潤一郎全集あれこれ第14回〜谷崎潤一郎全小説全あらすじ第12巻(5)

(92)

 

〇友田と松永の話

 

私は一通の手紙が元で友田と松永が同一人物ではないかと疑い始めた。友田は堂々たる恰幅の遊び人、一方松永は大和の国の農家の痩せた男だった。しかし松永の活動時期と友田の失踪期間は一致していた。最初は否定していた友田がやっと打ち明けた。遊興に憧れた松永は故郷を飛び出して友田となり金にあかせて肥り、心が倦むと痩せ衰えて故郷に戻っていたのだった。でも四十五歳を過ぎてもう友田には戻れない気がする、彼は言った。

 

よく考えるといろいろ無理のある話です。

こういう場合谷崎はたいてい途中で投げ出してしまうのですが、これは頑張って最後まで書いてくれました。

 

(2019年7月22日)

 

 

 


潤一郎全集あれこれ第14回〜谷崎潤一郎全小説全あらすじ第12巻(4)

(91)

 

〇赤い屋根

 

小田切の妾の繭子は赤い屋根の西洋館に囲われる女優だった。小田切は撫でられるよりも足蹴にされるのを喜ぶ男だった。それをいいことに繭子は恩地という現像技師を家に導き入れていた。ある日小田切をアダリンで眠らせると繭子は恩地から駆け落ちの約束を強引に取り付けた。翌朝繭子の家を寺本が訪ねてきた。彼は繭子取り巻きの学生の一人で繭子も憎からず思っていた。寺本の来訪を聞いて繭子はあわてて小田切を家から追い出した。

 

冒頭にこんな文章があります。

 

「中山手三丁目で電車を降りて、三の宮の方へ一直線に下っているアスファルトの坂道を歩き出すと」

「ふらりと神戸へやって来たのだが、こういう時に彼女は廻り道をしてでも、此の坂道をスタスタ歩くのが好きなのである。

一帯に街が綺麗で、大概な路面はアスファルトで固めてある神戸の中でも、土地の人がトーア・ロードと呼んでいる此の坂は一番気持がいい」

 

調べてみると1971年まで神戸市電というのが走っていて確かに「中山手三丁目駅」があったようです。

今のNHK神戸放送局あたりでしょうか。

 

(2019年7月19日)


潤一郎全集あれこれ第14回〜谷崎潤一郎全小説全あらすじ第12巻(3)

(90)

 

〇馬の糞

 

Aとは中学時代からの友人だった。私が結婚すると彼は妻を見て言った。あんまり美人じゃないね、と。君には関係ないだろうと反論すると彼は言った。同じ時代を生きる青年として感覚の違いは許せない。友人がビフテキの代わりに馬の糞を食べると言ったら黙っていられないと。それから七八年して私は彼を訪ねた。そこで彼の妻を見た。十五六も歳の違うまるで女学生のような美人だった。どうだ、馬の糞とは違うだろう、彼は笑った。

 

何らかのどんでん返しがあるのかと思ったらこのまま終わります。

読み間違いかと思って読み返しましたがやっぱりこのまんまのお話でした。

 

(2019年7月17日)


潤一郎全集あれこれ第14回〜谷崎潤一郎全小説全あらすじ第12巻(2)

(89)

 

〇羅洞先生

 

A雑誌の訪問記者は、羅洞先生に面会するのは今日が始めてなのである。一時間も待たせてやっとあらわれた先生は無愛想だった。何を訊いても不得要領な呻り声しか返ってこなかった。会見は終わったが不満に思った記者はこっそり裏庭に回って書斎の中を覗いた。腹ばいになった羅洞先生に十五六の少女がまたがっていた。少女は羅洞先生の尻を笞で打った。その時始めて先生は少しばかり生き生きとした目つきで「ウー」と呻った。

 

いいですねえ、羅洞先生。

短篇なのがもったいないくらいのユニークなキャラクターです。

 

(2019年7月12日)

 


潤一郎全集あれこれ第14回〜谷崎潤一郎全小説全あらすじ第12巻(1)

(88)

 

次に読んだのが第12巻。24冊目の刊行で読むのは22冊目です。

残り4冊!

 

 

脂の乗り切った40代の作品集です。

何をどう書いても何となく形になってしまいます。

 

〇金を借りに来た男

 

長谷川がまた金を借りに来た。さんざん金を借りまくって一切返そうとしないやつだ。金の無心なら二度と来るなと言っていたのにやって来たのだ。今回は友人宇佐美の懐中時計を修理すると騙して質に入れてしまったらしい。受け出しの金を貸してくれと長谷川は懇願した。豊田は仕方なく金を貸す。その時たまたま宇佐美がやって来た。長谷川はしきりに宇佐美の懐を気にする。豊田もじきに気づいた。そこにはちゃんと懐中時計があった。

 

「潤一郎喜劇集」として出版されたうちの一篇です。

舞台よりもウッチャンのコントで観たいような気がします。

 

(2019年7月10日)


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