海外の長篇小説ベスト100〜第10位(3)

しかしドストエフスキーの予言がはずれるのは、ある意味当然です。

 

この小説では革命家たちが描かれますが、革命については一切語られません。

ロシアとは何か、とか、神はいるのか、については語られても「何のためにどうやって革命を起こすのか」については誰も話しません。

ほんのちょっとくらい、雑談程度にでもしゃべってくれないかな、と思いましたが、誰一人として口を開いてくれません。

ここまでかたくなに口を鎖(とざ)すとなると、やっぱり思ってしまいます。

 

「ドストエフスキーは革命に興味なんてなかったんだ」

 

と。

革命に興味を持たずしてロシアを、世界を予言するのは不可能です。

 

もちろんこのエピグラフが予言でなかった可能性もあります。

構想段階ではエピグラフに従って進行するはずだったのに、執筆中に気が変わってしまった……、ドストエフスキーに限らず、長篇小説ではよくあることです。

 

「ドストエフスキーは聖書のあの部分に強い感銘を受けたらしい……」

くらいに思っておくのがちょうどいいと思います。


海外の長篇小説ベスト100〜第10位(2)

こんなものが置かれている以上、私たちは「悪霊」の物語をこれに沿って読まなくてはなりません。

 

「悪霊」はドストエフスキーが書いた中で最も大勢の人が死ぬ小説です。

革命家たちの話ですから彼らが死んでいくのはある程度予測できるとしても、その本筋とは離れたところに身を置いているあの人も死んでしまうし、牧歌的存在のあの人まで死んでしまいます。

 

みんなが死んで、小説は終わります。

 

不思議です。

前回書き写していて思ったのですが、それならエピグラフは前半部分だけでもいいのです。

いや、むしろ後半は邪魔です。

だって物語には「悪霊に取りつかれていた人が正気に戻る」シーンなんて出てきませんから。

あるいは小説で前半部分だけ描いて、現実社会で起こるべき後半部分を予言したのでしょうか。

 

そうだとすればドストエフスキーの予言は大ハズレだったとしか言いようがありません。

「悪霊」が書かれてそろそろ150年が経とうとしていますが、ロシアはもちろん、世界も一瞬たりとも正気に戻ったことはありませんから。

 


海外の長篇小説ベスト100〜第10位(1)

海外の長篇小説、ようやくベスト10に突入です。

2010年に始めたこの企画、元号が変わるまでに完結するのでしょうか?

 

ヒョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー「悪霊」(光文社古典新訳文庫)

 

 

何となく難しそうなドストエフスキーの小説の中でも、この「悪霊」は断トツで謎めいています。

まずおどろおどろしいのが巻頭に置かれたこのエピグラフです。

ルカ福音書からの一節です。

 

そこに、山に、かなり多くの豚の群れが飼われていた。

そこで悪霊どもは彼に、その豚の中に入るのを許してくれるように、と頼んだ。

イエスが彼らに許すと、悪霊どもはその人から出て行って、豚の中に入った。

そして豚の群れは走り出した。崖から湖へと。そして溺れた。

飼う者たちは起こったことを見て、逃げ、町や農家などで話を告げた。

そして、起こったことを見に、出て来た。

そしてイエスのもとに来て、その人から悪霊がすでに出て行って、衣を着て正気になってイエスの足もとに座っているのを見た。

そして恐れた。(田川健三訳)


「こうもり」を聴こう、絶対!(4)

「こうもり」を聴こう! と言いながら、逆に、聴きたくなくなるような堅苦しい話になってしまいました。

 

言いわけになるのですが、実は「こうもり」はオーケストラメンバーにとってはあんまりよろしくない演目なのです。

会場は大ウケにウケているのに、オーケストラピットに入っているオケメンバーはそれを見ることができません。

最前列のお客さんよりもさらに近いところにいるのに、舞台を見ることができません。

ステージでは何か楽しそうなことをやっているのに、私たちはその間ずっと楽譜とにらめっこです。

重箱の隅をつつくような、音符の細かな話でもするしかないじゃないですか!

 

というわけでオケピットに入らなくてもいい皆さまは、「こうもり」をたっぷり楽しみましょう、というお話でした。


「こうもり」を聴こう、絶対!(3)

写真のBも不思議な箇所です。

 

敷衍しているスコアではこうなっています。

 

リズミックなフレーズを高弦と低弦が交互に弾く印象的な場面ですが、なぜかチェロだけは部分的にお休みなのです(スコアとパート譜も微妙に異なっていますが……)。

ここを自筆譜で見ると

 

 

チェロは完全に休みか、あるいは「コントラバスとユニゾン」の記入漏れと解釈して全部弾くか、どちらかということになります。

チェリスト的には全部弾きたいところですが、冷静に判断すると休むべきなんでしょうね。


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