療保険の自由化が進むに連れて、今後こういう事例が増えてくるでしょう。
保険会社の意向によって治療の選択肢が限られてくるわけです。
しかしクレジットカードだって使える店と使えない店がある。
個人医療保険が使える病院が限られるのも仕方ないことだし、医療費の抑制にも役立つのだからむしろいいことなのではないか、と言われると反論できない自分がいます。(2014年1月8日)

世の中が何でも経済の原理で動くのは望ましくはありませんが、見習うべきこともあります。

退職金を受け取った時に私たちはその運用方法を考えます。
リスキーな投資に賭けるのも運用ですし、銀行も年金も信用せず箪笥にしまいこむのも立派な運用です。
「お金」に関しては、強制されなくても私たちはあれこれ考えて、何らかの方策を取ります。
しかし自分の身体について私たちはどれだけ考えているでしょうか?

冷静に考えてみれば私たちにとって一番大切な資産は、貯金でも不動産でもなく、身体です。
健康なら100万円あれば贅沢な海外旅行を楽しめます。
寝たきりなら100万円など介護料であっという間に消えてしまいます。
つまり健康な人と寝たきりの人とでは金銭の価値が全く違うのです。

「だから健康的な生活を送りましょう」などという抽象的で耳触りのいいことを言っているのではありません。
より長く行動的であり続けるために、肉体の積極的な運用が必要ということなのです。(2014年1月10日)

近所のおばちゃんがどんなに正直者でも、だからと言って退職金を預ける人はいません。
行きつけの居酒屋のご主人がどんなに情報通でも、株の運用を任せる人はいないと思います。
隣の旦那がどんなに日曜大工が上手でも、まさか家の設計を頼む人はいないでしょう。

おばちゃんや居酒屋のご主人を信用していないわけではないけれども、数百万円という額を扱う時、私たちが頼るのは銀行であり、投資コンサルタントであり、建築家です。
ここ一番の大切なものを運用する時、信用できるのはプロだけです。

しかし退職金よりも家よりも間違いなく大切な資産である「身体」を運用する時、往々にして私たちがプロの意見よりも非プロの意見に従ってしまうのはどうしてでしょう。
「何もしなくても十万円儲かります」みたいなスパムメールには見向きもしない人が、「この健康食品を食べれば血圧が下がります」みたいな新聞広告にはたやすくだまされます。
「この壺を買えば金持ちになれる」という誘いを悪徳商法と見抜ける人が、「ふくらはぎを揉めば癌が治る」という話には飛びついたりします。

お金ではだまされない人が、身体に関することでは簡単にだまされる。
つまり、「自分にとって最も大切な資産は身体である」、「お金よりも身体の方が貴重な資産である」という認識が抜け落ちているからなのだと思います。(2014年1月15日)

雑誌を開けば、目に飛び込んでくるのはアカデミックな言葉で飾り立てられた健康食品の広告の数々。
TVを点ければさまざまな健康法やダイエット方法の宣伝の垂れ流し。

一体私たちはどの商品、どの方法を選べばいいのでしょう?

簡単です。
長く支持されている方法を選べばいいのです。
思い出してみてください。
毎年のように「画期的」な健康法やダイエット法が登場して、マスコミを賑やかせていますが、一年以上ブームが続いたものがあったでしょうか?
納豆でも寒天でも品薄だったのは一瞬でした。
一年前活躍していた健康法タレントは今どうしているのでしょう。

長く支持されている健康法を選べばいいと書きましたが、考えてみると、そんなに息の長い健康法など存在しない事が分かります。
1年以上前に登場して、今も生き残っている健康法と言えば「腹八分目」くらいではないでしょうか。(2014年1月17日)

大した効果もないはずの健康法や健康食品がブームになるのには理由があります。

何かを規則正しく続けること自体が身体にいいからなのです。
毎食後に何かの薬を飲む、実はそれだけで血圧が下がり、糖尿の値が改善します。

なぜかと言うと、食後の薬を飲んだら普通の人はそのあとはものを食べません。
食後の薬を飲むだけで、だらだら食べ続けなくなるわけです。
だらだら食べる時、たとえば宴会の食事パターンを思い浮かべると分かりやすいのですが、人は塩気の強い物、あるいは甘い物を好んで食べます。
薬を飲んで食事に区切りをつけるだけで、塩分と糖分の摂取量が激減するのです。

深呼吸やストレッチなどの運動も同じです。
生活にメリハリをつけること自体が健康にいい影響を及ぼしているわけです。(2014年1月20日)

健康法や健康食品は健康のための「手段」ではなく、「きっかけ」と考えた方がよさそうです。

きっかけと割り切るならば、「深呼吸」も「ふくらはぎを揉む」も「健康に効」きます。
患者さんに時々訊かれるのですが、私は「効く」と答えています。

しかし一月分が何千円もするような健康食品はどうでしょう。
きっかけにしては額が大きすぎないでしょうか?
副作用の心配もあります。
効果のある薬は必然的に副反応のリスクも伴うものです。
絶対に副作用がない薬とは、身体の中で何の反応も起こさない薬、つまり完全に無意味な薬だけです。
そして副作用があった時に、その健康食品のメーカーはどこまで責任を取ってくれるのでしょうか?

そこまで考えると、口から摂取する健康食品は「きっかけ」と割り切るには、往々にして高額で、しばしば危険です。
ですから患者さんに訊かれた場合は「効かない」と答えます。

効果とは、コストとリスクを差し引いて、初めて判定されるものなのです。(2014年1月22日)

しかし効かない健康食品とか役に立たない健康法はまだ罪がなくていいです。

そう思ってしまうのはあまりにも悪質なインチキ本が幅を利かせているからです。
前にもこの欄で取り上げましたが、近藤誠の「医者に殺されない47の心得」とか「患者よ、がんと闘うな」などの本の数々です。

近藤誠は放射線科医です。
手術でも抗癌剤でも治らない患者さんが集まってくる科です。
そのせいでいつの間にか「癌は手術や抗癌剤では治らない」と思いこんでしまったのでしょう。
しかし実際には技術の進歩で、今やかなりの割合の早期癌が内視鏡的に切除されています。
患者さんが気付かないうちに癌治療が終わっている場合も多くあります。
つまり近藤誠が知らないところで、ほとんどの早期癌の患者さんは「闘うまでもなく治っている」のです。

彼の眼には全ての癌患者が手術や抗癌剤でぼろぼろにされているように見えるのでしょう。
それはそうでしょう。
現状、放射線治療はあくまでも補助治療なので、他の治療を経ずに放射線科を受診する癌患者はいませんから。
だからと言って手術で完全に治っている多くの症例を忘れていい理由にはなりません。

象の尻尾だけ触った人が、象を細長くてか弱い動物だと思いこんでしまったとか。
近藤誠の主張を聞くと、象の尻尾だけ触っている人を思い浮かべてしまうのです。(2014年1月24日)

近藤誠が主張する「ガンモドキ」理論というのはこうです。

癌細胞にもいい物と悪い物があって、たちのいい、いわゆる「ガンモドキ」は放っておいても大きくならない。
一方、たちの悪い「本当の癌細胞」は見つかった時点で転移しているので、その時点で手遅れ。
つまりどっちにしても治療の意味がない、というものです。

癌細胞を顕微鏡で見ると「ガンモドキ」と「本当の癌細胞」の区別がついて、そしてそれに基づいて適切な治療方法を選択しよう……というのであればこの理論は素晴らしいです。
現場の医師も研究室の病理学者も、癌の悪性度を推し量る方法を日夜探し求めています。
悪性度が高ければ腫瘍が小さくても拡大手術が必要だし、悪性度が低ければ局所切除でも大丈夫。
その目安があれば癌治療は飛躍的に進歩しますし、一部の癌ではようやくそうした指標が分かってきました。

ところが近藤誠の考えはこうした「適切な治療のための指針追求」の延長線上にあるわけではありません。
「ガンモドキ」と「本当の癌細胞」の区別をつける事は不可能という前提に基づいた理論なのです。(2014年1月27日)

「ガンモドキ」と「本当の癌細胞」の区別がつかないという点が、この理屈の最も卑劣なところです。

早期切除で治った癌は切除で治ったのではなく、「ガンモドキ」だったから治ったのだ。

と言われた時、これに反論するのはなかなか難しいです。
早期癌を放置して実験的に試すことが、医療倫理に背くからです。

せっかく早期で発見されたにもかかわらず放置療法を選択して癌死する例が出始めているそうですが、彼はそれは「発見された時点で手遅れだった」と主張します。

これに反論するのも結構難しいです。
そしてこの「反論の難しさ」をよく考えてみると、実はこれに似た理屈を時々見かけていることに気づきます。

そうです、
「あなたの病気が治ったのは信心が深かったからよ」とか「不幸が続くのは信心が足りなかったからだ」などの言葉です。
客観的基準が存在しないものを、結果を見てから知ったように断言するやり口。
これはまさにインチキ宗教のやり方と全く同じです。(2014年1月29日)

面白いなあ、と思うことがあります。

近藤誠に反論する医師が論を進める際、近藤誠の考え方に部分的に同意するところから始める点です。
たとえば「不必要な拡大手術の例も確かにある」とか、「手遅れの癌に対しては治療よりもQOLの向上を図った方がいい」などです。

同意できるところは同意するが、反論すべきところは反論するというのは実に立派な科学者的立場です。
しかし、詐欺師だって9割は本当のことを言います。
というか、残りの1割でひっくり返すために、詐欺師には9割の真実が必要なのです。
それなのに詐欺師を断罪するのに「あなたの言う9割は事実だけれども」などと気を使う必要があるでしょうか?

前回書いたとおり、近藤誠の言っていることは理論でも何でもなく、実証不可能な事を悪用したまやかしです。
「信心が深ければ死なない」と言っているのと全く同じです。
死んだらそれは信心が足りなかったのです。
こんなやり方、仮に悪質な詐欺でないとすれば、ひとりよがりのインチキ宗教です。

こんなトンデモ本にでも科学者的節度をもって丁寧に反論する「医者」という存在が、私には非常に面白く思えて仕方なかったりします。(2014年1月31日)

健康ディクショナリー2013年検診結果の見方<main>健康ディクショナリー2014年(2)基準値は変わっていません

健康ディクショナリー2013年

あけましておめでとうございます。
ウイルス性胃腸炎が猛威を奮っておりますが、みなさま、体調は大丈夫でしたでしょうか?

さて、ウイルス性胃腸炎の場合、その原因ウイルスが分かったからといって治療方法が変わるわけではありません。
検査に保険も適用されませんから、当院では「ノロウイルス」の検査はしていませんでした。

ところが食品を扱う業種や、幼児や高齢者と接する業種では、就業にあたって「ノロウイルスに感染していない」証明書が必要なところもあるようです。
その場合は対応いたしますので、ご相談ください。(1月7日)

ピロリ菌の除菌治療の保険適応範囲が広くなりました。

当院の場合、検査が2千円、治療が3千円程度でしょうか(3割負担の場合)。
気になる方はどうぞご相談ください。(3月8日)

ピロリ菌治療で使われるのがランサップという薬です。
実際には3種類の薬の組み合わせです。
このパッケージが1日分です。
ほとんどの場合これを1週間服用すればピロリ菌は退治できます。

どうぞご相談ください。(3月11日)

ピロリ菌の検査料金も、除菌治療の金額も、診療報酬表ではっきりと決められています。

ただし、ピロリ菌の有無だけではなく、現実にピロリ菌がどれほど悪影響を及ぼしているかまで検査した上で初めて治療に取り掛かる病院もあります。
また、その場合にどういう検査をするか、その選択肢も病院や医師によってそれぞれ異なります。
つまり単独の値段は決められているのに、トータルでの負担金額が医療機関によって大きく違うという現実があるわけです。

医療の場合、その追加オーダーが自分にとって必要なものかどうか分かりにくいのが困るところです。
しかし分かりにくいのは皆さんのせいではありません。
説明が足りない医療機関側に問題があります。
高いからといってぼったくりだとは私も思いません。
が、不十分な説明で高い検査を追加するのはぼったくりに等しいと私は思います。(3月18日)

「医者に殺されない47の心得」という本を読みました。

タイトルも刺激的ですが、内容も結構刺激的で面白いです。
あ、「面白い」と書くと誤解されそうですね。
内容自体が面白いのではなく、統計の利用の仕方がずるくておかしいです。

ある治療法が病気に対して有効かどうかは、最低で数百例のデータをもとに判断されます。
100%というものがありえないのは、医療の世界でも日常生活でも同じです。
「試験勉強を頑張った方が、テストでいい点数が取れる」というのは真理です。
時には努力が結果に結びつかない事もあります。
さぼったのに、直前にちらっと見た部分が出題される事もあります。
しかし「頑張った方が点数がいい」という真理自体が揺らぐわけではありません。

医療はこうした統計的真理に基づいて発展してきました。
一方「頑張ったのに点数が悪かった」という事象が存在するのも事実です。
医療の世界では、統計的に処理できない少数の現象は「一例報告」という形で発表されます。
そういう報告が積み上げられて、一定の数をクリアすれば、今後新たな真理が生まれ出てくる可能性もあります。
しかし「一例報告」にとどまる限りは、何の意味も持ちません。
逆に「一例報告」に気を取られて、統計的真理に背を向けるのは医師として間違いであるし、怠慢であるし、犯罪的行為だと思います。

そうした視点からこの本を読むと、

都合のいい統計は使う、
自分の主張が統計と一致しない場合は「一例報告」を用いる、

という手法が徹底されている事に気づかされます。
つまり詐欺的やり口がとってもずるいなあ、と感心させられるのです。(5月15日)

統計の使い方も結構ずるいです。

医療体制や病院の対応への満足度が高い人ほど早死にするという統計結果があるそうです。
そこで彼の導きだした結論はこうです。

「病院によく人ほど早死にする」

彼の頭の中では「満足=よく行く」になっているようです。
きっと「税務署の対応に満足=高額納税者」「嫁姑の関係がうまくいっている=同居している」なのでしょう。
しかし病院も税務署も、行かなくて済むものなら行きたくないところです。
病院に満足している人には、そもそも病院にあまりかかっていない、もしくは健康に対する意識が低い人たちが、かなりの割合で含まれていると思うのです。

この統計から何かを結論づけるのは無理です。
少なくとも普通の感覚の持ち主には。(5月17日)
 
しかしこの著者には立派なところもあります。

肺癌検診は無意味であるという説があります。
検診をおこなっても肺癌死亡率が下がらなかったというのが、その理由です。
だから検診など受けるな、というのがこの著者の主張です。

皮肉ではなく、こういう考え方は素晴らしいです。
私などは検診を受けるのは自分の健康のためなのですが、この著者は「社会全体として肺癌死亡率を下げないから検診を受けない」のだそうです。
自分の健康に気を配るのも、自分が長生きしたいからではなく、日本人の平均寿命を伸ばしたいからなのでしょう。

私が検診を受けるのは、「自分が安心したいから」という理由のためです。
人でなしと言われそうですが、社会全体の肺癌死亡率の事など全く考えておりません。
社会全体としてはどうであっても、個人レベルであれば少しでも早期に発見できれば生存率は上がります。
それに肺の病気は癌だけではありません。
また現時点で異常がなくても、今後何かの異常が発生する可能性はあるわけで、その時に比較しやすいように正常な状態を記録しておくという理由もあります。

行政が費用を投じて肺癌検診をおこなう理由はないのかもしれません。
しかし私たち一人一人に検診の意味があるかどうかは、それとは全く別次元の問題です。

この著者の態度は立派だと思います。
ですが、私たちは自分の健康に関しては、そこまで立派でなくてもいいと思うのです。(5月20日)

癌は放置しろ、というのもまた思い切った提言です。

私も研修医時代に同様の事を考えた事もありました。
つまり、発見された時点で全身に転移している胃癌や大腸癌に対して手術する意味があるのかどうか、という疑問です。

これについては数多くの経験を経て、自分の中でははっきり結論が出ています。
消化管系の癌は可能な限り切除すべきです。
なぜなら消化管系の癌は大きくなると腸を閉塞させ、さらに出血の原因になります。
腫瘍を切除する事によって、極端に言えばほんの1回だけでも食事が美味しく食べられるのなら、そのために手術をした方がいいと思います。
また、クオリティ・オブ・ライフなどという言葉を持ち出すまでもなく、吐血はつらいものです。
吐き気に楽もつらいもありませんが、抗癌剤の副作用の吐き気に対して、吐血の吐き気は「吐くべきものがあるから起きている吐き気」です。
制吐剤や鎮痛剤で抑えて解決する問題ではありません。
仮に手術が患者さんの体力を奪うとしても(現実には手術がそれほど体力を奪う事はありませんが)、吐血に苦しむ2か月よりも、吐血のない1か月を、消化器外科医なら提供したいと思うのです。

そういう意味で「癌で死ぬのはそんなにつらい事じゃない」などという考え方を耳にすると、「ああ、この人は胃癌や大腸癌の末期状態を知らないんだ」と思うわけです。(5月22日)

胃腸関係の新薬が続々と登場しています。

便秘や下痢で困っている人は多いです。
いろいろな下剤を試しても、効果があるのは最初だけですぐ効かなくなる人。
通勤電車の中でお腹が痛くなり、駅ごとにトイレに駆け込まなくてはならない人。

困った末に病院に行っても、ほとんどの場合は「病気ではないからこのまま様子を見ましょう」と言われてきたのではないでしょうか。

最近になってこういう状態も病気の一種と考えて、しっかりと治そうという流れになってきました。
もちろん、誰でも一発で効くような特効薬が現れたわけではありません。
しかし以前の治療で期待するような効果が得られなかった方も、もう一度チャレンジしていい時期だと思います。(6月10日)

痔の治療法もどんどん進歩しています。
レーザーや注射による治療や、日帰り手術など。

そうは言っても、レーザーだって注射だって怖いし、日帰りでも手術はいやなものです。

実のところ、当院に来られる方で、薬では治らないレベルの人はせいぜい1割です。
2割の人は病気ですらありません。

手術方法であれこれ悩む前にまず病院にかかってみる事をお薦めします。(6月12日)


胃腸炎の季節です。

ひどい嘔吐下痢に対する治療が「OS1ゼリー」の登場でずいぶん変わりました。
最近はTVでコマーシャルも流れているそうなのでご存知の方も多いと思います。
基本的に点滴と同じ成分のゼリーです。
おかげで外来で点滴をする機会がぐっと減りました。

基本的には医師の指示のもとで摂取すべき医薬品の一種ですが、市販もされています。
当院では3個600円でお渡ししています。
夏場を前にお近くのドラッグストアで値段を確認しておくのがいいかもしれません。(6月14日)

40歳以上の方は、症状がなくても一度胃腸の検査はしておいた方がいいと思います。

胃の検査については、多くの場合定期健診に組み込まれていますし、検査自体にさほど抵抗感がないので受診率はそこそこ高いです。
一方大腸の検査は事前の準備が結構大変ですし、何より恥ずかしい。
よほどの自覚症状がなければなかなか検査しようという気にならないのではないでしょうか。

当院では肛門関係で来られた40歳以上の方には全員大腸内視鏡をお薦めしています。
(当院では検査をおこなっていないので、お近くの病院に紹介するという形になります)
肛門の病気が、本来なら受ける事もなかった検査を受けるきっかけになったわけです。

検査の結果、大腸に異常のない事が分かって喜ぶ患者さんを見て、私は「大きな安心が得られて、この人にとってはお尻の小さな病気にかかった事はラッキーだったのかもしれない」と思ったりもするのです。(6月17日)

「最近の若い女性は米のとぎ方も知らない!」

かつては手術する以外に治療方法がなかった病気でも、技術の進歩でさまざまな治療法が選べるようになってきました。

それはそれで素晴らしい事だと思います。
問題は手術ができる外科医がどんどん減っている事です。
たとえば胆石は、今ではほとんどが腹腔鏡でおこなわれています。

今はいいのです。
今最前線で「腹腔鏡下胆嚢摘出術」をおこなっているベテラン医師たちは、お腹を切り開いておこなう従来のやり方を、ついこの間までバリバリこなしていた連中ですから。
万が一出血などのトラブルに直面してもあわてることなく開腹して処置できると思うのです。

今から10年後はどうでしょうか。
腹腔鏡下胆嚢摘出術のチームの中に、開腹による胆嚢摘出術の経験がある医師が一人もいない、などという事態が普通になってきます。

よく「最近の若い女性は米のとぎ方も知らない」と嘆く年配の方がおられますが、これは仕方がない事でしょう。
実際、今の世の中、米をとぐ技術よりも、スマホでコピペできるスキルの方が重宝されるように私には思えます。

しかし「最近の若い外科医は開腹もできない」というのは、ただ嘆くだけではすまされない、とても恐ろしい事態だと思うのです。(6月19日)


外科医の「とりあえず切ってみよう」というキャラクターはあまり好きではありません。

しかし最近、切る事にあまりに慎重な外科医が多いような気がします。
出血や膿瘍など、あれこれ考えるよりも早く切ってしまった方がいい事態も、時にあります。
そういう時にも「もうちょっと検査してから結論を出しましょう」という考え方をする外科医が増えてきたように思います。

「切る決断」が以前よりも全体として0.1秒遅くなったような気がします。
きっと好ましい流れなのだ、……と信じています。(6月21日)

検査項目に腫瘍マーカーを組み込む人間ドックが増えてきました。

しかし腫瘍マーカーは本来治療効果の目安であって、癌の早期発見に適した検査ではありません。
自動的に組み込まれているのなら仕方がありませんが、オプションで選択の余地があるのでしたらかかりつけ医に相談することをお薦めします。

遠慮は不要です。
かかりつけ医とはまさにそのためにいるのですから。(7月8日)

たとえば肝臓癌では腫瘍マーカーとしてAFP、PIVKA-II、CEAなどが用いられますが、これら3つの値が全て上昇する肝臓癌はまれです。
全てが正常値であることも決して珍しくありません。

肝臓癌が発見された。
腫瘍マーカーを調べてみるとAFPだけが上昇していて、他のマーカーは正常だった。
癌を切除するとAFPが正常値まで下がった。

この段階で初めて、「この肝臓癌の腫瘍マーカーはAFPである」と結論づけられます。
その後のAFPの経過を追っていくと、2年後に上昇を始めたとします。
その場合には再発の可能性が高いと推測できる……、腫瘍マーカーとはそういう意味合いのものです。

流れ作業的に腫瘍マーカーを調べて、低いから大丈夫、と安心するためのものではありません。

人間ドックの検査項目には、「正常値であれば安心していい」検査と、「正常値であるからといって全く安心できない」検査が混在しているので注意が必要です。(7月10日)

ABC検診という言葉をご存知でしょうか?

ピロリ菌の有無と、胃の粘膜委縮度は血液検査で調べることができます。
ピロリ菌も陽性で、委縮も進んでいる人は胃癌になる可能性が高いのでしっかりと精密検査を受けましょう、という意味の検診です。

誤解している人が多いのですが、ABC検診はあくまでも、「胃癌になりやすい人」、つまり「絶対に精密検査を受けないといけない人」をあぶり出すための検診です。
ABC検診で低リスクと診断されたからといって精密検査を受ける必要がないわけではありません。
そういう意味ではかつての「メタボ検診」の「腹囲」のあり方に似ています。
現在ではメタボリック・シンドロームの定義から「腹囲」は除外されていますが、「絶対にメタボの精密検査を受けないといけない人」をあぶり出すための基準としては非常に有意義だったと思います。

ABC検診そのものは保険適応ではありません。
当院であれば胃カメラと同じくらいの費用がかかります。
それならば胃カメラをしてしまった方が効率的ですし、診断も確実です。

健康診断やドックにABC検診を組み込むのはいい考えです。
しかし消化器専門病院でABC検診を受けるのは、わざわざ病院で腹囲を測定するようなものです。
胃が心配であれば、素直に胃内視鏡検査を受けるのがベストです。(7月12日)
 
「医師が語る本音の話」第2回は、11月1日(金)コープ兵庫で13時半からです。
今回のテーマは「その薬、必要ですか? その代金、必要ですか?」の予定でした。
ですが、その前にちょっと寄り道です。
「医療否定本を切る!」
「医者に殺されない47の心得」や「患者よ、がんと戦うな」などの「医療否定本」が大ヒットしている近藤誠ですが、みなさんからすれば、世間の医師が彼にどうして反論しないのか不思議にお思いではないでしょうか?
反論しないのには理由があるのです。

続きはコープカルチャーで。(10月21日)

しかし近藤誠の気持ちも分からないではありません。
放射線療法はものすごい勢いで進歩していますが、それでもまだ癌治療のファーストチョイスは手術です。
癌細胞が限られた場所にちょっとだけあるのなら、そこを根こそぎ取ってしまうのが一番確実です。
それに、本能的な直観ですが、仮に統計的な成績が同等なら薬や放射線で封じ込めるよりもとりあえず癌細胞を身体からなくしてしまいたい、という気持ちもあります。
実際早期癌であれば、放射線治療が関与するまでもなく手術でほとんど治っています。
大雑把に言うと、全ての癌のうちの半分以上が放射線治療を経ずに完治しています。
つまり彼は、これらの「手術でちゃんと治っている症例」をほとんど見る機会がないまま、癌治療の全てについて語っているわけです。

彼の言葉に、あんこを食べずに鯛焼きを語っているような、そんな的外れ感が禁じえないのはそのせいかもしれません。(10月23日)

そしてもう一つ。

放射線療法の一番の活躍の場は、手術も抗癌剤も効かない癌の治療です。
つまり彼の前に現れる患者の多くは、手術も抗癌剤も効かないから、彼の前にやってきたのです。

彼が「癌には手術も抗癌剤も効かない!」と感じるのはある意味、仕方がないかもしれません。
黒沢映画を見て日本にはまだ侍がいると思いこむ外国人もいるらしいですから。(10月25日)

健康ディクショナリー2012年胃カメラ入門<main>健康ディクショナリー2014年(1)まともな医者が近藤誠に反論しない訳

健康ディクショナリー2012年

胃カメラはどの病院で受ければいいのでしょうか?
 
ずっと胃の調子が悪くてそのうち検査を受けようと思っている方。
健診の結果、胃の精密検査を指示された方。
特に症状はないけれど一度検査を受けて安心したい方。
 
みなさん、どの病院で精密検査を受ければいいかお困りだと思います。
検査はなるべく楽な方がいいですし、待ち時間も短い方がいい。
かと言って診断能力が怪しければ何にもなりません。
費用が安ければそれに越した事はありませんが、検査費用は病院間で共通なのかそれとも違うのか、おそらくみなさんはご存知ないのではないでしょうか。
 
胃カメラを楽に受ける方法
 
胃カメラもここ数年でずいぶん細くなりました。
今や鼻から検査をおこなう方法が一般的です。
鼻からのルートだと、カメラが喉の奥の敏感な部分に触れないので原理的にえずかなくて済みます。
口からの方法に比べるとかなり楽です。
 
しかし中には鼻からの検査が難しい方もおられます。
また、中には鼻からのルートでもえずく方もおられます。
そういう方のためには麻酔を使って寝ている間に検査をしてしまうという方法もあります。
その麻酔には熟練した技術が必要です。
実は、消化器内科で麻酔標榜医の資格を持っている医師はごく一部です。
 
検査を楽に受ける一番のコツは、引き出しの多い医師を選ぶ事です。
機械も新しい、医師の技術も高い、そして麻酔の資格も持っている、そういう病院を選びましょう。
 
丁寧に、正確に
 
鼻からの胃カメラには意外と準備時間がかかります。
丁寧な前処置が必要です。
この下準備をいい加減にすると、本来楽なはずの検査も苦しいものになってしまいます。
ベテラン医師が外来で検査の指示を出して、看護師が検査の前処置をおこなって、若手医師が検査をする、そういう分業システムの病院もあります。
丁寧さと正確さを求めるなら、診察、前処置、検査を一人の医師が責任を持っておこなう病院を選びましょう。
 
なるべく早く、なるべく安く
 
鼻からの胃カメラにはどのくらい時間がかかるでしょうか。
病院に来られて、検査して、結果について説明を受けて帰るまで、普通ならば1時間かかりません。
それ以上かかっていればそれはどこかの段階で不必要に待たされているという事です。
費用はどうでしょうか?
保険点数は全国どの病院でも共通です。
初診で胃カメラだけ受けた場合は5千円足らずで済むはずです。
それ以上かかっていれば何らかの名目で余分なお金を取られているという事です。
必要な事ならば時間もお金も惜しむべきではないと思います。
しかしあなたが負担している時間とお金は本当に必要なものでしょうか。
 
胃カメラを受けようと思われているみなさん、どうぞお気軽にご相談ください。(2012年1月6日)

特別企画〜「仁(じん)」を見ました。<main>健康ディクショナリー2013年検診結果の見方

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